
ファクタリングとは売掛債権を売却し、資金調達する方法になります。ファクタリングはどのように誕生し、いつごろ日本にやってきたのでしょうか。
以下の順に沿って、ファクタリングの歴史について紐といていきましょう。
14~16世紀にイギリスで誕生
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17世紀に請求書ファクタリングが活発化
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18世紀に毛織物の売買にて利用
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19世紀に早期資金化が実施される
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20世紀初頭のアメリカで発展
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1970年頃に日本に伝来
日本でのファクタリングの歴史はこちらからご覧ください。
目次
ファクタリングは14世紀~16世紀にイギリスで誕生
ファクタリングの原型はイギリスが起源とされていますが、誕生した時期はいくつか諸説があります。
一説によると、ファクタリングの原型は14世紀もしくは16世紀に誕生したとされていますが、真実は不明瞭なままです。
以下では、14世紀と16世紀、それぞれの時代について解説していきます。
14〜15世紀の「ファクター」説
ファクタリングの原型は、14〜15世紀ごろにイギリスで誕生したといわれています。
当時のイギリスには、売掛債権を買い取る「ファクター」という組織がありました。
ファクターでは、主に衣料品商品や交易人を対象に、現金の前貸しを行なっていました。
また、ユダヤ人のビジネスマンも、輸出品の請求書を使って輸出業者に資金を貸し出すというファクタリングのような仕組みを扱っておりました。
この仕組みで、独自の経済圏を築く基盤を支えていたと、言われています。
16世紀の「支払いの保証制度」説
イギリスの商人が、アメリカ大陸にある植民地と交易するために、交易人や衣料商人がファクタリングを利用したことが、始まりとされています。
しかしながら、この頃は資金調達ではなく支払いの保証制度という形で活用されていたそうです。
17世紀に請求書ファクタリングが活発化
ファクタリングによる支払いの保証制度は、銀行が発行した請求書を担保とすることで、よく利用されるようになりました。
また、アメリカからイギリスに発送されるたばこや綿、木材等の原材料の前払いに対応するためにファクタリングを活用し、輸出量の増加を図っていたそうです。
ちなみにファクタリングは、当時アメリカに対するイギリスの植民地化が推し進められた一因と考えられているそうです。
18世紀に毛織物の売買にて利用
18世紀になると、イギリスからアメリカに移住した方に向けて出荷していた毛織物の売買手段として、ファクタリングが主に利用されていました。
この頃のファクター(ファクタリング会社)は、毛織物の製造業者の販売代理店として、バイヤーとの仲介を担いつつ、バイヤーの信用調査や商品の管理、販売業務を行っていたそうです。
つまり現代に置き換えると、ファクターは商社のような役目を果たしていたのです。
19世紀に早期資金化が実施される
19世紀になると、イギリスはアメリカに対して大量の毛織物製品の輸出をしていました。
この時代から、売掛債権を資金化するファクタリング、つまり早期資金化がよく行われるようになったそうです。
産業革命が起きると、瞬く間にファクタリングは、信用力を保持する企業にとってよく活用される金融サービスになりました。
20世紀初頭のアメリカで発展
ファクタリングが今のような形になったのは、20世紀初頭のアメリカで発展したからと言われています。
20世紀に入ると、成長が著しかった繊維産業が停滞したため、それに伴い繊維製品の輸出も停滞しました。
そのような背景から、ファクターは商社の役割を果たせなくなりました。
そのため、資金の提供と信用力の調査を専門的に行うようになり、現在のファクタリング会社のような役割を担うようになりました。
そして、ファクタリングも要因となってアメリカは経済成長を果たし、ヨーロッパなどの地域でもファクタリングサービスは活用されるようになりました。
つまり、現在の形でファクタリングが利用されるようになったのは、およそ100年前からになります。
1970年ごろ日本に伝来
ファクタリングがアメリカから日本に伝来したのは、1970年ごろです。
当時の日本では、第一勧業銀行などの都市銀行系子会社が金融の中心となり、手形取引や手形割引が一般的に行われておりました。
そのため、ファクタリングの認知度は向上しませんでした。
ファクタリングの仕組みが手形取引よりもわかりにくかったこと、信用取引において売掛債権を取引すること自体にあまりよい印象がなかったことも、ファクタリングが流行らなかった原因です。
ファクタリングが日本で浸透し始めた理由とは
伝来当初流行らなかったファクタリングがなぜ、日本で浸透し始めたのでしょうか。
現在のように一般的な資金調達方法として普及した理由は、主に2つあります。
手形取引の衰退
手形の取引高は、1990年の約4,797兆円をピークに、バブルが崩壊した1991年以降は急激に減少しました。
2017年の手形取引高は約374兆円と、ピーク時の7.8%程度にとどまっています。
手形取引は急激に減ったのでしょうか。その理由は2つあります。
・コストがかかる
1つ目は、手形取引にコストがかかることです。
手形を発行する際には、手形用紙を銀行から購入し手形印紙代を支払う必要があります。
また、換金する際にも手数料が発生するので、決してコストが安いわけではありません。
・流動性が高くない
2つ目は、流動性が高いとはいえないことです。
手形割引は債権の一種なので、手形に裏書きをすればそのまま取引先に譲渡することが可能です。
しかしその額面を変更することはできないので、取引先への支払方法としては少し不便です。
また、手形の紛失・盗難リスクが常にあること、手形の不渡りが発生した場合に資金の回収が難しくなることで流動性が下がることも、手形割引の減少要因でした。
政府による法整備
バブル崩壊以降、手形割引の衰退により売掛債権の現金化が難しくなったため、新たな現金化方法が模索されるようになります。
その結果、1998年10月に「債権譲渡特例法」が施行され、「債権譲渡登記制度」が定められたことで、国を挙げてファクタリングの普及に取り組む姿勢が打ち出されました。
また、2005年には「債権譲渡登記制度」が改正され、さらに円滑に手続きできるよう整備されます。
これによって債権の二重譲渡トラブルが減少し、より債権譲渡をしやすくなりました。
債権譲渡に関する記事はこちら
日本におけるファクタリングの現状
今では国境の垣根を超えた国際ファクタリングがあるなど、ファクタリングは未だに発展し続けています。
そして、日本では手形取引の衰退や法整備もあり、現在は2社間ファクタリングの活用が目立っています。
その背景には、売掛先の承諾が必要なく、なおかつ早期に資金化ができるという2社間ファクタリングの性質が大きく関わっていることが挙げられます。
また、売掛債権の譲渡は良くないというイメージが日本で先行しているのも、要因として考えられます。
悪徳業者もいる
2社間ファクタリングを活用している企業が増えてきたために、
・法外な手数料の設定
・ファクタリングを隠れ蓑にした実質的な貸金のフロー
・ファクタリング会社に印鑑や通帳を預ける
などを行う悪徳のファクタリング会社も、少なからず存在します。
サービスが認知されて利用者が増えてしまうと、その流れに乗じて悪徳なことをする人が出現してしまうのは世の常ではあります。
しかし、日本におけるファクタリングの歴史の浅さも、もしかしたら関係しているのかもしれません。
ですので、人気な2社間ファクタリングを活用する際には、信用の置けるファクタリング会社をまずは選定することから始めましょう。
日本国内の今後のファクタリング取引動向
今後、ファクタリングの取引は拡大していくのでしょうか。
2013年の日本銀行調べによると、2011年度の日本企業全体の売掛金は約192兆円と、巨額の残高があります。
しかし、そのうち流動化された売掛債権は約4.5兆円と、全体の2.4%にとどまります。
また、売掛債権だけでなく手形債権、長期金銭債権も含めた債権流動化の裏付資産別残高は、2008年の約10兆円をピークに緩やかに推移し、2011年〜2013年は約7兆円程度に安定しています。
この2点から、売掛債権の残高は約200兆円近くにのぼるものの、債権流動化自体は売掛債権だけで約4.5兆円、全体でも約7兆円にとどまっていることがわかります。
よって、ファクタリング市場は、今後流動化が活発化することで、現在の何十倍もの巨大な市場に成長する可能性を秘めています。
また、日本政府は、経済産業省の「中小企業における資金調達の課題」を通じて、売掛債権などの流動資産による資金調達の活性化を掲げています。
このような政府の動きも背景に、ファクタリング取引は今後増加していくと期待されています。
まとめ
ファクタリングは14世紀~16世紀にイギリスで誕生した歴史ある資金調達方法です。
日本にはアメリカから1970年ごろに伝来し、現在のように一般的な資金調達方法として認知されつつあります。
また、ファクタリングは日本では取引規模はまだ小さいものの、これからさらに債権流動化が活発化することで、ファクタリングは日本でも有数の資金調達方法に成長すると見込まれております。
今後の動向に注目すべきでしょう。
ビートレ―ディングのファクタリングはこちら
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参考:
商流ファイナンスに関するワークショップ
第2回「売掛債権を活用したファイナンス」(日本銀行)
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/data/rel130910a1.pdf