「介護施設を開業したいけど、一体何をどうすればいいの?」
「介護施設を開業したい場合、必要な資格や免許ってあるの?」
年々ニーズが高まりつつある介護事業の開業を検討している場合、こんな疑問を持つことも多いのではないでしょうか。
結論をいうと、介護施設を開業するために必要な資格や免許はありません。
ただし都道府県や市区町村から「介護事業者」として「指定」を受ける必要があります。
開業する施設が、自治体から介護事業者として「指定」を受けていないと、施設を利用する人たちは介護保険を使うことができなくて困ってしまいます。
また、施設の運営者にとっても、介護保険に基づく介護報酬を得ることができません。
介護施設を開業したい場合には、介護事業者としての「指定」を受けるようにしましょう。
開業の準備は介護事業者として「指定」を受けることを念頭に進めていくことになりますが、押さえておくべき基本事項は次の3つです。
また、これらの3つの基本事項を押さえて開業準備を進めるためには、下記のような手順で進める必要があります。
本記事では、これらの「開業するために知っておくべき基本事項」と「開業までの手順」について詳しく解説します。
▼この記事で分かること
- 介護施設を開業するために知っておくべき基本事項
- 介護施設の開業手順の詳細
- 介護施設の開業に必要な費用の相場
- 介護施設の開業を成功させるためのポイント
最後まで読むことで、介護施設の開業に必要な費用の相場や失敗しないためのポイントも把握できます。
介護施設の開業を成功させるためにも、ぜひ最後まで目を通してみてください。
目次
1. 【必要な知識一覧】介護施設を開業するまでに必ずやるべき基本事項3つ
冒頭で触れた通り、介護施設を開業するには資格や免許といったものは必要ありませんが、都道府県や市区町村から介護事業者としての「指定」を受ける必要があります。
介護施設を開設する地域の自治体から介護事業者としての「指定」を受けなければ介護保険の適用を受けることができません。
このため介護施設の開業においては自治体からの「指定」を受けることをひとつの目標に準備を進めていくことが重要となります。
具体的には次の3つの基本事項を踏まえて準備を進めることとなります。
介護施設を開業するためには、上記3点の基本事項をクリアする必要があります。
繰り返しになりますが何より大切なのは、「1)自治体から介護事業者としての「指定」を受ける」ことです。
次に必要なこととしては、「2)指定を受けるための「指定申請」という手続きを行なう」ことです。
「指定申請」は、介護施設を開業しようとしている地域の自治体の窓口で申請します。
この「指定申請」の審査に合格すれば、自治体から介護事業者としての「指定」を受けたこととなります。
また、この「指定申請」を行う前に、「3)「指定申請」に必要な諸条件を整える」必要があります。
申請条件は介護保険法や自治体の条例で定められています。
この諸条件を満たさないと「指定申請」の審査に通過することができないため、「指定」を受けるためには必ず事前に諸条件をクリアしておく必要があります。
介護施設の開業に絶対に必要となる作業は以上の3点です。
詳しい作業の手順や詳細については次の章で解説していきます。
2. 介護施設の開業の8つの手順
先に述べた通り、介護施設の開業のためには自治体から介護事業者としての「指定」を受けることを念頭において準備を進める必要があります。
ここでは、介護施設開業までの準備の手順について具体的に紹介します。
手順の流れは次のようなものです。
上記の順序は目安で、多少前後する場合もあります。
例えば、「STEP4:「指定申請」の「人員基準」を満たす人材を確保する」、「STEP5:「指定申請」の「設備基準」を満たす設備を確保する」、「STEP6:「指定申請」の「運営基準」を満たす運営方針を整備する」などは、実際には同時進行で進めていきます。
下記に詳しく見ていきましょう。
2-1. 【STEP1】事業内容(サービス形態)を決める
開業に際しては、まず介護施設の事業内容(サービス形態)を決めることが大切です。
介護サービスと一口にいっても、介護保険法に基づく介護事業のサービスは26種類54サービスあります。
まずはどのサービス形態で事業を行うかを決めることが、開業準備の第一歩と言えます。
54サービスの内容については、下記の厚生労働省の介護サービスの紹介ページで確認ができるため、参考にしてください。
• 厚生労働省「公表されている介護サービスについて」
54サービスのうち、参入しやすく、「指定申請」におけるサービス分類でもよく見られる代表的なサービス形態7つを挙げると、下記の通りとなります。
【代表的な介護サービス形態一覧】
介護の相談を行う介護事業 | |
居宅介護支援(ケアマネジャー) | ケアマネージャーが利用者宅を訪問し、利用者や家族と相談のうえ、ケアプランを作成します。ケアプラン作成後についても、適切にサービスを受けられるよう関係機関と連絡・調整を行います。 |
利用者の自宅に訪問する介護事業 | |
訪問介護(ホームヘルプ) | 訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者宅を訪問し、食事・排泄・入浴などの身体介護や、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活援助をします。 |
訪問看護 | 看護師などが疾患のある利用者宅を訪問し、主治医の指示に沿って利用者の看護や診療の補助を行います。 |
利用者を施設に迎える介護事業 | |
通所介護(デイサービス) | 利用者が通所介護の施設(デイサービスセンターなど)に日帰りで通い、施設で食事や入浴などの生活上の支援や生活機能向上のための機能訓練などを受けます。施設は利用者の自宅から施設までの送迎も行います。デイサービスは利用者の自立した生活を支えます。 |
通所リハビリテーション (デイケア) | 利用者が通所リハビリテーションの施設(診療所、医療機関など)に通い、食事や入浴などの生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練などを日帰りで受けます。デイケアは、利用者の身体的機能の回復・維持を支えます。 |
施設で利用者が暮らす介護事業 | |
認知症対応型共同生活介護 | 認知症の利用者が、グループホームに入所し、家庭的な環境で食事や入浴などの日常生活上の支援や機能訓練などのサービスを受けます。 |
福祉用具の提供する介護事業 | |
福祉用具貸与 | 利用者の希望や心身の状況、生活環境などを踏まえ、適切な福祉用具の貸与、取り付けなどを行います。 |
サービス形態を決める際には、
- 利用者が多く見込めるか
- 開業費用や運営費が準備できる予算の範囲内か
などの点を考慮して決めていくようにしましょう。
どの程度の利用者が見込まれるかは地域のニーズを把握する必要があります。
地域の介護のニーズや介護体制については自治体でも資料が公表されているため、ホームページなどで確認するようにしましょう。
費用については、サービス形態によって異なるため、希望するサービス形態ごとに必要な費用を見積って検討するようにしましょう。
例えば、「居宅介護支援(ケアマネジャー)」は施設や人材をあまり抱えなくていいため、開業の費用などの負担も少なくて済みます。
「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」は利用者を受け入れる宿泊設備や多くのスタッフを抱えなければいけないため、開業の費用や手間などの負担が大きくなります。
開業準備としてまずはサービス形態を、ニーズや負担を考慮しながら慎重に決めるようにしましょう。
2-2. 【STEP2】「指定申請」に必要な要件を確認する
介護施設のサービス形態が決まれば、開業したい地域の自治体に「指定申請」に必要な条件を確認するようにしましょう。
確認するポイントは下記のような点です。
- 人員基準:介護施設に必要なスタッフの職種と人数と配置を定めたもの
- 設備基準:介護施設に必要な設備や備品の種類、広さ、大きさ、数などを定めたもの
- 運営基準:介護施設の運営上守るべきルールを定めたもの
- 必要な提出書類
- 事前研修の有無
「指定申請」に必要な基準は、介護施設のサービス形態や自治体によって異なります。
また提出書類も自治体によって異なります。
サービス形態や自治体によっては、事前研修を受ける必要がある場合もあります。
「指定申請」の審査に通るためにも、必要な要件を取りこぼしなくクリアすることが大切です。
そのためにも、申請に必要な書類や情報を取り寄せ、しっかりと確認するようにしましょう。
問い合わせ先は、自治体の「福祉保健局」や「保健福祉部」、「高齢者福祉課」などが窓口となります。
通常は自治体のホームページに「指定申請」の案内のページがあるため、まずは自治体のホームページで確認するようにしましょう。
2-3. 【STEP3】法人を設立する
事業内容などを固めたら、法人を設立しましょう。
介護事業者として「指定」を受けるためには法人格を持っている必要があるため、「指定申請」を行う前に法人を設立しておく必要があります。
介護施設で認められる法人格は次の通りです。
【介護事業者として参入可能な法人格一覧】
特 徴 | |
株式会社 | 資本金1円から設立可能。 メリットは、社会的信用度が高く、株式を発行することで資金調達ができること。 デメリットは、設立に20万円強の費用がかかること。 |
合同会社 | 資本金1円から設立可能。 メリットは、設立費用が10万円程度と安いこと。 デメリットは社会的信 用度が低いこと。 |
一般社団法人 | 資本金0円から設立できるが、社員(従業員ではなく株主のようなもの)は2名以上必要。 メリットとしては設立費用が10万円程度と安いこと、非営利性をアピールできること。 デメリットとしては、株式会社に比べて資金調達の手段が限られること。 |
NPO法人 | 資本金は0円から設立できるが社員(従業員ではなく株主のようなもの)は最低10名以上必要。 行政庁からの認証を受ける必要がある。 メリットは社会的信用度が高いこと、収益事業以外の事業は非課税となること。 デメリットは設立のハードルが高いこと。 |
社会福祉法人 | 設立には、都道府県などの認可を受ける必要があります。 認可後も行政からの厳しい監督を受けます。 メリットは事業に税金がかからないこと。 デメリットは、行える収益事業の範囲に制限があること。 |
医療法人 | 設立には、医師を理事長にしなければならなかったり、 1か所以上の診療所・病院を持っていなければならなかったりと厳しい設立要件があります。 メリットは社会的信用度が高いこと、 デメリットは監督官庁に対する手続きの量が多いこと。 |
初めて介護事業を始める場合には、設立のハードルの低い株式会社か合同会社が一般的です。
NPO法人や社会福祉法人、医療法人などは行政から設立認可を受けるには、厳しい要件を満たす必要があり、実績がないと難しいと言えるでしょう。
株式会社は、設立時の費用が20万円強と高いものの、1~2週間程度で設立できるため、株式会社が新規参入の形態としてはおすすめです。
2-4. 【STEP4】「指定申請」の「人員基準」を満たす人材を確保する
「指定申請」に必要な「人員基準」を満たすように、人材の確保を行います。
人員基準は「2-2. 【介護施設の開業 STEP2】「指定申請」に必要な要件を確認する」でも解説した通り、サービス形態によって基準が異なります。
例えば、通所介護(デイサービス)施設の場合、下記のようになります。
【通所介護(デイサービス)に必要な人員基準】
定員10名以下の施設 | 定員11名~15名の施設 | 定員16名~20名の施設 | |
管理者 | 常勤1名 | 常勤1名 | 常勤1名 |
生活相談員 | 1名以上 | 1名以上 | 1名以上 |
看護職員 | 看護職員、介護職員 どちらか1名 | 1名以上 | 1名以上 |
介護職員 | 1名以上 | 2名以上 | |
機能訓練指導員 | 1名以上 | 1名以上 | 1名以上 |
参考:厚生労働省「通所介護及び療養通所介護(参考資料)」
<用語解説> 管理者:施設全体の統括管理者。特別な資格は必要なし。兼務も可。 生活相談員:介護福祉士、社会福祉主事または社会福祉主事任用資格が必要。(資格要件は自治体によって異なるため自治体ごとに確認が必要) 看護職員:看護師・准看護師の資格が必要 介護職員:資格は特に必要なし。 機能訓練指導員:理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの有資格者 |
通所介護(デイサービス)の施設では、利用者を施設に迎え入れ、食事や入浴のサポートをしたり、「歩く」などの機能訓練を行ったりします。
そのために一定数の人員を確保する必要があり、その具体的な人員配置を定めたものが、上の表の人員基準です。
上の表を見て分かるように事業規模(定員数の多さ)でも人員基準は異なります。
また、自治体によって基準が少し異なるケースもあるため、必ず申請を行う自治体の「指定申請」用の資料で確認するようにしましょう。
自治体によっては「指定申請」の前に「事前研修」の機会を設け、配置すべき人員の内容を説明してくれるところもあります。研修も活用するとスムーズに準備を進めることができます。
自治体が指定する人員基準の内容をよく確認して、人員の確保を行なうようにしましょう。
介護職員の採用には、公共の職業安定所を活用した採用が68%、民間の介護人材紹介業者を活用した採用が41%、求人情報サイトでの採用が36%となっており、公共の職業安定所の活用が多く見られます。
(参考:厚生労働省「医療・介護分野における職業紹介事業に関するアンケ―ト調査」)
介護人材の確保には、公共の職業安定所が利用率も高く、無料で求人募集ができることからおすすめです。
2-5. 【STEP5】「指定申請」の「設備基準」を満たす設備を確保する
「指定申請」に必要な「設備基準」を満たすように、開業する物件に設備を整えていきます。
「設備基準」も「人員基準」と同様に、サービス形態・事業規模の大きさ・自治体によって基準が異なります。
自治体の「指定申請」用の資料で「設備基準」を確認の上、準備を進めるようにしましょう。
例えば、通所介護(デイサービス)では、下記のような設備基準が定められています。
【通所介護(デイサービス)に必要な設備基準】
食堂 | 食堂と機能訓練室の合計面積が、利用者数 × 3.0㎡以上 となるように設置する |
機能訓練室 | |
相談室 | 相談内容が漏えいしないような配慮がなされた相談室を設置する |
静養室 | 利用者が静養できる部屋を設置する |
事務室 | 職員が事務を行う部屋を設置する |
その他 | 消火設備その他の非常災害に際して必要な設備を確保する サービス提供に必要な設備・備品(椅子や机など)を確保する |
参考:厚生労働省「通所介護及び療養通所介護(参考資料)」
厚生労働省「介護保険法(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)」
通所介護(デイサービス)では、利用者が食事をしたり機能訓練を受けるスペースが必要です。具体的には、利用者一人当たり3.0㎡以上のスペースが確保できるように、設備基準が定められています。
自治体が指定する設備基準の内容をよく確認して、設備を整えるようにしましょう。
2-6. 【STEP6】「指定申請」の「運営基準」を満たす運営方針を整備する
「指定申請」に必要な「運営基準」を満たすように、運営方針を整えます。
「運営基準」も「人員基準」「設備基準」と同様に、サービス形態・事業規模の大きさ・自治体によって基準が異なるため、自治体の「指定申請」用の資料で「運営基準」を確認の上、準備を進めましょう。
例えば、通所介護(デイサービス)では、下記のような運営基準が定められています。
【通所介護(デイサービス)に必要な運営基準】
運営規程の策定 | 事業の目的、運営方針、従業員数や職務の内容、営業日・営業時間、利用定員数を明記した運営規程を定める |
通所介護計画の作成 | 利用者の状況・希望などを踏まえた機能訓練の目標、目標を達成するための具体的なサービス内容を記載した通所介護計画を作成する |
勤務体制の確保 | 利用者に適切なサービスを提供できるように従業員の勤務体制を定める |
定員の遵守 | 災害時を除き、定員を超えて指定通所介護の提供を行ってはならない |
衛生管理の徹底 | 利用者の使用する施設、食器、その他の設備、飲用水について、衛生管理に努め、衛生上必要な措置を取る |
参考:厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
詳細は自治体ごとに異なるため、自治体の指定する「運営基準」を確認して、準備するようにしましょう。
2-7. 【STEP7】「指定申請」を行う
人材や設備、運営方針の準備が整えば、開業を予定している地域の自治体に「指定申請」を行います。
必要書類を整えて、自治体の窓口に提出しましょう。
書類に、人災の配置状況、設備の設置状況、運営方針の整備状況などを記入して、証明書類などの必要書類とともに提出します。
提出時や提出後、書類に不備があれば自治体から連絡があるため、不備があった場合は速やかに修正し、再提出をしましょう。
「指定申請」を済ませた後は、審査を経て受理されるまでひと月ほど待機します。
2-8. 【STEP8】介護事業者としての指定を受ける
「指定申請」の内容に問題がなければ、通常は1か月ほどの審査期間を経て、介護事業者としての「指定」を受けることができます。
一度介護事業者として「指定」されると、6年間、指定介護事業者として介護施設の運営を行うことができます。
介護事業者として指定を受けたら、いよいよ介護施設の開業が可能となります。
3. 介護施設の開業に必要な費用の相場は120万円~
介護施設の開業に必要な手順をお伝えしました。
開業の手順のイメージが把握できたものの「介護施設を実際に開業しようとすると一体いくらくらいかかるだろう?」と今度は費用面のことが気になるのではないでしょうか。
ここでは介護施設の開業に必要な費用の相場を紹介します。
介護施設の開業費用の相場は、利用者を迎え入れる施設を持つかどうかといった点で大きく異なるため、下記の3つの事例で紹介します。
- 居宅介護支援(ケアマネ):120万円~
- 訪問介護:500万円~1,000万円
- 通所介護:1,200万円~
詳しく見てみましょう。
3-1. 居宅介護支援(ケアマネ)の開業費用の相場は120万円~
居宅介護支援(ケアマネ)の開業費用の相場は120万円~です。
居宅介護支援施設とは、介護が必要な利用者やその家族から相談を受けてケアプランを作成し、利用者が適切な介護を受けられるように関係各所と調整する施設のことです。
120万円という金額は、ケアマネージャーの資格を持つ人が、アパート一室を事務所として借りて開業するケースを想定した費用です。
<居宅介護支援の開業費用内訳> 法人設立費用 10万円~30万円 物件取得費 30万円~ 駐車場代 6,000円/月~ 設備・備品代 60万円~ 消耗品費 10万円~ 合計 120万円前後 |
居宅介護支援施設の場合は、利用者は相談に立ち寄るだけのため、利用人数に応じたスペースの確保は義務付けられていません。
そのため狭くても開業可能で物件費用を抑えることができます。
また、必要な社員についても、利用者35人までは管理者1名とケアマネージャー1名だけのため、人件費がかかりません。
居宅介護支援施設は、他の介護施設の開業に比べて、人件費や物件取得費、設備費が安く抑えられます。
3-2. 訪問介護(ホームヘルプ)の開業費用の相場は500万円〜1,000万円
訪問介護(ホームヘルプ)施設の開業費用の相場は500万円~1,000万円です。
訪問介護とは、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問し、食事・排泄・入浴などの身体介護や、掃除・洗濯などの生活援助をすることです。
訪問介護の開業費用のイメージは下記の通りです。
<訪問介護の開業費用内訳> 法人設立費用 10万円~30万円 物件取得費 40万円~ 駐車場代 6,000円/月~ 採用・人件費 1名当たり30万円~70万円 設備・備品代 80万円~ 消耗品費 20万円~ 車両費 260万円~400万円 合計 500万円~1,000万円程度 |
施設としては職員の事務室や相談室の設置が義務付けられていますが、利用者が訪問してくることはないため、広いスペースを確保する必要がありません。
事務室と相談室の兼用も可能なため広い物件は必要なく物件取得費は比較的かかりません。
ただし開業には、管理者とサービス提供責任者、ホームヘルパー各1名の最低3名の確保が必要なため、人件費がかかります。
また、訪問先の利用者が病院に通うための送り迎えの乗降介助サービスまで提供する場合には、車両を1台用意する必要があります。
訪問介護の場合は、車両代が260円~400万円程度かかることに注意が必要です。
3-3. 通所介護(デイサービス)の開業費用の相場は1,200万円~
通所介護(デイサービス)施設の開業費用の相場は1,200万円~です。
通所介護とは、利用者がデイサービスセンターなどの通所介護施設に日帰りで通い、施設で食事や入浴などの介助や、「歩く」「腕を動かす」などの生活機能向上のための機能訓練を受ける施設のことです。
開業費用の額に幅があるのは、利用者数に応じて広い施設や多くの職員が必要となり、費用が大きく変わるためです。
通所介護の開業費用のイメージは下記の通りです。
<通所介護の開業費用内訳> • 法人設立費用 10万円~30万円 • 物件取得費 100万円~ • 内装工事費 500万円~ • 採用・人件費 1名当たり30万円~70万円 • 設備・備品代 200万円~ • 消耗品費 20万円~ • 車両費 260万円~400万円 合計 1,200万円~ |
通所介護では、利用者を自宅から施設まで送迎する必要があるため、車両を準備する必要があります。そのため車両代が260万円~400万円程かかります。
4. 介護施設の開業を成功させるためのポイント3つ
最後に、介護施設の開業を成功させるためのポイントをお伝えします。
最低でも下記の3点には注意して開業するようにしましょう。
<介護施設の開業を成功させるためのポイント>
- 利用者の維持や確保に励む
- 働きやすい環境を整えてスタッフの維持に努める
- 介護報酬が入金されるまでのタイムラグを意識し運営資金を確保しておく
詳しく見てみましょう。
4-1. 利用者の維持や確保に励む
介護施設を開業した後も、利用者の維持や新規利用者の確保に励むことが大切です。
介護施設は高齢化の進展により利用者の増加が見込まれますが、同時に介護事業の新規参入も多いため、油断していると利用者を同業者に奪われてしまいます。
そのため、地域の利用者を確実に確保するためにも下記のような営業活動をまめに行うようにしましょう。
- ニーズに沿ったサービスを提供して顧客満足度をあげる
- 他の事業所との差別化をはかる
- 営業ツール(ちらし、パンフレット、ホームページなど)を使って地域の人に知ってもらう
- 地域のケアマネージャーに事業所の良さを知ってもらう
特にケアマネージャーは介護の必要な人のケアプランを立てたり、介護の必要な人に必要な施設を紹介したりするため、事業所を知ってもらうことは利用者の確保にとても役立ちます。
4-2 働きやすい環境を整えてスタッフの維持に努める
介護事業を成功させるには、働きやすい環境を整えてスタッフの維持に努めることも大切です。
介護職員は、他業種に比べて労働条件がよくないため、そもそもなり手が少ない職種と言えます。
そのうえ同業他社との人材獲得競争が激しいため、なかなか人材を確保することが簡単ではありません。
確保した人員が、労働環境などに不満を抱いて辞めてしまわないように、休みがしっかり取れて資格手当も出すといったような働きやすい環境を整えて、スタッフを維持するように努めましょう。
また介護事業者の人員基準は、指定申請の時だけ満たしていれば良いわけではなく、指定を受けた後に指定基準に人員が足りていないことが分かれば指定は取り消され、罰則を受けることもあります。
スタッフの維持には気を配るようにしましょう。
4-3. 介護報酬が入金されるまでのタイムラグを意識し運営資金を確保しておく
介護事業の開業で失敗しないためには、介護報酬が入金されるまでのタイムラグを意識し、運営資金を確保しておく必要があります。
介護事業では、サービスの対価である介護報酬が国民保険などから支払われるのは請求から60日後が一般的です。
入金まで2か月ほどのタイムラグがある一方で、その間に設備の維持費や人件費といった月々支払いが発生します。
介護報酬の入金までの間に資金繰りが悪化したりすることのないように、別途運営資金を確保しておくようにしましょう。
資金繰りが悪くなると提供するサービスの質が落ちたり、スタッフへの人件費の支払いが遅れたりして利用客離れやスタッフ離れにつながりかねません。
サービスの質やスタッフを維持するためにも、運営資金に余裕を持たせておくことが大切です。
5. 資金繰りに困ったら介護報酬ファクタリングを利用しよう
開業後の資金繰りに困った場合に備えて、「介護報酬ファクタリング」という手段を、資金調達方法の一つとして選択肢にいれておくようにしましょう。
「4. 介護施設の開業を成功させるためのポイント3つ」でもお伝えした通り、介護施設の開業で失敗しないためには、開業後の資金繰りを考えて運営資金を確保しておくことが大切です。
とはいえ、介護施設を開業した後、資金繰りが思うようにいかなくなることはあるかもしれません。
「確保していた運営資金でまかないきれなくなった」などといった時の資金調達方法として、介護報酬ファクタリングという手段がとても役に立ちます。
介護報酬ファクタリングとは、まだ入金されていない介護報酬についてファクタリング会社が買い取って資金化する方法です。
介護報酬ファクタリングをより理解するために「ファクタリングとは」のコラムも併せてご覧ください。
【介護報酬ファクタリングとは】
介護報酬ファクタリングとは、「介護報酬債権(売掛金)」をファクタリング会社に売却して債権の支払期日より前に資金化する金融サービスです。
介護報酬ファクタリングを利用することにより、通常60日後に支払われる介護報酬を前もって受け取ることができます。入金スケジュールのイメージは下記のようになります。
【介護報酬ファクタリングを利用した場合の入金スケジュール】
介護報酬ファクタリングは、融資などといった借り入れでなく、いわば介護報酬の先払いです。
借金ではないため、返済義務もなく、高い利息を支払い続けることもありません。
また、資金調達にあたっての担保や保証人も不要であることが多いです。
ご利用時には手数料がかかりますが、介護報酬の支払い元である「国民保険」や「社会保険」の信用力が高いため、比較的安い手数料で利用することができます。
また資金調達時の審査対象は、あくまで「介護報酬債権」とその支払い元に対する審査となるので、もし介護施設自体の業績が悪くても、資金調達には影響しません。
介護施設が赤字でも債務超過でも資金調達ができます。
「介護報酬ファクタリング」は、介護施設開業後の資金調達手段の一つとしてとても役立つため、資金調達手段として検討しておくようにしましょう。
介護報酬ファクタリングについて詳しくは「介護報酬ファクタリングとは!メリットとおすすめな会社を比較 」を参照してください。
まとめ
介護施設の開業に必要な基本事項について紹介しました。
介護施設の開業には特別な資格は必要ありませんが、自治体への「指定申請」が必要なため、「指定申請」を念頭に置いて準備を進めるようにしましょう。
準備を進める手順については、下記のようにお伝えしました。
介護施設の開業を成功させるには、利用者の確保やスタッフの維持に気を配る必要があります。
また、サービスの質を維持したり、スタッフを維持するためにも、資金繰りを悪化させないよう運営資金をしっかりと確保しておくことも大切です。
ぜひ介護施設の開業を成功させるためにこれらの情報を活用してください。
筑波大学大学院修士課程修了後、上場企業に勤務。不動産ファンドの運用・法務を担当した後、中小企業の事業再生や資金繰り支援を経験。その後弊社代表から直々の誘いを受け、株式会社ビートレーディングに入社。現在はマーケティング・法務・審査など会社の業務に幅広く携わる。
<保有資格>宅地建物取引士/貸金業務取扱主任者