サプライチェーンファイナンスとは、サプライチェーンの過程において、発注者の買掛金を金融機関が立替払いするサービスです。
ファクタリングに似ていますが、目的や仕組みは異なります。
サプライチェーンファイナンスやファクタリングを利用する上では、それぞれの違いを理解しておくことが大切です。
この記事では、サプライチェーンファイナンスとは何か解説します。
ファクタリングとの違いを踏まえながら目的や仕組みを解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.そもそもサプライチェーンとは何か
サプライチェーンファイナンスがどのようなサービスなのか理解するために、まずはサプライチェーンがどのような意味なのかを押さえておく必要があります。
ここでは、サプライチェーンの意味や具体例を詳しく解説します。
1-1.サプライチェーンは消費までの一連の流れ
サプライチェーン(Supply Chain)とは、商品を提供する過程における一連の流れのことです。
具体的には、原材料の調達、生産、加工、在庫管理、流通、販売、消費などが該当します。
商品の提供に関する一連の流れにおいて、受発注や入出荷などの取引が何度も繰り返されています。
それぞれの過程がチェーンのようにつながっている様子から、「サプライチェーン」という言葉が生まれました。
サプライチェーンの中では、発注側がバイヤー、原材料、資材、サービスなどの提供側がサプライヤーと呼ばれています。
サプライヤーの具体例をあげると、仕入先、納入業者、供給元などです。
何らかの事情でサプライチェーンが寸断されると、商品やサービスが消費者に届きにくくなるため、サプライチェーンの管理が重要視されています。
1-2.サプライチェーンの具体例
ここでは、サプライチェーンの具体例として、コンビニエンスストアの弁当について考えてみましょう。
コンビニエンスストアの弁当を消費者へ提供するためには、食品の原材料となる農作物が必要です。
農作物は何度も取引され、生産者、卸売業者、食品の製造業者、物流業者、小売店の順に引き渡されていきます。
サプライチェーンの取引に関わるバイヤーやサプライヤーは、プレイヤーと呼ばれています。
プレイヤー同士がそれぞれの取引によりつながることで、消費者がいつでもコンビニエンスストアで弁当を購入できる状況が作られているのです。
このように消費者に商品を届けるために、さまざまな業者を介してサプライチェーンがつながっています。
2.サプライチェーンファイナンスとファクタリングの違い
サプライチェーンファイナンスとファクタリングは、いずれも企業の資金繰りの改善に役立つサービスです。
ただし、具体的なサービスの内容はそれぞれ異なります。
ここでは、サプライチェーンファイナンスとファクタリングの違いを解説します。
2-1.利用する目的
サプライチェーンファイナンスは、サプライチェーンで取引される原料や商品の代金を立て替えるためのサービスです。
ものを仕入れるバイヤー向けのサービスであり、債務者が利用できます。
サプライチェーンファイナンスを利用すれば、安定的に商品を提供するために役立つでしょう。
一方、ファクタリングは、支払い期日より前に売掛金を資金化(現金化)するサービスです。
他の企業へものを提供するサプライヤー向けのサービスであり、債権者が利用できます。
ファクタリングを利用すると売掛金を早期に回収できるため、よりスピード感のあるビジネス展開を目指せます。
売掛金を早期に資金化できる「ファクタリング」の仕組みや特徴については基礎知識を記事をご覧ください。
2-2.依頼する企業
すでに触れたとおり、サプライチェーンファイナンスは、商品を提供するために必要なものを購入した際に発生した代金を立て替え払いするためのサービスです。
そのため、発注したバイヤーがサプライチェーンファイナンスのサービスを利用します。
一方、ファクタリングは売掛金を早期に資金化(現金化)するために利用できるサービスです。
サプライチェーンの過程においてやり取りされたものの代金が売掛金になっている場合、債権者であるサプライヤーが利用できます。
つまり、サプライチェーンファイナンスとファクタリングでは、そもそも依頼する企業に違いがあるのです。
2-3.契約形態
サプライチェーンファイナンスは、サプライヤーの同意を得た上で電子記録債権を譲渡し、融資契約を交わします。
金融機関、バイヤー、サプライヤーの3者間で契約しますが、契約を主導するのはあくまでもバイヤーです。
ファクタリングではファクタリング会社と債権譲渡契約を交わします。
ファクタリングでは、ファクタリング会社とサプライヤーによる2者間の契約も可能です。
状況によってはファクタリング会社、サプライヤー、バイヤーによる3者間ファクタリングを実施する場合もあります。
どちらのケースでも、契約を主導する側はサプライヤーになります。
電子記録債権について詳しくは「電子記録債権とは?活用場面やメリット・デメリットをわかりやすく解説」の記事をご覧ください。
2-4.でんさいネットへの加入
サプライチェーンファイナンスを利用するには、バイヤーとサプライヤーが「でんさいネット」に加入する必要があります。
「でんさいネット」とは、電子記録債権を取引するためのインフラです。
加入するには銀行との既存の取引が条件となっており、審査もあります。
バイヤーとサプライヤーの両方の加入が求められているため、サプライチェーンファイナンスの利用条件を満たすまでに時間がかかる可能性もあります。
ファクタリングを利用する場合、でんさいネットへの加入は必要ありません。
サプライヤーがファクタリング会社へ申し込んで審査に通れば、すぐに資金調達できます。
3.サプライチェーンファイナンスを利用するメリット
サプライチェーンファイナンスを利用する場合、発注者(バイヤー)と受注者(サプライヤー)の双方にメリットがあります。
ここでは、具体的にどのようなメリットがあるのか解説します。
3-1.発注者(バイヤー)にとってのメリット
サプライチェーンファイナンスを利用すれば、発注者(バイヤー)は代金の支払いを金融機関に立て替えてもらえます。
発注者(バイヤー)は買掛金を支払う時期を先延ばしできるため、資金繰りが厳しい場合でもさらなる仕入れが可能です。
まとまった資金を確保できるタイミングに合わせて金融機関への支払いの時期を調整すれば、資金繰りを改善できます。
また、金融機関に立て替え払えを依頼すると、買掛金の支払いをスムーズかつ着実に行えることもメリットです。
受注者(サプライヤー)にとっては売掛金が滞りなく入金されることになるので、サプライチェーンファイナンスを利用することで安心感を持ってもらえます。
3-2.受注者(サプライヤー)にとってのメリット
サプライチェーンファイナンスの契約はあくまでも発注者(バイヤー)が主導するものの、契約に関わる受注者(サプライヤー)にとってもメリットがあります。
発注者(バイヤー)がサプライチェーンファイナンスを利用すると、受注者(サプライヤー)は売掛金を支払期日よりも早く回収できるからです。
売掛金を前倒しで回収できれば、資金繰りの改善につながります。
売掛金があるにもかかわらず倒産するいわゆる「黒字倒産」の回避も可能です。
サプライチェーンファイナンスでは支払いそのものを金融機関が代行するため、発注者(バイヤー)の貸し倒れによる未払いのリスクもありません。
4.サプライチェーンファイナンスを利用するデメリット
サプライチェーンファイナンスにはデメリットもあります。
ここでは、発注者(バイヤー)と受注者(サプライヤー)のそれぞれにどのようなデメリットが発生するか説明します。
4-1.発注者(バイヤー)にとってのデメリット
サプライチェーンファイナンスのサービスを提供している金融機関は、それほど多くありません。
そのため、実際に利用できるケースは限られています。
選べる金融機関が少ないと他社と比較できず、有利な条件なのか判断しにくい点もデメリットです。
また、すでに解説したとおり、サプライチェーンファイナンスを利用するための条件として「でんさいネット」への登録があります。
登録するには窓口となる金融機関が実施する審査の通過が必要です。
審査に落ちれば登録ができないため、サプライチェーンファイナンスの利用も不可となります。
「でんさいネット」への登録は発注者(バイヤー)と受注者(サプライヤー)の両方が行う必要があるので、どちらか一方でも審査に通らないとサプライチェーンファイナンスの利用が認められません。
4-2.受注者(サプライヤー)にとってのデメリット
サプライチェーンファイナンスを利用する場合は手数料がかかり、負担するのは受注者(サプライヤー)です。
金融機関が立て替え払いする際、売掛金から手数料を差し引いた金額が支払われます。
そのため、サプライチェーンファイナンスを利用すれば、回収できる金額が本来の売掛金よりも少なくなります。
支払期日よりも早く売掛金を回収できますが、そもそも早期での回収が必要ない場合、受注者(サプライヤー)は自分たちが手数料を負担してサプライチェーンファイナンスを利用する魅力をあまり感じられないでしょう。
発注者(バイヤー)が主導して契約するにもかかわらず回収できる売掛金が減る点に納得できない可能性もあります。
5.サプライチェーンファイナンスの利用が向いているケース
サプライチェーンファイナンスは、どのような場合に利用すると良いのでしょうか。
ここでは、サプライチェーンファイナンスの利用が向いているケースについて具体的に解説します。
5-1.買掛金の支払期日が短い場合
買掛金の支払期日が短いと一時的に自社が保有する現金が極端に少なくなり、資金繰りが悪化する恐れがあります。
そのような場合にサプライチェーンファイナンスを利用すれば、実質的に買掛金の支払いを先延ばしにすることが可能です。
サプライチェーンファイナンスでは金融機関が買掛金を立て替え払いするため、受注者(サプライヤー)に対しては早い段階で支払いを完了させられます。
しかし、実際の出金は後になるので、資金繰りが厳しくなる事態を防げるでしょう。
5-2.買掛金を多く抱えている場合
複数の仕入れにより買掛金の総額が高くなっている場合、すべてを一度に現金で支払うと自社の資金が不足する恐れがあります。
そのような状況でサプライチェーンファイナンスを利用すれば、すべての買掛金の支払いを同時期に行う必要がなくなります。
金融機関が買掛金の支払いを代行するため、実質的な支払いのタイミングを遅らせることが可能です。
まとまった資金が入ってくるタイミングに合わせて支払いを調整できます。
6.サプライチェーンファイナンスと比較した場合のファクタリングのメリット
ファクタリングには、サプライチェーンファイナンスと比較してさまざまなメリットがあります。
状況によっては、ファクタリングのほうが向いている可能性もあるでしょう。
ここでは、サプライチェーンファイナンスと比較した場合のファクタリングのメリットを解説します。
6-1.受注者主導で利用できる
サプライチェーンファイナンスは発注者(バイヤー)が主導して利用するサービスであるのに対し、ファクタリングは売掛金を保有する受注者(サプライヤー)が主導して利用するサービスです。
受注者(サプライヤー)は、資金調達が必要になったタイミングで自らファクタリングの利用を選択できます。
ファクタリングを利用することで、売掛金の早期資金化(現金化)を実現可能です。
また、ファクタリングでは発注者(バイヤー)を介さずに2者のみでの契約することもできます。
受注者(サプライヤー)とファクタリング会社の合意により契約でき、売掛先である発注者(バイヤー)から承諾を得る必要はありません。
受注者(サプライヤー)が望むタイミングでスピーディーに資金調達できます。
6-2.でんさいネットへ登録する必要がない
サプライチェーンファイナンスを利用するには「でんさいネット」への登録が必須であるのに対し、ファクタリングにはそのような条件はありません。
ファクタリングなら手間や時間をかけて「でんさいネット」に登録する必要がなく、売掛金を早期に資金化(現金化)できます。
そもそも「でんさいネット」の審査は銀行や信用金庫が行うため、経営状況が厳しい企業は審査に通らない可能性が高いでしょう。
発注者(バイヤー)と受注者(サプライヤー)のどちらかの経営状況が悪化している場合、サプライチェーンファイナンスは利用できません。
ファクタリングの利用時にも審査がありますが、重視されるのは売掛先の信用力です。
そのため、仮に受注者(サプライヤー)の経営状況が悪くても、発注者(バイヤー)の経営状況に問題がなければ利用できます。
6-3.複数のファクタリング会社から選べる
すでに解説したとおり、サプライチェーンファイナンスを提供している金融機関は限られています。
しかし、ファクタリング会社は多く存在するため、幅広い選択肢の中からサービスを選べます。
ファクタリング会社によって特徴がそれぞれ異なるため、自社の状況を考慮して最適なところを見つけることが可能です。
例えば、すぐに資金調達が必要なら、即日入金に対応しているファクタリング会社を選ぶと便利です。
ファクタリングにおいても手数料が発生しますが、なるべく手数料を抑えるためには複数のファクタリング会社から見積りをとって比較すると良いでしょう。
ファクタリング会社はそれぞれ独自に手数料の基準を定めているため、実際に比較してみると特に手数料が安いところはどこなのか把握できます。
7.まとめ
サプライチェーンファイナンスは、発注者であるバイヤーが主導して利用するサービスです。
買掛金を金融機関に立て替えてもらえるため、実質的な支払いの時期を先延ばしにできます。
一方、ファクタリングは、受注者であるサプライヤーが主導して利用するサービスです。
支払期日より前に売掛金を資金化(現金化)したいなら、ファクタリングの利用がおすすめです。
ファクタリングに対応しているビートレーディングの審査時間は最短30分であり、問い合わせから振込まで最短2時間で資金調達を実現可能です。
Webフォーム、電話、メール、LINEで無料見積ができるため、ファクタリングの利用を検討している場合はぜひご相談ください。
筑波大学大学院修士課程修了後、上場企業に勤務。不動産ファンドの運用・法務を担当した後、中小企業の事業再生や資金繰り支援を経験。その後弊社代表から直々の誘いを受け、株式会社ビートレーディングに入社。現在はマーケティング・法務・審査など会社の業務に幅広く携わる。
<保有資格>宅地建物取引士/貸金業務取扱主任者