延現金とは、口約束で支払期日を決める決済方法を指します。
手元の資金不足の際に用いられますが、利用者と買掛先(取引先)にデメリットが生じるため利用時は注意が必要です。
本記事では、延現金の概要やメリット・デメリットなどを解説します。
延現金以外の決済方法として、ファクタリングを利用する方法も紹介するため、ぜひ最後までご覧ください。
目次
1.延現金とは何か
延現金とは、手形を用いずに口約束だけで取引を行い、支払期日を先延ばしにする決済方法のことです。
延現金は「のべげんきん」と読み、正式名称は延現金払いです。
また、期日現金払いと呼ばれることもあります。
企業間の取引では、売掛金と買掛金を用いた掛取引による決済が一般的で、支払期限は取引から1か月~2か月後に設定されます。
しかし、手元の資金が不足する場合は、買掛金の支払期限までに資金調達の目途をつけておかなければなりません。
取引相手の了解を得て延現金にできれば、資金繰りが改善するまで支払期限を延期してもらえます。
2.延現金におけるメリットとは
延現金を利用する主なメリットは、手続きの手間をかけずに支払期限を先延ばしにできることです。
2-1.支払いのタイミングを先延ばしできる
延現金のメリットのひとつは、商品やサービスの代金の支払期限を通常の取引よりも延期できることです。
支払期限を先延ばしにすると代金を支払うまでに猶予ができるため、支払期限までに資金繰りを解消することで手元の資金を確保できます。
また、延現金によって代金の支払期限までに資金の余裕が生まれ、従来と異なる取引ができるようになれば取引の幅を広げられます。
2-2.手続きに手間・手数料がかからない
延現金のメリットは、手続きに手間や手数料がかからないことです。
手形を用いて取引を行う場合、支払期限を先延ばしにすることは可能であるものの、金融機関での手続きが必要になり提出書類を作成して持参する手間が増えます。
また、手形を発行する度に手数料の支払いが発生します。
一方で、延現金は取引先と支払期限の延期の口約束を交わすだけで済むため、複雑な手続きをする必要がない上に手数料も発生しません。
3.延現金におけるデメリットとは
延現金の主なデメリットは、利用できないケースがあることや買掛先にメリットがないことです。
3-1.利用できるケースが限定されている
延現金は口約束だけで支払期限を先延ばしにできる方法ですが、下請法によって利用できないケースが定められています。
下請法で定められている内容は次のとおりです。
1.物品の製造・修理委託及び政令で定める 情報成果物・役務提供委託を行う場合 | ・親事業者の資本金:3億円超、 下請事業者の資本金:3億円以下 ・親事業者の資本金:1,000万円超~3億円以下、 下請事業者の資本金:1,000万円以下 |
2.情報成果物作成・役務提供委託を行う場合 (1の情報成果物・役務提供委託を除く) | ・親事業者の資本金:5,000万円超、 下請事業者の資本金:5,000万円以下 ・親事業者の資本金:1,000万円超~5,000万円以下、 下請事業者の資本金:1,000万円以下 |
上記に挙げる関係性に該当する親事業者と下請事業者は下請法が適用されるため、延現金を利用できません。
3-2.買掛先にメリットがない
延現金は、支払期限を先延ばしにできる利用者にとって魅力的なメリットになりますが、買掛先が得するようなメリットはありません。
むしろ、買掛先は売掛金の回収が先延ばしになることでデメリットを被る恐れがあります。
4.買掛先が被る延現金のデメリットとは
延現金にすると買掛先は資金繰りの負担が大きくなる、手形割引を使えないなどのデメリットを被る可能性があります。
4-1.支払日までの資金繰りが負担になる
延現金は支払期限を先延ばしにするため、買掛先は支払期日が来るまでの間に商品やサービスの代金を回収できません。
通常の掛取引であれば、支払期日までに商品やサービスの代金が支払われるため、2か月~3か月を目途に売掛金を回収できます。
しかし、延現金によって売掛金を回収するタイミングが先送りになると、資金繰りが悪化する恐れがあります。
最悪の場合、売掛金を回収できないまま黒字倒産に陥ってしまう企業も出てくるでしょう。
4-2.手形割引を使えない
手形取引の場合、手形割引の活用によって買掛先は資金調達を行うことができます。
手形割引とは、銀行や手形割引業者に手形を売ることで支払期日より前に代金を回収できるサービスです。
しかし、延現金を利用すると手形割引による恩恵を受けられません。
買掛先は売掛先から商品やサービスの代金が振り込まれるのをただ待つしかなく、手元の資金が不足する場合は手形割引以外の資金調達方法で資金繰りを改善するしかないでしょう。
手形割引について詳しくは「ファクタリングと手形割引の違いとは?それぞれのメリット・デメリット」の記事をご覧ください。
4-3.下請法が適用外だと拒否が難しい
売掛先から延現金を提案された場合、買掛先が拒否できないケースも少なくありません。
延現金は売掛先と買掛先の口約束によって成立するため、買掛先が提案を断る権利があります。
しかし、売掛先との関係性が対等でない場合、買掛先が提案を断ると今後の取引に影響が及ぶ不安がつきまといます。
そのため、下請法が適用対象外でない限り、買掛先から延現金の提案を断ることは難しくなるでしょう。
5.ファクタリングで資金不足を解消できる?延現金との違いとは
手元の資金が不足するときや売掛先から延現金の申し出があった際の対策として、ファクタリングで資金調達する方法があります。
延現金は支払期限を先延ばしにする方法で売掛金の期日の設定を対象しているのに対し、ファクタリングは売掛金を売買の対象にしており、売却することで資金化(現金化)する方法です。
自社(買掛先)と売掛先で取引する延現金と異なり、ファクタリングでは自社とファクタリング会社の2者間、または売掛先を加えた3者間による2種類の契約方法があります。
また延現金は売掛先にメリットがある取引ですが、ファクタリングは買掛先にメリットが多くあります。
ここではファクタリングのメリットについて解説していきます。
ファクタリングについて詳しくは「ファクタリングとは?仕組みや種類・意味・注意点を簡単に解説!」の記事をご覧ください。
5-1.ファクタリングを利用するメリット
ファクタリングは、買掛先が資金調達や売掛金の未回収リスクに備えることができる方法です。
ファクタリングの主なメリットは次のとおりです。
● 借入せずに資金繰りを解消できる
● スピーディーな資金調達が可能
● 信用情報に影響が及ばない
● 売掛金の未回収リスクを軽減できる
● 融資よりも審査基準が柔軟に設定されている
● 2者間ファクタリングなら利用時の売掛先の承諾が不要
6.延現金の代わりにファクタリングを利用する前に確認すべき注意点
延現金ではなく、ファクタリングを利用して資金調達をする場合は手数料を確認し、計画的に利用するように注意しましょう。
6-1.手数料がかかる
ファクタリングを利用する際は、ファクタリング会社へ手数料を支払う必要があります。
2者間ファクタリングでは、4%~12%程度の手数料がかかります。
3者間ファクタリングは2%~9%程度で、2者間ファクタリングよりも比較的安い手数料が設定されているのが一般的です。
手数料が売掛金から差し引かれるため、手元に残る金額は少なくなります。
ファクタリングを利用して資金調達した場合、本来受け取れる売掛金よりも金額が減少することを理解した上で利用を検討しましょう。
6-2.計画的に利用する
ファクタリングは売掛金が複数あれば利用中でも追加で利用することや繰り返し利用することも可能です。
しかし前述のとおり、ファクタリングは利用する度に手数料が差し引かれ、手元に残る金額は本来受け取れる売掛金よりも減る仕組みです。
ファクタリングを何度も利用すると、資金調達をしても手元に残る金額が不足する可能性があります。
ファクタリングは効率良く資金調達できる方法ですが、あくまでも一時的な対策と考え、計画的に資金調達するようにしましょう。
7.まとめ
延現金とは手形や売掛金を用いずに支払期限を先延ばしにすることを指します。
商品やサービスの代金を支払う側にとって支払いを先延ばしにできる魅力があるものの、買掛先にとってはデメリットしかありません。
手元の資金が不足した場合は、買掛先にデメリットが及ばないファクタリングの利用を検討することをおすすめします。
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筑波大学大学院修士課程修了後、上場企業に勤務。不動産ファンドの運用・法務を担当した後、中小企業の事業再生や資金繰り支援を経験。その後弊社代表から直々の誘いを受け、株式会社ビートレーディングに入社。現在はマーケティング・法務・審査など会社の業務に幅広く携わる。
<保有資格>宅地建物取引士/貸金業務取扱主任者