「ファクタリングと手形割引の違いって何だろう」
「資金調達方法としてファクタリングと手形割引どっちがいいのかな?」
そうお考えではありませんか?
結論から述べると、ファクタリングと手形割引の大きな違いは、資金化する対象に違いがあります。
ファクタリングは売掛金を、手形割引は手形を資金化する方法です。
他にも償還請求権の有無・手数料・資金化までのスピード・決算書への影響など、ファクタリングと手形割引にはさまざまな違いがあります。
したがって、それぞれの性質をしっかり理解した上で、資金調達する方法を判断することが大切です。
この記事では、
◉ファクタリングと手形割引のそれぞれの仕組み ◉ファクタリングと手形割引の共通点 ◉ファクタリングと手形の重要な8つの違い ◉ファクタリングのメリット・デメリット ◉手形割引のメリット・デメリット ◉【ケース別】ファクタリングと手形割引、どちらを選ぶべき? ◉約束手形の廃止と今後の影響 |
について解説しています。
この記事を最後までお読みいただくと、ファクタリングと手形割引の仕組みや共通点、相違点について理解でき、資金調達方法としてどちらが自分に適しているか判断することができます。
また、手形割引の対象である約束手形は将来的に廃止される予定となっているため、廃止後の影響や取るべき対応についても確認しておきましょう。
ファクタリングや手形割引について知りたい方はぜひ参考にしてみてください。

目次
1.ファクタリングと手形割引のそれぞれの仕組み

まずは、ファクタリングと手形割引の仕組みをそれぞれ解説します。
資金化する対象や、資金を受け取るまでの期間を把握しておきましょう。2者間ファクタリングと3者間ファクタリングの仕組みも詳細に解説します。
1-1.ファクタリングの仕組み
ファクタリングとは、自社の保有する売掛債権(売掛金)を譲渡して資金を調達する方法です。
売掛金は支払期日が決まっていますが、ファクタリングを利用すると支払期日よりも前倒しで資金化が可能です。ファクタリングには2者間ファクタリングと、3者間ファクタリングがあります。
2者間ファクタリングは、ファクタリング会社と利用者の2者で契約する方法です。2者間ファクタリングは手数料の高さがネックですが、最短即日で資金化できるところが強みといえます。
2者間ファクタリングについて詳しくは「2者間ファクタリングとは?メリット・デメリットとやり方・注意点を解説」の記事をご覧ください。
3者間ファクタリングは、ファクタリング会社と利用者、売掛先の3者で契約する方法です。3者間ファクタリングは手数料を抑えられますが、資金化まで数日程度かかります。
また、3者間ファクタリングを利用する際は、売掛先への連絡が必要になります。3者間ファクタリングで手数料を抑えられる理由は、ファクタリング会社が売掛金の存在等を売掛先に確認できるためです。
3者間ファクタリングについて詳しくは「3者間ファクタリングとは?依頼者・売掛先双方のメリット・デメリット」の記事をご覧ください。
1-2.手形割引の仕組み
ファクタリングとは異なり、手形割引では約束手形(受取手形)を資金化します。約束手形は有価証券の一種で、手形振出人が受取人に対して一定の金額の支払いを約束するものです。
売掛債権と同じく、手形も支払期日にならなければ資金化できません。しかし、銀行や手形割引業者で提供される手形割引を使えば、利用者が受け取った約束手形を支払期日よりも前に割引された金額で資金化できます。
手形割引料は、銀行や手形割引業者によって異なるため、利用するサービスごとに確認しましょう。手形割引料とは、金利とサービスにかかる手数料を合算したもののことです。金利は、支払期日までの日数や、手形振出人の信用度で変わります。
また、銀行の場合は1週間程度で、手形割引業者の場合は最短即日で手形割引による資金化が可能です。
2.ファクタリングと手形割引の共通点
ファクタリングと手形割引には以下のような違いがあります。
ファクタリング | 手形割引 | |||
2者間ファクタリング | 3者間ファクタリング | 銀行 | 手形割引業者 | |
賃金業法の適用 | 対象にならない | 対象になる | ||
償還請求権 | ないものが多い | 原則あり | ||
手数料・金利 | 手数料8%~18% | 手数料2%~9% | 年利1%~5% | 年利5%~20% |
審査で重視されるポイント | 売掛先の信用 | 利用者の信用 | 売掛先の信用 | |
資金化できるスピード | 最短即日~ | 1週間程度~ | 1週間程度~ | 最短即日~ |
売掛先に知られるか | 知られない | 知られる | 知られない |
一方で共通点もあるため、ここではファクタリングと手形割引の共通点について解説します。
いずれの資金調達方法も、売掛金を早期に流動化でき、即日から1週間という短期間で資金を振り込んでもらえます。銀行などの融資よりもスピーディーに運転資金を調達できるところが、ファクタリングと手形割引のメリットです。
2-1.売掛金を早期に流動化できる
上述したように、ファクタリングと手形割引は、支払期日が到来する前に資金調達する方法として利用されています。
売掛金も約束手形(受取手形)も価値があるものですが、支払期日が到来するまでは運転資金として使えません。運転資金を得るには、ファクタリングや手形割引などで売掛金や約束手形(受取手形)を流動化しましょう。
早期に売掛金を流動化すると、利用者は銀行などの融資に頼らず、資金繰りを改善できる可能性があります。融資を受ける際は厳格な審査を受ける必要があり、資金を得るまで数週間かかるケースも少なくありません。
また、審査に通らなければ、時間をかけても融資を受けられない恐れがあります。
2-2.資金調達までの期間が短い
ファクタリングも手形割引も、銀行などの融資よりも資金調達までの期間が短くて済みます。資金化する方法にもよりますが、どちらの手法でも即日から1週間程度で資金化可能です。短期間で資金化できる理由は、融資で行われる複雑な審査を省けるためです。
一方、融資の場合は、資金を調達できるまで早くても1週間、状況によっては1か月以上かかることも少なくありません。融資を受けるには複数の書類を用意し、面談も行われます。審査が終わったら、融資額や金利などが決まり、ようやく資金を得られます。
3.ファクタリングと手形の重要な8つの違い
ファクタリングと手形割引はどちらも早くに資金化をする資金調達法です。しかし、それぞれ異なる資金調達法なので、どちらを利用するか検討する際は違いを把握しておく必要があります。
3-1.大きな違いは資金化する対象の違い
ファクタリングと手形(受取手形)の大きな違いは、資金化する対象の違いです。
どちらも売掛債権ですが、ファクタリングは売掛金を、手形割引は受取手形を資金化するという違いがあります。
ファクタリングについて詳しくは「ファクタリングとは?仕組みや種類・注意点を図で簡単に解説!」の記事をご覧ください。
▼売掛債権とは
品物を販売したり、サービスを提供した会社が、その対価として売掛先から将来的に代金を受け取る権利のことをいいます。売掛金と受取手形の2種類があります。
3-2.貸金業法の適用
賃金業法が適用されるか、されないかという違いもあります。
・手形割引…賃金業法が適用される ※銀行の場合は銀行法 ・ファクタリング…賃金業法が適用されない |
賃金業法とは、金銭の貸付けを行う業者が守るべき規則を定めた法律です。
主に利用者を守るため、法律により不適切な業者を取り締まり、安全に利用できるようにする取り決めとなります。
貸金業法があることで、金利や手数料の上限があるかないかという差が出てきます。
手形割引は貸金業法が適用されるので、金利の上限が20%と定められています。一方、ファクタリングは貸金業法が適用されないため、手数料の上限がありません。
ファクタリングが貸金業ではない法的根拠について詳しくは「ファクタリングは貸金業ではない|法的根拠と注意点を解説」の記事をご覧ください。
3-3.償還請求権の有無
次に、償還請求権があるかないかという違いがあります。
・ファクタリング…償還請求権がない(ノンリコース)契約が多い ・手形割引…償還請求権がある(リコース)契約が多い |
▼償還請求権とは
償還請求権とは、売掛先が倒産してしまい売掛金を回収できなかった場合に、利用者に売掛金の支払いを請求できる権利のことを言います。
「ファクタリング」は償還請求権なしの契約も可能です。
償還請求権がない契約の場合、もし売掛先が倒産してしまっても利用者はファクタリング会社から売掛金相当額の支払いを請求されません。
しかし、償還請求権がある「手形割引」は、もし売掛先が倒産してしまった場合、利用者に売掛金相当額の支払いを請求されるということです。
つまり、償還請求権のある手形割引は貸し倒れ*のリスクがあり、償還請求権のないファクタリングは貸し倒れのリスクがないということになります。
*貸し倒れとは、売掛金や貸付金などの債権が売掛先の倒産などの理由で回収できず、損失になること
債権者(利用者)からすると、売掛先の倒産リスクを考えた場合は、償還請求権がないファクタリングを利用する方が安心と言えるでしょう。
3-4.手数料・金利
ファクタリングではファクタリング会社に対して支払う手数料が発生します。手数料はファクタリング会社によって異なるため、利用する際に確認が必要です。
また、2者間ファクタリングか3者間ファクタリングかといった契約方法によっても、手数料が異なります。
一方、手形割引は貸金業法が適用されるため、金利が発生する資金調達法です。金利は手形割引をどこで行うか(銀行か貸金業者か)によって異なります。
それぞれ手数料・金利はこのようになっています。
手形割引 銀行 …年利1%~5%程度 賃金業者…年利5%~20%程度 |
ファクタリング 2者間 …手数料8%~18%程度 3者間 …手数料2%~9%程度 |
手形割引の金利に比べてファクタリングの手数料の方が高い傾向にありますが、3者間ファクタリングにすると手数料を低く抑えることができます。
また、手形割引は貸金業法によって、金利の上限が年利20%と決められているので、それ以上高額になる心配がありません。
一方でファクタリングは手数料の上限が決められていないので、中には高額な手数料を設定しているファクタリング会社もあります。
3-5.審査で重視されるポイント
次に審査で重視されるポイントの違いがあります。
ファクタリング …売掛先の信用度 |
手形割引 銀行…利用者の信用度 専門業者…手形振出人の信用度 |
ファクタリングは、利用者ではなく売掛先の信用力が重要です。そのため、赤字が続いている企業や創業間もない企業、個人事業主など融資が通らない場合でも利用しやすいでしょう。
一方で、手形割引は、銀行で換金する場合、手形振出人と利用者の信用力が重視されます。これまでの取引状況や財務状況の調査を慎重に行うため、審査が厳しい傾向です。
ただし、手形割引の専門業者で換金する場合は、手形振出人の信用力が重視されるため、銀行よりも審査が通りやすい傾向があります。
3-6.資金化できるスピード
手形割引とファクタリングでは、資金化できるスピードにも違いがあります。
資金化できるスピードは、手形割引の中でも銀行か貸金業者か、ファクタリングの中で2者間か3者間かによっても変わってきます。
それぞれ資金化までの期間の目安は次の通りです。
ファクタリング 2者間ファクタリング…最短即日~ 3者間ファクタリング…最短2日~ |
手形割引 銀行 …1週間程度~ 手形割引専門業者 …最短即日~ |
基本的にファクタリングの方が、手形割引よりも資金化できるスピードは早いと言われています。
しかし、それは換金先が銀行の場合なので、換金先が手形割引業者の場合はファクタリングと同じくらいの早さで資金化することができます。
手形割引で銀行に依頼する場合は、他の方法に比べて時間がかかるので、急を要する方には向いていないでしょう。
3-7.売掛先に知られるか
割引手形とファクタリングでは、利用したことを売掛先に知られるかどうかの違いもあります。
売掛先に資金調達をしていることが知られてしまうと、
「そんなに資金に困っているのか」
とマイナスイメージを持たれてしまう可能性もあります。したがって、売掛先に知られても大丈夫かどうかも重視しましょう。
ファクタリング 2者間…知られないことが多い 3者間…知られる |
手形割引 知られない |
手形割引は、売掛先に手形割引を利用していることを知られずに済みます。一方のファクタリングは、2者間か3者間かによって変わってきます。
2者間ファクタリングの場合は、利用者(お客様)とファクタリング会社の契約なので、売掛先にファクタリングを利用していることは知られません。
しかし、3者間ファクタリングは、利用者(お客様)と売掛先とファクタリング会社の3者で契約を行うため、必然的にファクタリングを利用していることが、売掛先に知られてしまいます。
したがって、売掛先に資金調達をしていることを知られたくない場合は、手形割引か2者間ファクタリングを利用するようにしましょう。
3-8.決算書への影響
将来的に銀行などの融資を受けたいと考えている場合、決算書への影響も考慮することが大切です。ファクタリングは借り入れとは異なるため、利用しても負債が増えるわけではありません。
一方、手形割引の場合は金融機関からの借り入れという扱いになるため、利用すると資産に加えて負債までも増加してしまいます。
ファクタリング…決算書へ影響しない |
手形割引…決算書に影響する |
銀行などの機関は、融資審査において貸借対照表を重視します。貸借対照表には企業の財務情報がまとめられており、融資判断をする際の手がかりを得られます。
手形割引で資金化すると、会計処理の方法にもよりますが、貸借対照表の流動負債に割引手形を計上しなければなりません。そのため、負債が増えて融資の際に不利になってしまいます。
4.ファクタリングのメリット・デメリット
次にファクタリングと手形割引を比べた場合の、ファクタリングのメリット・デメリットを解説していきます。
4-1.メリット
まずは、手形割引と比べた場合の、ファクタリングのメリットを解説していきます。
手形割引と比べた場合のファクタリングのメリットは、次の2つです。

それぞれ解説していきます。
4-1-1.貸し倒れのリスクを回避できる
まずは貸し倒れのリスクを回避できるという点です。
これが手形割引と比べた場合の、ファクタリングの一番のメリットと言えます。
貸し倒れとは、貸したお金が返ってこないこと、売掛金などの債権が倒産などで回収できなくなり損失になることをいいます。
この貸し倒れリスクを回避できるかどうかは、償還請求権があるかないかの違いになります。
1章でもお話ししましたが、償還請求権とは、売掛先が倒産してしまい売掛金を回収できなかった場合に、利用者に売掛金相当額の支払いを請求できる権利のことを言います。
・ファクタリング…償還請求権がない(ノンリコース)契約が多い ・手形割引…償還請求権がある(リコース)契約が多い |
ファクタリングは償還請求権がない契約も可能なので、もし売掛先の倒産などでファクタリング会社が売掛先から債権の回収ができなくなった場合でも、あなた(債権者)に支払いの請求が来ることはありません。
しかし、手形割引は償還請求権があることがほとんどなので、債権の回収ができなくなった場合は、債権者のあなたが債権相当額を支払う義務があるのです。
売掛先が倒産してしまい、債権の回収ができなくなるという「貸し倒れ」のリスクを防げるのは、償還請求権のないファクタリングのメリットです。
売掛先が倒産するか心配、貸し倒れのリスクを回避したいという方はファクタリングがおすすめです。
ただし、貸し倒れることが分かっている売掛金や既に支払いが遅れているような売掛金を使ってファクタリングはできませんので注意しましょう。
償還請求権のあるファクタリング会社もあるので注意しよう! | |
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4-1-2.信用情報に悪影響がない
ファクタリングには、信用情報に悪影響がないというメリットもあります。
信用情報とは、金融機関への借り入れ状況やローンやクレジットの申し込みや取引事実を登録している個人情報のことです。
過去に支払いの遅れがあったりして信用情報が悪い場合、それから5~10年ほど融資が受けられないといったデメリットがあるのです。
また、過去に借りた履歴があると融資を受けたい時に審査にマイナスの影響を与えることもあります。
信用情報機関に加盟しているのはクレジットカード会社や消費者金融機関、銀行を中心としたさまざまな機関です。
信用情報機関に加盟している金融機関から融資を受けた場合は、信用情報が記録されます。
しかし、ファクタリング会社は信用情報機関に加盟していないので、信用情報に記録されないのです。
したがって、ファクタリングを利用したこと(資金調達したこと)を銀行など他の金融機関に知られることがありません。将来融資を受けたいという場合に、審査に悪影響がないことがメリットです。
4-2.デメリット
次に手形割引と比べた場合の、ファクタリングのデメリットを解説していきます。
手形割引と比べたファクタリングのデメリットは以下の3つです。

1つずつ解説していきます。
4-2-1.手数料が高い
ファクタリングは手形割引に比べて、手数料が高いことがデメリットです。
こちらがファクタリングと手形割引それぞれの手数料になります。
ファクタリング 2者間…手数料8%~18% 3者間…手数料2%~9% |
手形割引 銀行…年利1%~5% 手形割引専門業者…年利5%~20% |
3者間ファクタリングの手数料は2%~9%、手形割引を銀行で行うと金利は1%~5%なので、さほど変わらないようにも見えます。
しかし、手形割引は年利なので、手形の支払期日までの日数により変動します。1回の取引に対しての手数料であるファクタリングとは費用が大きく異なってくるのです。
例えば、支払期日が1か月後の手形500万円を割り引いた場合と支払期日が1か月後の売掛債権500万円をファクタリングした場合で考えてみましょう。
(手数料・年利10%計算)
▼ファクタリングの手数料
500万円 × 10% = 50万円
500万円をファクタリングで資金調達した場合、手数料は50万円となります。
▼手形割引の手数料
手形割引の手数料の計算方法は以下になります。
手形割引の手数料(割引料)の計算方法 |
手形額面金額 × 手数料(%) × 支払期日までの日数 ÷ 365日 = 割引手数料 |
こちらに当てはめて計算していきますね。
500万円 × 10% × 31日 ÷ 365日 = 42,465円
500万円の手形を手形割引で資金調達した場合、手数料(割引料)は約4万円となります。
(支払期日が31日後の場合)
このように、手数料の割合が同じであっても、計算してみると大きな差があることが分かります。
ただし、これは同じ1か月で計算した場合の手数料です。
手形割引は手形の支払期日までの日数により手数料が変わるので、支払期日が60日後や90日後のように長くなればなるほど手数料も高くなります。
支払期日が90日後の手形500万円を手形割引した場合の手数料をみてみましょう。
500万円 × 10% × 90日 ÷ 365日 = 123,287円
500万円の手形を手形割引で資金調達した場合、手数料(割引料)は約12万円となります。
(支払期日が90日後の場合)
計算した手数料をまとめると以下のようになります。
▼計算した手数料のまとめ (500万円を手数料10%で資金調達する場合) ・ファクタリングの場合 …50万円 (手数料は期間に関係なく一定) ・手形割引 支払期日が1か月後…約4万円(42,465円) 支払期日が90日後…約12万円(123,287円) |
ファクタリングの手数料は期間に関係なく一定ですが、手形割引の手数料は返済する期間により大きく変わることが分かります。
4-2-2.売掛先にファクタリングのことを知られてしまう
次に、売掛先にファクタリングのことを知られてしまう・知られるリスクがあるというデメリットがあります。
ファクタリングのうち、3者間ファクタリングの場合は売掛先も含めた契約になるので、必然的に売掛先にファクタリングをしていることが知られてしまいます。
2者間ファクタリングは、債権者とファクタリング会社の契約になるため、基本的に売掛先にファクタリングのことを知られることはありません。
しかし、債権譲渡登記をすると、誰でもその情報を見ることができるため、売掛先にファクタリングしていることを知られる可能性もあります。
売掛先にファクタリングしていることが知られてしまうと、
「そんなに資金に困っていたんだ」
とマイナスなイメージを与えてしまう可能性もあるので、知られたくない方も多いでしょう。
したがって、ファクタリングは売掛先にファクタリングの利用を知られる可能性があるというデメリットがあります。
売掛先に資金調達の状況を知られたくない場合は、2者間ファクタリングで債権譲渡登記不要にしている会社に依頼するか、手形割引など他の方法を考えましょう。
4-2-3.売掛先の業績によって審査に通らないことがある
ファクタリングは売掛先の業績によって審査に通らないことがあるという点にも注意が必要です。
ファクタリングは債権者(利用者)の信用力ではなく、売掛金があるか・売掛先の信用力はどうか(売掛金がきちんと支払われるか)という部分が審査の対象となります。
ファクタリングは償還請求権がないことが多いため、もし売掛先の倒産などで債権が回収できなくなってしまったら、ファクタリング会社の損失になってしまいます。
そのため、売掛先の信用力をしっかり審査するのです。
したがって、売掛先の赤字経営が続いているといった場合には、審査が通らない可能性もあります。
反対に、債権者(利用者)の信用力で審査されないため、個人事業主や駆け出しの企業なども審査に通りやすい点は大きなメリットです。
5.手形割引のメリット・デメリット
次にファクタリングと手形割引を比べた場合の、手形割引のメリット・デメリットについて解説していきます。
5-1.手形割引のメリット
まずは、ファクタリングと比べた場合の手形割引のメリットをお話ししていきます。
ファクタリングと比べた手形割引のメリットは次の2つです。

5-1-1.手数料が低い
まずは手数料が低いというメリットがあります。
これは4章の4-2.ファクタリングのデメリットでもお話ししましたが、手形割引はファクタリングに比べて手数料を低く抑えることができます。
4章で計算した手数料について、もう一度見てみましょう。
▼500万円の売掛金を手数料10%で資金調達する場合 ・ファクタリングの場合 …50万円 (手数料は期間に関係なく一定) ・手形割引 支払期日が1か月後…約4万円(42,465円) 支払期日が90日後 …約12万円(123,287円) |
このように、500万円の債権があった場合、ファクタリングと手形割引で手数料が同じでも、こんなに手数料が変わってきます。
これは、ファクタリングの手数料は金額に対して一定ですが、手形割引の手数料(割引料)は手形の支払期日によって変動するからなのです。
手数料をできるだけ低く抑えることができると、その分資金化できる金額が多くなり資金として使える金額が大きくなりますよね。
5-1-2.売掛先に知られない
次に売掛先に知られないというメリットがあります。
こちらも4-2.ファクタリングのデメリットでお話ししましたが、ファクタリングは売掛先に知られてしまったり、知られるリスクがありますが、手形割引は売掛先に知られません。
手形割引は昔から資金調達方法として広く認知されています。一方で、ファクタリングは近年普及してきた資金調達方法ですので、ファクタリングによる資金調達に馴染みがない会社も多いようです。
そのため、ファクタリングの利用を売掛先に知られると、
「そんなに資金に困っているのか。大丈夫かな?」
とマイナスなイメージを持たれてしまう可能性があります。
しかし、手形割引は売掛先に知られることがないので、
「売掛先に自社の資金調達事情を知られてしまうかも」
という不安を抱かずに利用することができるのです。
5-2.手形割引のデメリット
次にファクタリングと比べた場合の、手形割引のデメリットを解説していきます。
ファクタリングと比べた手形割引のデメリットは以下の2つです。

それぞれ解説していきますね。
5-2-1.貸し倒れのリスクがある
手形割引には、貸し倒れのリスクがあることがデメリットのひとつです。
手形割引は償還請求権があるので、手形振出人(手形を発行した人)が倒産などで支払いができなくなった場合、手形の支払い義務が依頼者にかかってきます。
そうなってしまうと、依頼人は約束手形の金額を支払わなければなりません。
このように、債権を回収できなくなる貸し倒れのリスクがあるのが手形割引のデメリットです。
5-2-2.信用情報に影響がある
次に、信用情報に影響があるというのも手形割引のデメリットです。
先ほども述べましたが、信用情報とは、金融機関への借り入れ状況やローンやクレジットの申し込みや取引事実を登録している個人情報のことです。
信用情報に傷がついてしまうと、将来ローンを組みたかったり、クレジットカードを作りたかったりする際に、審査が通りにくくなってしまいます。
手形割引は融資の一種なので、手形割引を利用したということが信用情報として記録されます。
そうなると、将来融資を受けたいという場合に、審査に悪影響が出る可能性もあるのが手形割引のデメリットと言えます。
6.【ケース別】ファクタリングと手形割引、どちらを選ぶべき?

上述したように、銀行融資と比べると、ファクタリングと手形割引のどちらを利用しても、早急に資金を調達できます。しかし、売掛債権と受取手形を両方保有している場合は、資金調達の方法としてどちらを選ぶべきか迷う人もいるでしょう。
ここでは、ファクタリングと手形割引のどちらを選ぶべきかについて、ケース別に解説します。
それぞれ解説していきます。
6-1.融資の審査に通らない
融資の審査が通らない人は、ファクタリングがおすすめです。
特に赤字決算だった企業や、創業間もない企業、個人事業主などは、融資の審査が通りにくいです。
そういった融資の審査が通らなかった方でも、ファクタリングの審査は通る場合もあります。
ファクタリングは、売掛先の信用力を重視するため、融資の審査に落ちてしまったという方にもおすすめです。
6-2.貸し倒れのリスクを避けたい
次に貸し倒れのリスクを避けたい人にも、ファクタリングはおすすめです。
ここが利用者にとっては一番大きなポイントと言えます。
3章でお話ししたように、ファクタリングには償還請求権がない(ノンリコース型)ものが多く、手形割引には償還請求権がある場合がほとんどです。
償還請求権がないことで、万が一売掛先の企業が倒産などで売掛金の支払いができなくなった場合は、ファクタリング会社が負担することになるのです。
売掛先の倒産など、貸し倒れのリスクを回避したい方は、ファクタリングがおすすめです。
ただし、貸し倒れることが分かっている売掛金や既に支払いが遅れているような売掛金を使ってファクタリングはできませんので注意しましょう。
6-3.手数料を抑えたい
手数料を抑えたい人は、ファクタリングより手形割引がおすすめです。
3章のファクタリングと手形割引の違いでもお話ししましたが、手形割引の手数料は日割り計算なので、ファクタリングより手数料が低い傾向があります。
例えば、支払期日が1か月後の手形500万円を割り引いた場合と、支払期日が1か月後の売掛債権500万円をファクタリングした場合の手数料を計算してみます。(手数料・年利10%計算)
・ファクタリングの手数料…50万円
・手形割引の手数料…約4万円(42,465円)
このように、ファクタリングと手形割引では、同じ10%でも大きな差が生まれるのです。
したがって、手数料をできるだけ低く抑えたいという方は、ファクタリングより手形割引がおすすめです。
6-4.売掛先に知られたくない
売掛先に知られたくない人も、ファクタリングより手形割引がおすすめです。
手形割引は、自分の持っている約束手形を金融機関に譲渡するので、手形振出人(売掛先)に知られることはありません。
一方で、ファクタリングの場合、3者間ファクタリングは利用者とファクタリング会社と売掛先の3者で契約する方法のため売掛先に知られてしまいます。また、2者間ファクタリングは債権譲渡登記をすれば知られてしまう可能性もあります。
2者間ファクタリングで債権譲渡登記をしなくても良いという会社もありますが、その場合、手数料が高くなる可能性が高いです。
売掛先に絶対に知られたくないという方は、基本的に手形割引の方がおすすめです。ただし、総合的に見てファクタリングの方が良いという方は、2者間ファクタリングで債権譲渡登記をしなくても良いという会社を探してみましょう。
6-5.信用情報への影響を避けたい
信用情報への影響を避けたい場合は、ファクタリングがおすすめです。信用情報には、信用情報機関に加盟している機関からの情報が記載されています。銀行が融資審査する際は、信用情報が重視されます。
上述したように、ファクタリング会社は信用機関に加盟していないため、ファクタリングで資金化しても信用情報への影響はありません。
一方、手形割引は融資にあたるため、信用情報に記録が残ってしまいます。融資の記録が目立つと、「これ以上の融資は返済されないリスクがある」と判断され、融資の審査に通らない恐れがあります。
将来、銀行などから融資を受けたいと考えている場合は、ファクタリングを選びましょう。
7.約束手形の廃止と今後の影響

手形割引に利用されてきた約束手形(受取手形)は、将来的に廃止される予定となっています。ここでは、約束手形の廃止に触れつつ、廃止後に企業が用いる決済手段についても解説します。
7-1.約束手形は2026年に廃止予定
約束手形は商取引において主要な決済手段として利用されてきました。しかし、約束手形(受取手形)は2026年に廃止される予定です。経済産業省は2022年2月10日に公表した「取引適正化に向けた5つの取組」の中で、約束手形の廃止を表明しています。
約束手形が廃止される理由には、資金を受け取れるまでの期間の長さや、受け取った側の資金繰りを圧迫するリスクが高いことなどが挙げられます。また、紙の書類である約束手形は、紛失のリスクや事務手続きの手間などのデメリットも懸念されています。加えて、銀行振込やクレジットカード決済など、決済手段の多様化も約束手形の廃止を後押ししました。
なお、廃止される約束手形は紙の書類のみであり、電子記録債権は引き続き運用されます。
7-2.約束手形廃止後の対応
約束手形(受取手形)廃止後は、手形割引が利用できなくなる可能性が高いと考えられます。企業は約束手形に変わる決済手段として、電子記録債権(でんさい)や銀行振込などへの移行を検討しなければなりません。
電子記録債権には「でんさい割引」という仕組みがありますが、手形割引と同様に貸し倒れのリスクがあるため注意しましょう。電子記録債権が未回収となった場合は、利用者が支払いの責任を負わなければなりません。
電子記録債権とファクタリングの違いについて詳しくは「電子記録債権(でんさい)とファクタリングの違い|でんさいファクタリングとは」の記事をご覧ください。
一方、ファクタリングなら銀行振込の場合でも利用できます。その上、利用者には償還請求権がないため、貸し倒れのリスクを回避することが可能です。手形割引に代わる資金調達方法として、ファクタリングは有効と言えるでしょう。
8.まとめ
ファクタリングと手形割引はどちらも資金調達の方法として利用できます。いずれの方法も売掛債権を流動化でき、早期に資産を得られます。それぞれ仕組みやメリット、デメリットが異なるため、自社に合う方法で資金調達をしましょう。
また、手形割引の対象となる約束手形は将来的に廃止される予定になっているため、そもそも手形割引を利用できなくなる恐れがあります。手形割引以外の資金調達の方法として、ファクタリングの利用を検討してみると良いでしょう。
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筑波大学大学院修士課程修了後、上場企業に勤務。不動産ファンドの運用・法務を担当した後、中小企業の事業再生や資金繰り支援を経験。その後弊社代表から直々の誘いを受け、株式会社ビートレーディングに入社。現在はマーケティング・法務・審査など会社の業務に幅広く携わる。
<保有資格>宅地建物取引士/貸金業務取扱主任者