ファクタリングの契約をする際には、債権譲渡契約書を作成して契約を交わします。
基本的に、債権譲渡契約書には印紙税がかかりますが、契約方法によっては印紙税が不要となるケースもあります。
本記事では、ファクタリング契約における印紙税について詳しく解説します。
印紙税がかかるケースや不要なケース、ファクタリング契約のコストなどについても解説するので、ファクタリング契約の手間やコストを抑えたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
ファクタリングの契約までの流れや必要書類については「ファクタリング」の基礎知識の記事を併せてご覧ください。
目次
1.ファクタリング契約にはどのようなコストがかかる?
ファクタリング契約にはコストがかかります。
ファクタリング契約をする際にはまず、どのようなコストが発生するのかをあらかじめ確認しておきましょう。
ここでは、ファクタリング契約で発生するコストを詳しく解説します。
1-1.ファクタリングの手数料
ファクタリング契約をする際には、ファクタリングの手数料が発生します。
手数料は譲渡する売掛債権の金額や売掛先の信用力などによって決められるものですが、ファクタリングの契約方法によっても手数料の相場は異なるようです。
ファクタリングには、利用者とファクタリング会社の2者間で契約する2者間ファクタリングと、利用者・売掛先企業・ファクタリング会社の3者間で契約する3者間ファクタリングがあります。
2者間・3者間ファクタリングそれぞれの手数料相場は以下のとおりです。
・2者間ファクタリング:8%~18%
・3者間ファクタリング:2%~9%
また、売掛先企業の信用力や支払期日までの期間などによっても手数料が変動するため、契約前に見積りを取って確認しましょう。
1-2.債権譲渡登記費用
債権譲渡登記費用は、必ず発生するわけではありません。
しかし、2者間ファクタリングを利用する際には、債権譲渡登記が必要になるケースがあります。
債権譲渡登記とは、債権譲渡が行われたという事実を登記によって示す手続きで、二重譲渡を防ぐために行われます。
二重譲渡とは、1つの売掛債権を2社のファクタリング会社に譲渡することです。
2者間ファクタリングでは売掛金を回収する際、利用者(利用会社)に売掛金が入金され、その後ファクタリング会社へ送金する流れになっています。
しかし、二重譲渡が行われると、譲渡先となった2社のうち1社は売掛金の回収ができません。
債権譲渡登記は債権が譲渡されたことを第三者に証明し、債権回収のリスクを軽減するために行われます。
2者間ファクタリングでは債権回収のリスクが高いため、債権譲渡登記を求められるケースが多いようです。
債権譲渡登記の手続きには、登録免許税や司法書士への報酬などが発生します。
債権譲渡の仕組みについて詳しくは、「ファクタリングにおける債権譲渡登記や債権譲渡通知の目的・必要性とは?」の記事をご覧ください。
1-3.印紙税
ファクタリング契約を結ぶ際には債権譲渡契約書を作成しますが、基本的に印紙の貼り付けが求められます。
なぜなら、債権譲渡契約書は課税文書として扱われるためです。
印紙代は文書の種類や取引金額によって異なりますが、債権譲渡契約書の場合には記載された契約金額が1万円未満の場合には非課税です。
また、1万円以上の場合は200円の印紙税がかかりますが、それほど大きな金額ではありません。
参考:No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで | 国税庁
1-4.その他
ファクタリング契約を締結する際には、上記だけではなく諸費用がかかるケースもあります。
例えば、事務手数料や対面で面談や契約を行う際の出張料、振込手数料などの諸費用がかかるケースもあるようです。
諸費用については、ファクタリング会社によって取り扱いが異なります。
そのため、契約前にどのような費用がかかるのかを確認しておくとよいでしょう。
「用途が分からない費用を請求された」「高額な出張費が上乗せされた」というケースもあるため、内訳をよく確認することが大切です。
2.そもそも印紙税とは
印紙税はファクタリング契約の際には基本的に必要となります。
そもそも印紙税とはどのようなものなのでしょうか。
ここでは、印紙税の概要や印紙税の対象となる文書などについて詳しく解説するので、参考にしてください。
2-1.印紙税とは文書に課税される税金
印紙税とは、経済取引などの際に作成される契約書や領収書といった文書に課せられる税金のことです。
印紙税法に基づいて課税されると定められており、20種類の文書が印紙税の対象として設定されています。
ただし、印紙税の対象となるものでも非課税文書に当たるケースもあります。
課税文書に該当するかどうかは文書に記載されている内容によって異なるため、条件を把握して課税文書か非課税文書かを確認しましょう。
詳しい条件については後述するため、「2-2.印紙税の対象となる文書」を参考にしてください。
ファクタリング契約においては、債権譲渡契約書が課税文書に該当します。
前述したように売掛債権の額が1万円未満であれば非課税ですが、ファクタリング契約において1万円未満の売掛債権を譲渡するケースはほとんどないため、基本的には印紙税がかかります。
2-2.印紙税の対象となる文書
前述したように、印紙税の対象となる文書は印紙税法で定められている課税文書に限定されます。
課税文書として扱われる条件は、以下の3つです。
1. 印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること。
2. 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
3. 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。
引用:No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断|国税庁
これらすべての条件に当てはまっている場合、課税文書として扱われます。
代表的な課税文書としては、企業間で締結される取引契約書、消費賃貸契約書、請負契約書、約束手形、領収書、債権譲渡契約書などが挙げられるでしょう。
2-3.印紙税の納付方法
印紙税は、収入印紙を課税対象となる文書に貼り付けて納付します。
収入印紙を購入し、契約書などに貼り付けるだけで納付できるため、複雑な手続きなどは必要ありません。
収入印紙とは、財務省が発行する証憑のことで、以下のような場所で購入可能です。
・郵便局
・コンビニエンスストア
・たばこ販売店
・法務局や役所など
収入印紙にも種類があり、全部で31種類となっています。郵便局や法務局であれば全種類の収入印紙が購入できますが、コンビニエンスストアやたばこ販売店では購入できる種類が限られています。
基本的に200円のみの取り扱いとなっているため、それ以外の収入印紙を購入したい場合には郵便局などを利用しましょう。
2-4.収入印紙の貼り方
収入印紙をどう貼り付ければよいのか悩む方もいるでしょう。
基本的に、収入印紙を貼り付ける際には切手と同じように貼り付けて構いません。
収入印紙を貼り付ける場所なども定められていないため、書類の余白部分に貼り付けましょう。
契約書に貼り付ける場合には、タイトルの左もしくは右に貼るケースが多いようです。
書類によっては収入印紙の貼り付け欄が設定されているケースもあります。
収入印紙を貼り付けたら、書類と収入印紙をまたぐように押印しましょう。
消印がない場合は印紙税を納付したことにはならないため、必ず消印を押します。
印鑑は会社名や担当者名がわかれば何でも構いませんが、一般的には契約書に押印した印鑑を使用する場合が多いでしょう。
3.印紙税の取り扱いに関する注意点
印紙税の納付は複雑な手続きではありませんが、正しく行う必要があります。
ここでは、印紙税の取り扱いに関する注意点などを解説するため、印紙税の扱いに関して不安がある場合は参考にしてください。
3-1.印紙税を納付しなかった場合
「課税文書に収入印紙を貼り忘れてしまった」「収入印紙を貼り付けたが消印を忘れた」など、正しく貼られていなかった場合には、収入印紙を納付しなかったとみなされるため注意が必要です。
印紙税を納めていなかった場合には、故意か過失かは関係なく、ペナルティとして過怠税が課せられてしまいます。
過怠税は、支払うはずだった印紙税の3倍と定められているため、200円分の収入印紙を貼り忘れていた場合には、600円の過怠税が発生するという仕組みです。
税務調査で納税漏れが発覚するケースもあるため、印紙税は正しく収めましょう。
納税漏れが発覚すると、企業としてのイメージや信用が低下するおそれもあるため注意が必要です。
3-2.印紙税を納付し過ぎた場合
印紙税を間違えて多く納付しすぎるケースもあるでしょう。
誤って印紙税を納付しすぎた場合には、文書の作成から5年以内であれば過誤納金として還付してもらうことが可能です。
例えば、「本来は200円の収入印紙だったのに桁を間違えて2,000円のものを貼り付けてしまった」「課税文書に該当しない書類に収入印紙を貼り付けてしまった」「収入印紙を貼り付けたが書類が必要なくなった」という場合には、還付を受けられるため利用しましょう。
還付を受けるためには、「印紙税過誤納確認申請書」を作成して、納税する地域の税務署長へ提出する必要があります。
申請書と収入印紙を貼り間違えた書類、印鑑などを持参して手続きをしましょう。
また、未使用の収入印紙は交換手数料を払えば他の収入印紙と交換することも可能です。
4.ファクタリング契約において収入印紙が必要なケース・不要なケース
ファクタリング契約では、基本的に収入印紙が必要です。
しかし、場合によっては収入印紙が不要なケースもあります。
ここでは、収入印紙が必要となるケースと不要なケースについて詳しく解説します。
4-1.債権譲渡契約書を書面で作成する場合
債権譲渡契約書を書面で作成する場合には、収入印紙が必要です。
債権譲渡契約書とは、売掛債権をファクタリング会社へ譲渡する際に作成する書類のことです。
譲渡する側であるファクタリング利用会社と、譲受側であるファクタリング会社との間で契約を締結し、債権譲渡契約書を作成します。
前述したとおり、債権譲渡契約書を書面で作成した場合には課税文書に該当します。
取引金額が1万円未満であれば非課税ですが、取引金額が1万円以上の場合には印紙税200円が課せられるという仕組みです。
一般的にファクタリング契約で1万円未満というケースはほとんどないため、印紙税は200円と覚えておいて構いません。
債権譲渡契約書には200円分の収入印紙を貼り付けて、印紙税を納付しましょう。
4-2.債権譲渡登記を行う場合
ファクタリング契約で債権譲渡登記を行う場合は、法務局へ登録免許税を納付する必要があります。
金額が3万円以下の場合には、収入印紙で納付することが一般的です。
登録免許税が3万円を超える場合は、原則として現金での納付が必要です。
現金で納付する場合は、登録免許税(国税)納付用の納付書を添えて金融機関の窓口で納付します。
オンライン申請の場合には、歳入金電子納付システムを利用して納付することも可能なため、自社が納付しやすい方法を選ぶとよいでしょう。
登録免許税は、1件につき7,500円(債権個数が5,000個以下の場合)となっています。
また、抹消登記をする際には1件につき1,000円の登録免許税がかかります。
4-3.電子契約で契約する場合
ファクタリング契約は、対面などで書面を作成する方法だけではなく、電子契約で締結する方法もあります。
ファクタリング契約を電子契約した場合には、印紙税はかかりません。
なぜなら、印紙税は課税文書を紙で作成した場合に課せられる税金だからです。
電子契約の場合には紙で書類を作成するわけではないため、印紙税の納付は不要となります。
電子契約とは、紙の契約書ではなく電子契約書を作成して、電子署名やタイムスタンプなどによって効力を持たせるものです。
電子契約ではなりすましや改ざんのリスクもあるため、電子署名やタイムスタンプを活用して、改ざんされていないことを証明します。
ファクタリング契約においては電子契約を行っているケースも多く、手間やコストを抑えて契約できるというメリットがあります。
5.ファクタリング契約をオンラインで締結する方法
ファクタリング契約をオンラインで行う場合には電子契約となります。
そのため、印紙税が必要ありません。コストをできるだけ抑えたい場合には、電子契約できるファクタリング会社を選ぶことも一つの方法です。
ここでは、ファクタリングをオンラインで利用する方法を解説します。
5-1.オンラインファクタリングの仕組み
オンラインファクタリングとは、対面でのやり取りが発生せずオンラインのみでファクタリング契約が完了するサービスのことです。
ファクタリング会社へ足を運んで審査や契約をする必要がないため、「急いで資金調達をしたい」「ファクタリング会社が近くにない」という場合にも向いています。
また、前述したようにオンラインの場合には電子契約によって契約を締結します。
そのため、印紙税の納付も不要となり、収入印紙を購入する手間やコストを抑えられるでしょう。
ただし、基本的には2者間ファクタリングのみの取り扱いとなります。
3者間ファクタリングの利用を検討している場合は利用できない可能性が高いため、オンライン契約が可能かどうかは申し込む際に確認しましょう。
5-2.オンラインファクタリングの手順
オンラインファクタリングの流れは以下のとおりです。
1. 申し込み
2. 仮審査・見積り
3. 必要書類の送付
4. 契約の締結
5. 入金確認
これらのプロセスは基本的にオンライン上で完結するため、時間や手間がかかりません。
また、ファクタリング契約を締結する際には、本人確認書類や請求書、入金明細書や決算書などの書類の提出が必要です。
しかし、オンラインファクタリングの場合、このような必要書類も基本的にWeb上で送信できるためスピーディーに契約が進みます。
ただし、オンラインファクタリングの利用方法はファクタリング会社によって異なります。
契約の方法については申し込みをする際に確認し、自社にとって利用しやすいファクタリング会社を選ぶようにしましょう。
オンラインファクタリングについて詳しくは、「オンラインファクタリングとは?ネット完結で即日資金調達したい場合におすすめ 」の記事をご覧ください。
6.まとめ
ファクタリング契約をする際には、債権譲渡契約書を作成します。
債権譲渡契約書を紙で作成した場合には、印紙税の課税対象となるため、契約書に所定の金額の収入印紙を貼り付けて納付しなければいけません。
ただし、電子契約の場合には印紙税の納付が不要です。
印紙税は紙で契約書などを作成した場合に課せられる税金のため、電子契約は対象外となるからです。
少しでもファクタリング契約のコストを減らしたいという場合は、電子契約を検討するとよいでしょう。
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また、来社や訪問による契約だけでなく、オンラインでの契約も可能です。
ファクタリング利用を検討している方は、ぜひご利用ください。
筑波大学大学院修士課程修了後、上場企業に勤務。不動産ファンドの運用・法務を担当した後、中小企業の事業再生や資金繰り支援を経験。その後弊社代表から直々の誘いを受け、株式会社ビートレーディングに入社。現在はマーケティング・法務・審査など会社の業務に幅広く携わる。
<保有資格>宅地建物取引士/貸金業務取扱主任者