ファクタリングは資金調達方法の一種として利用されている金融サービスです。
融資も資金調達方法としてよく利用されていますが、ファクタリングとは審査の基準や仕組みなどが異なります。
利用されるタイミングも融資とは異なるため、どのようなタイミングが良いのか検討が必要です。
この記事では、ファクタリングの利用に向いているタイミングについて具体的に解説します。
ファクタリングが向いていないタイミングもあるため、それについても確認しましょう。
ファクタリングの利用を検討している場合は、ぜひ参考にしてください。
ファクタリングの仕組みについて詳しくは、「【図解】ファクタリングとは？仕組みや種類・注意点を簡単に解説！」の記事をご覧ください。
目次
1.ファクタリングを利用するタイミング①：資金繰りを改善したい
ファクタリングは資金繰りの改善につながる資金調達方法です。
そのため、資金繰りを改善したいタイミングにはファクタリングの利用が向いています。
ここでは、ファクタリングで資金繰りを改善できるタイミングについて解説します。
1-1.赤字が続いている
赤字が続いていて資金繰りを改善したい場合、ファクタリングが向いています。
収入が支出を下回って赤字の状態が続いていると、資金繰りも厳しくなりがちです。
しかし、ファクタリングは売掛金をファクタリング会社に売却することで資金が必要なタイミングで資金化することができるため、資金繰りの改善を目指せます。
融資とは異なり借り入れが増加するわけではないため、資金繰りの改善に利用しやすいでしょう。
また、銀行からの融資を検討していても、赤字が続いていれば審査に通りにくくなります。
返済能力が低いと判断されるためです。
一方、ファクタリングで重視されるのは、売掛先の信用力です。
たとえ赤字が続いていても、信用度が高い売掛先の売掛金を選べばファクタリングによる資金調達ができます。
赤字が続いている場合でもファクタリングがおすすめな理由について詳しくは「ファクタリングは赤字決算でも利用できる！条件や手数料を徹底解説」の記事をご覧ください。
1-2.売掛金の回収が遅れている
売掛金の回収が遅れているときは、ファクタリングの利用を検討してみましょう。
売掛金を早期に回収できないと、売上があるにもかかわらず手元の資金が不足している状態になります。
その結果、資金繰りが苦しくなるケースも珍しくありません。
資金繰りが苦しくなると経営にも悪影響です。
売掛金の回収が遅れる原因は、支払いサイトが長いことや回収業務の滞りなどがあげられます。
ファクタリングは、売掛金の売却により支払期日より前に資金を調達できる方法です。
そのため、売掛金の支払いサイトが長かったり、回収業務が停滞していたりしていても、早期に資金を確保できます。
必要なタイミングに合わせて資金調達しやすく、資金繰りの改善に繋げられます。
ただし、支払期日を超過している（回収が遅れている）売掛金はファクタリングの対象にならないため注意が必要です。
1-3.売上が急激に増加した
売上が急激に増えたタイミングでも、ファクタリングによる資金調達が役立ちます。
売上が急激に増加した場合、仕入れ額や人件費なども増加するためです。
売掛金を回収していないうちに高額な費用の支払いが発生すると、一時的に資金繰りが悪化する恐れがあります。
状況によっては、その費用の支払いに売掛金の回収が間に合わない可能性もあるでしょう。
ファクタリングを利用すると支払期日より早く売掛金を資金化できるため、費用を支払うタイミングに合わせて資金を確保できます。
ファクタリングは、急に支出が増えたときにも利用しやすい資金調達の方法です。
ファクタリングで資金調達することで、ビジネスチャンスを逃すことなく継続した売上を目指せるでしょう。
2.ファクタリングを利用するタイミング②：融資を受けられない
何らかの事情により融資を受けられないときも、ファクタリングの利用が向いているタイミングです。
融資とファクタリングの審査は異なるため、融資を利用できない状況でもファクタリングなら利用できる可能性があります。
ここでは、融資を受けられず、ファクタリングが有力な選択肢となるタイミングについて解説します。
2-1.融資の審査に落ちた
融資の審査に落ちたときは、ファクタリングの利用を検討しましょう。
融資の審査で対象になるのは自社の業績や財務状況などです。
そのため、融資の審査を受ける際には、決算書の提出が求められます。
融資の審査では、損益計算書の営業利益がマイナスであったり、売上に対して貸借対照表の負債が多過ぎる場合など、審査に通りにくいのが実情でしょう。
しかし、ファクタリングで主に審査されるのは、売掛先の信用力です。
たとえ自社の業績や財務状況などに問題があっても、信用力のある売掛先を選べばファクタリングの審査に通る可能性があります。
融資の審査に落ちてもファクタリングなら利用できるケースがあるため、資金調達方法の1つとして活用しましょう。
2-2.すでに債務超過になっている
すでに債務超過に陥っているタイミングで資金調達したい場合も、ファクタリングの利用が向いています。
債務超過とは、債務が資産を上回っている（貸借対照表の純資産がマイナスになっている）状態です。
債務超過に陥っていると、保有する資産をすべて売却しても負債をカバーしきれません。
融資の審査では返済能力がないとみなされるため、金融機関からの借り入れができない可能性が高いでしょう。
しかし、債務超過であっても、売掛金があればファクタリングによる資金調達が可能です。
売掛先に問題がなければ、たとえ自社の経営状況に問題があっても資金調達できる可能性があります。
ファクタリングを利用しても負債は増えないため、資金調達によって状況の改善が見込めれば経営を立て直すこともできるでしょう。
3.ファクタリングを利用するタイミング③：事業資金を増やしたい
事業資金を増やしたいタイミングにおいても、ファクタリングが適しています。
ファクタリングは利用を希望してから実際の資金調達までのスピードも速いからです。
ここでは、事業資金を増やすためにファクタリングを利用すべきタイミングについて解説します。
3-1.売上が伸びている
売上が順調に伸びているタイミングでは、ファクタリングによる資金調達が向いています。
売上が伸びると仕入れや営業のためにより多くの資金が必要になるケースが多いためです。
売掛金を回収していないうちに多くの費用が発生すると、売上があるにもかかわらず資金不足に陥る可能性があります。
大型の案件が入ってきた際にチャンスを逃さないようにするには、着実な資金調達が必要です。
資金を確保する方法としては融資が一般的ではあるものの、融資の審査には時間がかかります。
ビジネスではスピード感が大切であり、融資の審査を待っていると間に合わない恐れもあります。
しかし、ファクタリングなら最短即日で資金調達できる場合もあり、必要に応じて迅速に資金を確保することが可能です。
3-2.新しい設備を導入したい
新しい設備を導入する際も、ファクタリングの利用はおすすめです。
事業の継続的な発展のためには、新しい設備の導入が必要になる場面があります。
例えば、生産量を増やすために最新の機械を導入したり、業務効率化を目指して便利なシステムを導入したりするために資金が必要になるケースもあるでしょう。
設備投資にはまとまった費用がかかるため、融資、補助金、助成金などを活用することが少なくありません。
ただし、いずれの方法も、申し込みや申請から実際の資金調達までにかかる時間が長い傾向です。
設備投資においては、つなぎ資金の調達方法としてファクタリングを利用する方法もあります。
まずはファクタリングで資金を確保することで、スムーズに設備の導入が可能になります。
4.ファクタリングを利用するタイミング④：創業期の資金調達に活用したい
創業期に必要な資金が不足している場合も、ファクタリングは資金調達の有力な手段となります。
創業期にファクタリングを利用するタイミングについて解説します。
4-1.手元資金が少なくなってきた
創業期で手元資金が少なくなってきたタイミングでも、ファクタリングを利用すればスムーズな資金調達を実現できる可能性があります。
創業期には売上が安定しにくいため、可能な限り十分な資金を用意しておくべきです。
また、資金管理の徹底によりキャッシュフローを正確に把握する必要があります。
しかし、事業を新しく始めるとなると、軌道に乗るまでに時間がかかるケースも少なくありません。
その結果、途中で手元資金が不足するパターンがあります。
ファクタリングは売掛先の信用力が重視されるため、創業期でも利用しやすい資金調達方法です。
たとえ資金不足の問題が発生しても、必要な資金を確保できる可能性があります。
4-2.追加融資が受けられない
創業期に追加融資が受けられない場合も、ファクタリングの利用が向いています。創業したばかりのうちは基本的に信用力が低いため、追加融資を希望しても審査に通らないケースが少なくありません。
特に1期目が赤字の場合、2期目で融資を受けたくても断られる可能性が高いでしょう。
しかし、早期に経営を軌道に乗せるためにも資金調達は必要です。
ファクタリングを活用すれば赤字であってもすぐに資金を確保できます。
事前にファクタリングを利用して事業を軌道に乗せれば、融資の審査に通る可能性を高められます。
融資でまとまった資金を確保する必要があるなら、ファクタリングをうまく活用してキャッシュフローを改善しておきましょう。
4-3.創業補助金を申請したが入金まで時間がかかる
創業補助金を申請しても入金まで時間がかかるため、早期に資金を確保したい場合はファクタリングがおすすめです。
創業補助金を利用すると、創業時に国や地方自治体から資金の一部を補助してもらえます。
創業補助金は返済不要であり、事業を軌道に乗せるために役立てることが可能です。
ただし、原則として後払いで、実際に受給できるまでに数か月以上かかります。
そのため、手元の資金が少なくすぐに資金を確保したいタイミングでは、不便な面もあります。
一方、ファクタリングなら、売掛金さえあればいつでもスピーディーな資金化が可能です。
創業補助金を申請したものの、より早く資金を確保したい場合はファクタリングもあわせて活用しましょう。
5.ファクタリングを利用するタイミング⑤：財務状況の悪化を防ぎたい
財務状況を悪化させたくないときも、ファクタリングの利用がおすすめです。
ここでは、財務状況の悪化を防ぎたいケースでファクタリングの利用が適しているタイミングを解説します。
5-1.負債を増やさずに資金調達したい
資金調達の必要があるものの、負債を増やしたくない場合は、ファクタリングが向いています。
ファクタリングは借り入れではなく、資産(売掛債権)の譲渡にあたります。
そのため、ファクタリングを利用して資金調達しても負債は増加せず、財務状況に響く心配がない資金調達方法です。
また、融資とは異なるため、ファクタリングを利用したことが信用情報機関へ通知されることもありません。
ファクタリングは、体外的な評価に影響を及ぼさずに資金調達を実現できます。
融資の審査にも影響しないため、将来的に融資でまとまった資金を借り入れたいと考えているケースでも、ファクタリングなら一時的な資金調達の方法として検討できるでしょう。
5-2.オフバランス化したい
オフバランス化したいタイミングにおいても、ファクタリングは有効です。
オフバランス化とは、事業運営に関わる資産や負債が貸借対照表に計上されないことを表しています。
例えば、ビジネスローンにより借り入れが増加すると貸借対照表上の負債が増え、信用力の低下につながります。
しかし、ファクタリングによって資金調達すれば、融資ではないため貸借対照表に対して影響しません。
よって、ファクタリングならオフバランス化を実現できます。
オフバランス化するとROA（純資産利益率）が向上するため、信用力の向上に繋がります。
融資を受けたい場合、事前にファクタリングを行ってオフバランス化しておくと審査でも有利になりやすいでしょう。
ファクタリングによるオフバランス化について詳しくは「ファクタリングによるオフバランス化の要件・仕組みを解説！メリット・注意点とは」の記事をご覧ください。
5-3.貸し倒れリスクを回避したい
貸し倒れリスクに備えたいときも、ファクタリングの利用が向いています。貸し倒れリスクとは、売掛金が回収できなくなるリスクです。
例えば、売掛先が倒産して売掛金が貸し倒れになった場合、自社の業績も一気に悪化するリスクがあります。
しかし、事前にファクタリングを利用して早期に売掛金を回収していれば、売掛金の支払期日より前に売掛先が倒産しても利用者（利用会社）が負担する必要はありません。
基本的にファクタリングには償還請求権がないため、利用後に売掛金が回収不能になっても利用者に支払いの義務は生じないことになっています。
償還請求権とは、金銭の返還を求める権利です。
ファクタリングを利用すれば貸し倒れリスクに備えられ、財務状況の悪化も防止できます。
6.ファクタリングを利用するタイミング⑥：海外企業と取引を始めた
海外企業と取引を始めたタイミングで、国際ファクタリングを利用するとさまざまなメリットを期待できます。
ここでは、国際ファクタリングを利用するタイミングについて解説します。
6-1.確実に代金を回収したい
海外企業との取引で確実に代金を回収したいと考えている場合は、ファクタリングの利用を検討しましょう。
国際ファクタリングとは、海外企業に対して商品を輸出した際に発生する売掛金についてファクタリング会社に保証してもらうサービスです。
国際ファクタリングを利用すると輸出代金が保証され、代金を確実に回収できます。
国際ファクタリングを利用すれば代金の回収を滞りなくスムーズに行えるため、海外企業と取引を始めるタイミングで利用を検討するのがおすすめです。
海外企業との取引では、国内企業の取引とは勝手が異なる部分も多いため、万が一のリスクに備えてファクタリングを利用しておくと安心して取引できます。
6-2.与信管理を任せたい
国際取引において与信管理を他社に依頼したいと考えている場合、国際ファクタリングも選択肢の1つになります。
国際ファクタリングを利用する際は、現地のファクタリング会社が売掛先の信用力を調査するためです。
ファクタリング会社の調査に通った企業は一定の水準を満たしていると判断できるため、与信管理に不安がある場合でも安心して取引ができます。
海外企業の場合、専門知識がないと信用情報を調査することが難しいケースもあります。
しかし、国際ファクタリングを利用すれば、海外企業の信用情報を自社で調査する必要がありません。
手間をかけずに信用力をチェックできるため、与信管理を任せたいケースでも国際ファクタリングの利用がおすすめです。
7.ファクタリングの利用が向いていないタイミングとは
タイミングによっては、ファクタリングの利用を避けたほうが良い場合もあります。
具体的には、どのようなタイミングが該当するのでしょうか。以下で詳しく解説します。
7-1.売掛金の入金日が近い
売掛金の入金日が間近に迫っているタイミングでは、ファクタリングの利用が向いていないケースもあります。
ファクタリングは入金日より前に売掛金を回収できる方法であり、入金日が近いほどメリットが少なくなります。
ファクタリングの利用には手数料がかかるため、その分だけ実際に調達できる金額が少なくなる点にも注意が必要です。
資金調達が必要な時期と売掛金の入金日をよく確認し、本当にファクタリングを利用すべきかよく検討しましょう。
例えば、仕入れ代金の支払日より売掛金の入金日のほうが早ければ、ファクタリングを利用するよりも売掛金が入金されるのを待ったほうが良いでしょう。
売掛金の入金日は交渉により短くしてもらえる可能性もあるため、売掛先に相談するのも1つの手です。
7-2.多額の資金調達をしたい
多額の資金を確保したい場合も、ファクタリングは向いていない可能性があります。ファクタリングで調達できるのは、あくまでも売掛金の金額までとなります。売掛金以上の資金は調達できない点に注意が必要です。
保有している売掛金の金額が資金調達したい金額に満たない場合、ファクタリングだけでは資金を確保しきれません。
そのため、多額の資金調達が必要なケースでは、融資の利用を検討したほうが良いでしょう。
ただし、必要な資金の一部を調達する方法として利用するなら、ファクタリングの利用も有効です。
急いで資金調達したい場合は、融資を受けるまでのつなぎ資金として活用する方法もあります。
ファクタリングの特徴を理解した上で有効活用しましょう。
ファクタリングの限度額について詳しくは「ファクタリングの限度額はいくら？注意点やおすすめの相談先を解説」の記事をご覧ください。
8.まとめ
今回ご紹介したファクタリングを利用するタイミングをまとめると、以下のとおりです。
・資金繰りを改善したい
・融資を受けられない
・事業資金を増やしたい
・創業期の資金調達に活用したい
・財務状況の悪化を防ぎたい
・海外企業と取引を始めた
ファクタリングは売掛金をいつでも資金化できる方法なので、資金調達方法の1つとして利用を検討しましょう。
さまざまなタイミングで利用できるため、融資以外の資金調達の方法として活用できます。
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筑波大学大学院修士課程修了後、上場企業に勤務。不動産ファンドの運用・法務を担当した後、中小企業の事業再生や資金繰り支援を経験。その後弊社代表から直々の誘いを受け、株式会社ビートレーディングに入社。現在はマーケティング・法務・審査など会社の業務に幅広く携わる。
<保有資格>宅地建物取引士/貸金業務取扱主任者