ファクタリングは一括決済方式で行う決済の一種です。
一括決済方式の決済方法には、ファクタリングの他にも債権譲渡担保方式や併存的債務引受方式、一括信託方式があります。
これとは別に債務者側が利用する債務引受型決済サービスという方法もあるため、混同しないように違いを理解しておくことが大切です。
本記事では、一括決済方式の種類や、他の決済方式とファクタリングの違いについて解説します。
それぞれの違いを理解した上で、自社に最適な決済方法を選択するための参考にしてください。
目次
1.一括決済方式とは
一括決済方式とは、代金を支払う側(債務者)と受け取る側(債権者)が、金融機関などの第三者を通して決済を行う方法です。
従来は約束手形を発行することで決済を行っていましたが、現在は手形に代わる方法として一括決済方式を採用するケースが増えています。
掛取引においては売掛金が発生してから決済が行われるまで、通常1~2か月程度の時間がかかり、支払期日までに債務者から債権者へ直接支払いが行われます。
一括決済方式の場合は、債務者が金融機関と代金支払いの契約を交わし、支払期日に金融機関へ代金を支払う決済方法です。
一括決済方式を利用した場合、債権者は売掛先である債務者ではなく、金融機関から支払いを受けます。
一括決済方式は主に4種類あり、ファクタリングも一括決済方式の一種です。
ファクタリングの場合は、債権者がファクタリング会社と契約をして売掛金を資金化(現金化)します。
一括決済方式の詳細については次項で解説します。
2.一括決済方式の種類
前述のとおり、一括決済方式は主に以下の4種類があります。
・債権譲渡担保方式
・併存的債権引受方式
・一括信託方式
・ファクタリング方式
それぞれ仕組みが異なるので、違いをよく理解しておくことが大切です。
ここでは、4つの一括決済方式について種類ごとに解説します。
2-1.債権譲渡担保方式
債権譲渡担保方式は、債権者である納入企業が売掛先の未払いに備えて、売掛金(売掛債権)を担保にして金融機関から融資を受けることです。
売掛金を担保にするため、金融機関から受けた融資が貸し倒れになった場合、金融機関は売掛金を取得して資金を回収することができます。
債権譲渡担保方式で融資を受けられる金額の上限は、売掛金の金額と同等です。
ファクタリングとは違い、融資の扱いとなるため、原則として利息をつけて金融機関への返済が行われます。
売掛金が返済に充てられるのは貸し倒れが起きたときのみです。
問題なく返済が完了した場合は、同じ売掛金を担保にして再度融資を受けることもできます。
2-2.併存的債権引受方式
併存的債権引受方式とは、支払企業が納入企業(仕入先)に対して追う買掛金(買掛債務)を、金融機関が売掛先に代わって支払う方法です。
通常の掛取引では、売掛金は支払期日まで資金化(現金化)することができません。
併存的債権引受方式を利用することで、手形割引のように支払期日よりも前に資金化できるのが特徴です。
併存的債務引受方式による決済サービスとして、債務引受型決済サービスがあります。
債務引受型決済サービスとは、債務者である売掛先が買掛金を決済するために利用する方法です。
債務引受型一括決済サービスを利用する場合、事前に銀行と債権者、売掛先の三者で契約が必要です。
債務引受型一括決済サービスでは、債権者側は売掛金の代金を銀行から受け取ります。
自社の都合に合わせた受け取り方法で受領できることがメリットです。
また、併存的債権引受方式では、売掛金の全額ではなく一部を資金化することも可能です。
ファクタリングとよく似ていますが、併存的債権引受方式は償還請求権ありの取引となるため、売掛金が回収できなければ債権者が金融機関へ返済する義務を負います。
一方、ファクタリングでは償還請求権なしの取引となる部分が大きな違いです。
違いについて詳しくは後述します。
2-3.一括信託方式
一括信託方式は、併存的債務引受方式と似た方法です。
大きく違うのは、併存的債務引受方式では金融機関が売掛先の代わりに売掛金を支払うのに対し、一括信託方式では「受益権」を譲渡するという点でしょう。
一括信託方式では、まず債務者である支払企業が納入企業に売掛金を信託譲渡し、納入企業は信託受益権を取得します。
納入企業側で資金が必要になった際、その受益権を信託銀行へ譲渡し、信託銀行が受益権譲渡代金を納入企業へ支払うことで、納入企業が資金調達をする流れです。
一方で信託銀行は受益権を金融機関へ譲渡し、信託銀行が支払期日に支払企業から売掛金を回収したら金融機関に引き渡すことになります。
2-4.ファクタリング方式
ファクタリング方式は、債権者である納入企業がファクタリング会社へ売掛金(売掛債権)を譲渡し、資金調達する方法です。
ファクタリングには、利用者とファクタリング会社の2者間で契約する2者間ファクタリングと、売掛先も含めて3者間で契約する3者間ファクタリングがあります。
ファクタリングの申し込みがあった際、ファクタリング会社は売掛金の金額から手数料を差し引いた金額を債権者である利用者(利用会社)へ送金します。
その後、2者間ファクタリングの場合は支払期日に、売掛先から代金を回収した利用者(利用会社)が、ファクタリング会社へと代金を送金します。
一方、3者間ファクタリングは売掛先からファクタリング会社へ、直接代金を送金する形式です。
一括決済方式の一種「ファクタリング」について詳しく知りたい方はこちらの記事をご確認ください。
3.ファクタリングとその他の決済サービスの違い
決済サービスには上記のように、さまざまな方法があります。
しかし、ファクタリングとの違いがわからないという方もいるでしょう。
ここでは、それぞれのサービスと、ファクタリングとの違いは何かを詳しく解説します。
3-1.債権譲渡担保方式との違い
債権譲渡担保方式は、債権者である利用者(利用会社)と金融機関、債務者である売掛先を全て含めた、3者間での契約です。
ファクタリングでも3者間の契約はできますが、債権者である利用者(利用会社)とファクタリング会社の2者間での契約も可能です。
どちらの方法で資金調達をするかは、ファクタリングでは選べますが、債権譲渡担保方式では選べません。
また、先述のとおり、債権譲渡担保方式は債権を担保にした融資です。
万一、売掛金が貸し倒れになった場合、利用者(利用会社)は金融機関に対して支払いの義務を負います。
これに対してファクタリングの場合は、融資ではなく債権の譲渡であるため、原則として貸し倒れになった場合でも、利用者に支払い義務はありません。
3-2.併存的債権引受方式との違い
併存的債権引受方式による債務引受型一括決済サービスを利用する際は、債権者、債務者、金融機関の3者間で契約します。
ファクタリングの場合は、前出のとおり債権者である利用者(利用会社)とファクタリング会社の2者間でも契約が可能です。
また、併存的債権引受方式は、債務者の買掛債務(買掛金)を金融機関が並存的に引き受けることになるため、サービスを導入するかは債務者の判断と与信によります。
一方でファクタリングも債務者の与信は重要ですが、債権者が利用するか決定できる点が異なります。
償還請求権について詳しくは「償還請求権とは?ファクタリングにおける重要性や注意点をわかりやすく解説」の記事をご覧ください。
3-3一括信託方式との違い
ファクタリングが売掛金を譲渡して資金化(現金化)する方法であるのに対して、一括信託方式は、売掛金を譲渡するのではなく、信託受益権が譲渡対象となっています。
債権者、債務者、金融機関の3者間で契約するのは、併存的債務引受方式と同様です。
ファクタリングの場合は債権者である利用者(利用会社)とファクタリング会社の2者間でも契約可能で、その他の方法との大きな違いといえます。
4.他の決済方法と比較した場合のファクタリングのメリット
さまざまな決済方式を見てきましたが、ファクタリングには他の決済方法にはないメリットがあります。
ここでは、ファクタリングならではのメリットを解説します。
4-1.資金調達に利用できる
前述のとおり、ファクタリングは債権者である利用者(利用会社)が資金調達をする目的で利用することが多くあります。
資金が必要になったタイミングで売掛金をファクタリング会社へ譲渡すれば、即日資金調達することが可能なためです。
資金調達の方法としては、融資がスタンダードだと考える方も多いかもしれませんが、ファクタリングでは融資よりも審査や手続きがスムーズなので、早期に資金調達したい場合に向いています。
また、融資では審査に通らないケースでも、ファクタリングでは審査基準が融資とは違うため、資金調達できる可能性があります。
ファクタリング会社によってはオンラインで手続きできるところもあり、対面不要で全国から利用できることもメリットです。
オンラインファクタリングについて詳しくは「オンラインファクタリングとは?ネット完結で即日資金調達したい場合におすすめ」の記事をご覧ください。
4-2.貸し倒れリスクを軽減できる
これまで解説してきたとおり、債権譲渡担保方式など融資にあたる決済方法の場合、償還請求権ありの契約になります。
償還請求権とは、売掛先に倒産などの事情が発生し、売掛金が支払えなくなったときに、融資してもらった分を利用者(利用会社)が支払う義務を負うものです。
つまり、万が一の場合、利用者(利用会社)も貸し倒れリスクを負うことになります。
従来、決済方法としてよく利用されていた手形割引も、償還請求権のある契約です。
一方、ファクタリングは原則として償還請求権のない契約になるため、売掛先が倒産して売掛金が回収できなくなっても、利用者(利用会社)は支払い義務を負うことがありません。
資金調達により資金繰りを改善できる上、貸し倒れリスクを負わなくて済むため、確実に売掛金を回収できるメリットがあります。
4-3.信用情報に影響しない
債権譲渡担保方式など融資にあたる決済方法は、利用者(利用会社)の信用情報に関わります。
一方、ファクタリングは融資ではないため、ファクタリングを利用しても信用情報には影響が出ません。
信用情報とは、融資契約などの取引情報や支払い状況に関する情報のことで、信用情報機関によって管理されています。
融資を受けると信用情報として記録されるため、融資額はもちろん、返済の状況などがすべて記録に残されます。
返済に遅れが生じた場合や、返済不能になった場合は、新たな融資を受けられなくなる可能性があるでしょう。
近い将来、金融機関へ融資を申し込むことを予定している場合、新たな借り入れをすると審査に通りにくくなる可能性があります。
しかし、ファクタリングであれば信用情報に関する心配がなく利用することが可能です。
4-4.利用者(利用会社)の経営状況に関係なく利用できる
ファクタリングを利用できるか、利用できないかは、利用者(利用会社)の経営状況とはあまり関係ありません。
債権譲渡担保方式などで資金化(現金化)する場合は融資にあたるため、納入企業(債権者)の経営状況によっては審査に通らず、融資を利用できない可能性があるでしょう。
なお、ファクタリングの利用者とは、融資で考えた場合は納入企業(債権者)に該当します。
ファクタリングを利用する際にも審査を受けなければなりません。
しかし、ファクタリングでは、貸し倒れを防ぐために売掛先の信用力が重視される傾向があるため、ファクタリング利用者(利用会社)の経営状況が悪化していても利用できる可能性があります。
4-5.2者間で契約できる
債権譲渡担保方式や併存的債権引受方式などの決済方法は、債権者と債務者、金融機関の3者間で契約を締結する必要があります。
また、サービスの導入を決定するのは債務者である場合が多いため、資金調達したい側の意向で導入が決められないのが特徴です。
一方、ファクタリングは利用者(債権者)とファクタリング会社の2者で契約を締結することも可能です。
2者間ファクタリングなら利用するか否かを利用者が決定できるため、スムーズに資金化できるメリットがあります。
また、資金調達の利用を売掛先に知られたくない場合でも、2者間ファクタリングであればその心配がないため利用しやすいでしょう。
その他の決済方法においては、売掛先を交えた契約となるため、知られずに融資を利用することはできません。
5.まとめ
ファクタリングは一括決済方式の一種ですが、他の決済方法と比較して資金調達に利用しやすいと感じる方が多いでしょう。
償還請求権のない契約になるため、貸し倒れリスクが軽減できることもファクタリングのメリットといえます。
また、他の方法と違い、債権者である利用者(利用会社)とファクタリング会社の2者での契約も可能です。
このように、ファクタリングには他の方法にないメリットがいくつもあります。
複数の決済方法と比較した上で、自社に合うかどうかを判断してみましょう。
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累計取引社数5.8万社(2024年3月時点)と実績も豊富で、多くの企業様にご信頼をいただいています。
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筑波大学大学院修士課程修了後、上場企業に勤務。不動産ファンドの運用・法務を担当した後、中小企業の事業再生や資金繰り支援を経験。その後弊社代表から直々の誘いを受け、株式会社ビートレーディングに入社。現在はマーケティング・法務・審査など会社の業務に幅広く携わる。
<保有資格>宅地建物取引士/貸金業務取扱主任者