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償還請求権とは?意味や使い方、注意点を初心者にわかりやすく解説

償還請求権とは?意味や使い方、注意点を初心者にわかりやすく解説

資金繰りの役立ち情報
償還請求権とは?意味や使い方、注意点を初心者にわかりやすく解説

「償還請求権ってなに?」
「ファクタリング利用時に償還請求権の有無が重要ってどういうこと?」

このように償還請求権について詳しく知りたいと思っている人は多いのではないでしょうか。

結論からお伝えすると、


償還請求権とは、債務の責任範囲を限定せず、金銭債権などを全額請求できる権利のことを言います。

下記のとおり、ファクタリングにおいて償還請求権がある場合、債務者によって債権が支払われなかったとしても債権を譲渡した人に償還請求することが可能となります。

つまり、償還請求権がある場合、「金銭債権が支払われなかった場合に支払いを要求される可能性がある」というリスクがあります。

一方、償還請求権がない場合はこうしたリスクがありません。

このように償還請求権が関わる取引の場合、償還請求権が「ある」か「ない」かで後々のリスクが変わって来るのでしっかり理解しておくべきです。

償還請求権が使われる取引形式として、手形取引、ファクタリングがあります。

手形を裏書譲渡した場合、償還請求権がある取引となるため、債務者(手形の振出人)が倒産などで支払いを拒絶した場合でも裏書人(手形の譲渡人)に請求をすることができます。

一方、ファクタリングの場合は償還請求権がないことが基本です。
売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、売掛先が倒産し債権回収ができなかった場合、ファクタリング会社は利用者(売掛債権の譲渡人)に償還請求をすることができません。
その場合、ファクタリング会社が損害を受けることとなります。

しかし、ファクタリングを利用する時に注意するべきことは、契約する業者により償還請求権ありの契約を求めてくる場合があることです。
その場合は、悪質業者である可能性が高いため十分に注意する必要があります。

この記事では、ファクタリング取引で重要な償還請求権とは何かを分かりやすく解説し、ファクタリング利用時の償還請求権について注意するべきポイントについて詳しく解説します。

【この記事のポイント】
・償還請求権とは何かが分かる
・ファクタリング契約時になぜ償還請求権が重要なのかが分かる
・ファクタリング利用時に注意するべきポイントが分かる

この記事を最後まで読み進めて頂ければ、償還請求権とは何かが分かり、ファクタリング利用時に注意するべきポイントを抑えることができます。

ファクタリングについて詳しくは「ファクタリングとは?仕組みや他の資金調達方法との違いなどを解説!」の記事をご覧ください。

ビートレーディングへのお問い合わせはこちら

1.償還請求権とは?

償還請求権とは?

冒頭でお伝えしたとおり、償還請求権とは債務の責任範囲を限定せず、金銭債権などを全額請求できる権利のことを言います。遡求権(そきゅうけん)とも言います。

もう少し分かりやすくお伝えすると、例えばA社がB社に商品を販売し、A社がB社に売掛債権を持っているとします。

A社はその売掛債権をC社に譲渡したが、期日になってもB社からC社に支払いが行われません。

その場合、C社はA社に支払いを請求できるのか?C社はB社にしか請求できないのか?を判断するのは償還請求権の有無によって変わってきます。

償還請求権がある場合は、A社への請求が可能となりますが、償還請求がない場合C社はB社にしか請求できません。

・償還請求権がある場合 → A社はC社から支払請求される可能性がある(A社にリスクあり)
・償還請求権がない場合 → C社はB社にしか支払請求できず、A社はC社から支払請求されない(A社にリスクなし)
償還請求権とは
償還請求権「あり」と「なし」の違い

このようにファクタリング取引を行う場合、償還請求がある契約なのか、ない契約なのかにより後々のリスクが変わってきます。

そのため、ファクタリング取引を行う際は、償還請求権の有無がとても重要となるのです。

2.償還請求権が関わる2つの取引

償還請求権が関わる2つの取引

償還請求権が関わる取引は「手形取引」と「ファクタリング」の2つです。

これらの取引をする場合、償還請求権が「ある」か「ない」かが重要となります。

手形取引は償還請求権があり、ファクタリングは償還請求権がないことが基本となります。

取引償還請求権の有無
手形取引あり
ファクタリングなし

それぞれ詳しく解説していきます。

2-1.手形取引は償還請求権あり

手形取引で償還請求権が関わってくる場面は、手形が不渡りとなった場合です。

▼不渡手形とは
手形の満期日が到来し所持人が手形代金の支払を請求したにも関わらず、支払人(支払場所に指定された銀行)に支払いを拒絶された手形をいう。

手形取引のうち裏書手形の場合、手形の所持人は裏書人に対してその支払いを請求する償還請求権(遡求権)があります。

手形法第49条の定めにより、請求できる金額には手形代金の他に満期日から実際の支払い日までの法定利息や請求に伴い発生した支出も含まれます。

そのため手形所持人は振出人や裏書人に対して、手形代金に法的利息や償還請求に要した費用を加えたものを請求することができます。

2-2.ファクタリングは償還請求権なし

ファクタリングでは、償還請求権なしの取引が基本となります。

そのため、ファクタリング会社へ売却した売掛債権が回収できなかったとしても、ファクタリング会社から支払いを求められることはありません。

償還請求権の仕組み

その理由は、ファクタリングは貸付ではなく、債権の売買(譲渡)取引だからです。

償還請求権があると債権の売買ではなく、売掛金を担保とした貸付(売掛金担保融資)であるとみなされます。

そのため、ファクタリングは償還請求権なしの取引が基本となるのです。

一般に「ファクタリング」とは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。
参考:金融庁 ファクタリングに関する注意喚起

しかし、償還請求権がある契約を求めてくるファクタリング会社もありますので慎重に判断をする必要があります。

ファクタリングで償還請求権ありの場合に注意するべきことは次で詳しく解説します。

ファクタリングと手形の違いについて詳しくはこちら「ファクタリングと手形割引の違いとは?それぞれのメリット・デメリット

3.ファクタリングで償還請求権ありの場合は要注意!

ファクタリングで償還請求権ありの場合は要注意!

ここまで償還請求権について解説してきましたが、償還請求権に関わる取引で特に注意をしなければいけないのはファクタリング利用時です。

前項でお伝えしたとおり、ファクタリングは償還請求権なしの契約が基本となります。

しかし、ファクタリング会社により償還請求権ありの契約を求めてくる場合もあります。

その場合は、要注意です。その理由としては以下の二つです。

・融資の可能性がある
・悪質業者の可能性がある

なぜファクタリング利用時に償還請求権ありの契約に注意が必要なのか、ひとつずつ詳しく解説していきます。

3-1.注意①ファクタリングではなく融資の可能性がある

まず、ファクタリングで償還請求権がある場合には「融資」の可能性が高くなります。

そもそもファクタリングは企業(債権者)が保有している売掛債権(売掛金)と呼ばれる権利をファクタリング会社へ売却し資金化することで、融資とは全く違うサービスです。

融資ファクタリング
金融機関から一定期間お金を借り入れるファクタリング会社に売掛債権(売掛金)を
売却して資金化する

ファクタリングを利用して急ぎで資金調達をしたいと思っていても、融資となり資金調達に時間がかかってしまう可能性があります。

ファクタリング利用をする際は「償還請求権なし」かどうか必ず確認をしましょう。

ファクタリングと融資の違いについて詳しく知りたいという方は「ファクタリングは融資ではない!ファクタリングと融資の違いを解説」を併せてご覧ください。

貸金業者で償還請求権があるサービスは、ファクタリングではなくABL(動産・債権担保融資)の可能性があります。ABLは企業が保有する在庫や機械設備・売掛債権等の資産を担保とする融資制度です。

そのため、ファクタリングによる売掛債権の売買取引とは違い、融資となりますので注意しましょう。

ABLについては詳しく「ABLとファクタリングの違いとは?メリット・デメリットや選び方を紹介」の記事で解説しています。併せてご覧ください。

3-2.注意②「償還請求権あり」+「貸金業登録なし」だと悪質業者の可能性がある

ファクタリングで償還請求権がある場合には「悪質業者」の可能性があるので注意しましょう。

貸金業の登録がない会社が償還請求権ありのファクタリング契約を求めてきた場合、違法となります。

そのため、悪質なファクタリング会社である可能性が高くなります。

しかし、償還請求権があるファクタリング=「違法」というわけではありません。

前項でお伝えしたとおり、償還請求権がある取引は「融資」の可能性が高くなります。

融資が可能な業者は、貸金業法に基づき登録をされた貸金業者のみ可能となります。
すなわち、償還請求権があるファクタリングを行う場合、貸金業の登録がある会社であれば取引できるのです。

そのため、金融機関や貸金業者が償還請求権のあるファクタリングサービスを提供する事は可能となり、違法ではないのです。

一方、貸金業登録のない会社が償還請求権のある契約を求めてきた場合は違法となりますので注意しましょう。

金融庁の注意喚起にも下記のとおり案内があります。

譲渡した債権の回収(集金)がファクタリング業者から売主に委託されており、売主が集金できなかった場合に、
・売主が債権を買い戻すこととされている
・売主自身の資金によりファクタリング業者に支払をしなければならないこととされている
などといったようなものについては、貸金業に該当するおそれがあります。

参考:金融庁 ファクタリングに関する注意喚起

このように償還請求権がある取引の場合は悪徳業者の可能性が高くなりますので十分に注意をしましょう。

ファクタリングの悪徳業者の見分け方については「ファクタリング会社に悪徳業者はいる?手口の事例や見分け方を解説」で詳しく解説しています。

優良なファクタリング会社は下記の記事で解説しています。併せてご覧ください。
「【2023最新】ファクタリング会社10選|目的別におすすめを紹介」

4.償還請求権がないファクタリング契約を有利に進めるポイント

ファクタリングの場合、償還請求権がない取引が基本とお伝えしてきました。

そのため、ファクタリング契約で売買した売掛債権の売掛金回収ができなかった場合、ファクタリング会社の損害となってしまいます。

そうならないために、ファクタリング会社としても売掛金が問題なく回収できる売掛債権を売買するよう、慎重に審査を行います。

その結果、審査が通らないことや、手数料が割高となってしまうケースもあります。

そうなってしまえば、急いで資金調達をしたくてファクタリングを申し込んでも、資金調達ができなかったり、資金調達額が少なくなってしまえば本末転倒です。

そうならないために、償還請求権がないファクタリング契約を有利に進めるポイントは「信用力の高い売掛債権の売買をする」ことです。

信用力の高い売掛債権の売買をする

ファクタリングは売掛債権の売買となるため、売買する売掛債権が「確実に売掛金を回収できそうか?」で判断をします。

信用力が高く問題なく回収できる債権であれば、審査も通過し、安い手数料で利用することが可能ですが、信用力が低い場合は審査を通過しても回収リスクを考え手数料が高くなる可能性があります。

そのため、償還請求権がないファクタリング契約を有利に進めるためには、信用力の高い売掛債権の売買をすることがポイントとなるのです。

ファクタリング会社により異なりますが、一般的に以下の方法で売掛債権(売掛先)の信用力の調査を行います。

売掛債権(売掛先)の信用力の調査方法
・信用情報機関への掲載情報
「日本信用情報機構(JICC)」などの信用情報機関を利用し、過去の債務情報などを確認し売掛債権の回収のリスクがないかをチェックし、審査を通すかどうか、手数料率をどうするかの判断基準としていることが多い。

・信用調査会社の掲載情報
帝国データバンクや東京商工リサーチなどに代表される信用調査会社で創業年・資本金・事業内容などの企業の基本情報を集め、損益などから導かれた信用評価を確認することも可能なため、信用力の判断に利用することが多い。

・会社規模・業種
信用情報機関や信用会社では多くの企業の情報が集められていますが、全ての企業の情報を集めることはできません。情報が少ない企業の場合は会社規模や業種も信用力の判断基準になります。ファクタリング会社によりますが、企業に比べて情報が少ない個人事業主に対する売掛債権は買取対象にならないこともあります。

このような方法で売掛先の信用力を調査し、確実に売掛債権の回収ができそうか?の判断をし、審査の可否や手数料率を決めていきます。

ファクタリング契約を有利に進める為には、上記の調査方法を参考に信用力の高い売掛債権を売買するようにしましょう。

ファクタリングの手数料について詳しく知りたい場合は「ァクタリング手数料相場は?高くなる理由と手数料の決まり方」で解説しています。併せてご覧ください。

まとめ

いかがでしたでしょうか?本記事では償還請求権について詳しく解説をしてきました。

償還請求権とは債務の責任範囲を限定せず、金銭債権などを全額請求できる権利のことを言います。

償還請求権が関わる取引としては、下記の2つです。

取引償還請求権の有無
手形取引あり
ファクタリングなし

手形取引の場合は償還請求権がある取引となるため、債務者(手形の振出人)が倒産などで支払を拒絶した場合でも裏書人(手形の譲渡人)に請求をすることができます。

一方、ファクタリングの場合は償還請求権がないことが基本です。

そのため、売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、売掛先が倒産し債権回収ができなかった場合はファクタリング会社は償還請求することができません。

その場合、ファクタリング会社が損害を受けることとなります。

しかし、ファクタリング利用時に償還請求権ありの契約を求めて来る会社もあるため注意が必要です。

その理由としては下記の2つです。

・融資の可能性がある
・悪質業者の可能性がある

ファクタリングは売掛債権の売買であり、融資ではありません。そのため、償還請求権ありの契約は融資の可能性が高くなります。

また、融資は貸金業法に基づき登録された貸金業者しか行うことはできません。

そのため、貸金業者ではない会社で償還請求権ありの契約を求められた場合は違法であり悪質業者の可能性があるので注意しましょう。

ファクタリングを利用する場合は、信用力の高い売掛債権を売買することがポイントです。

信用力が高い売掛債権の売買であれば、審査もとおりやすく、手数料を安く抑えることもできます。

この記事が償還請求権について詳しく知りたい人にとって有益な情報となる事を願っています。

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【監修】株式会社ビートレーディング編集部編集長 

筑波大学大学院修士課程修了後、上場企業に勤務。不動産ファンドの運用・法務を担当した後、中小企業の事業再生や資金繰り支援を経験。その後弊社代表から直々の誘いを受け、株式会社ビートレーディングに入社。現在はマーケティング・法務・審査など会社の業務に幅広く携わる。

<保有資格>宅地建物取引士/貸金業務取扱主任者