
2者間ファクタリング とは、ファクタリングサービスを提供する【ファクタリング会社】と【ファクタリングを依頼する企業】の2者間で行うファクタリングを指す言葉です。
ここに【売掛先企業】も加わる3者間ファクタリングと区別するために、2者間ファクタリングという呼称が使われます。
そもそもファクタリングとは「売掛債権(売掛金)を売却して入金予定日よりも早く資金化する資金調達の手段」です。
資金繰りを大幅改善する効果を持つファクタリングですが、実際に利用しようとすると、
「2者間ファクタリングって何?3者間とどっちがいいの?」
という疑問にぶつかるのではないでしょうか。
そこで本記事では、ファクタリングを検討中なら必ず理解しておきたい「2者間ファクタリング 」について、基礎知識からわかりやすく解説します。
本記事のポイント
•2者間ファクタリングを基本から解説
•メリット・デメリットの両面を把握できる
•実際の流れや知っておきたい注意点
「2者間のファクタリングについて詳しく知りたい」
「自社が利用するときにはどの方法が良いのか知識を身につけておきたい」
…という方におすすめの内容となっています。
この解説を最後までお読みいただければ、「2者間ファクタリングって何?」の概要はもちろん、良い点・悪い点を整理して把握できます。
自社にとって適切なファクタリングはどれか、的確な判断ができるようになるはずです。
では、さっそく解説を始めましょう。

1.2者間ファクタリングとは?基本の知識

まず最初に知っておきたい基本の知識からご紹介します。
1-1. そもそもファクタリングとは?
冒頭でも触れましたが、そもそもファクタリングとは、入金前の売掛債権(売掛金を受け取る権利)を売却して、本来の入金予定日よりも早く資金化することです。

ファクタリングは、ファクタリングサービスを提供している【ファクタリング会社】と【ファクタリングを利用する企業(自社)】の間で「ファクタリング契約」を締結して実行します。

ファクタリング契約の中身は、【自社】→【ファクタリング会社】へ売掛債権を譲渡し、その対価として売買代金を受け取る「債権譲渡契約」となります。

なお、ファクタリング全般についての情報は「ファクタリングとは」の記事で詳しく解説しています。ファクタリング自体の知識がまだない方は、先にそちらの記事からご覧ください。
1-2. ファクタリングには「2者間」と「3者間」がある
ここで話を2者間ファクタリングに戻しましょう。
前述のファクタリングは、大きく2つに分けられます。
2者間ファクタリング | 売掛先企業に通知しないファクタリング |
3者間ファクタリング | 売掛先企業に通知するファクタリング |
※それぞれの仕組みは次項で解説します。
補足:「2者間・3者間」「2社間・3社間」どちらとも表記されることがある
「2者間・3者間」は、「2社間・3社間」と表記されることもあります。
ファクタリングは会社(法人)同士だけではなく、自営業者などの個人事業主でも利用可能なためです。
1-3. 2者間ファクタリングの仕組み
まず2者間ファクタリングの仕組みを見てみましょう。
以下は【自社】と【ファクタリング会社】がファクタリング契約(債権譲渡契約)を締結した後の動きです。

【自社】の視点から時系列でアクションを整理すると、以下のとおりとなります。
• (1)ファクタリング会社と契約する
• (2)ファクタリング会社から売掛債権の売買代金を受け取る
• (3)売掛先企業から売掛金が入金されたらファクタリング会社に引き渡す
1-4. 3者間ファクタリングの仕組み
次に3者間ファクタリングの仕組みはこちらです。

ファクタリング契約自体は、【自社】と【ファクタリング会社】の間で締結されるものなので、ファクタリング契約の締結までは、2者間ファクタリングでも3者間ファクタリングでも同じです。
違いが出るのはファクタリング契約締結後の動きです。
【自社】の視点からアクションを整理すると、以下のとおりとなります。
• (1)ファクタリング会社と契約する
• (2)売掛先企業に売掛債権を譲渡したことを通知する(承諾を得る) ※
• (3)ファクタリング会社から売掛債権の売買代金を受け取る
※ 3者間ファクタリングで行う「売掛債権の譲渡の通知」とは、噛み砕くと以下の趣旨となります。
「御社から支払われる売掛金を受け取る権利を持っているのは、弊社ではなくファクタリング会社に変更になりました。よって、売掛金の支払いは弊社の口座ではなく、ファクタリング会社の口座へ振り込んでください」
このような仕組みになっている2者間ファクタリング・3者間ファクタリングの「何が良くて、何が悪いのか?」については、次章で詳しく見ていきましょう。
※3者間ファクタリングの詳細は「3者間ファクタリング」で詳しく解説していますので、そちらもあわせてご覧ください。
2.2者間ファクタリングのメリット

ここから2者間ファクタリングは、3者間ファクタリングに比較してどんなメリットを持っているのか、解説していきます。
なお、2者間・3者間の区別を問わない“ファクタリング全般”のメリット・デメリットは「ファクタリング メリット」の記事で詳しく解説しています。
全般的な知識を得たい方は、上記の記事を先にご覧いただくと、理解しやすいかと思います。
では2者間ファクタリングのメリットを見ていきましょう。
2つのメリットが挙げられます。
• 売掛先企業に知られずにファクタリングができる
• 現金が入金されるまでのスピードが早い
2-1. 売掛先企業に知られずにファクタリングができる
1つ目のメリットは「売掛先企業に知られずにファクタリングができる」です。
先にも述べたとおり、2者間ファクタリングは売掛先企業に債権譲渡の通知をしないので、自社とファクタリング会社だけで完結できます。
2-1-1.売掛先企業に知られるデメリットは?
売掛先企業にファクタリングのことを知られるデメリットといえば、「企業としての信用に不安が生じるリスク」があることです。
- 「資金繰りに奔走しているのでは?」
- 「経営が悪化しているのでは?」
そんな噂が、売掛先企業の1社のみならず複数の取引先に回ってしまうと、取引先との関係が悪化する可能性が出てきます。
たとえば、貸倒れを恐れた仕入れ先から取引を停止される、大口の受注がストップする、などです。
いったん信用不安の噂が流れると、信頼を回復するのは想像以上に大変なことですから、経営者として気を配りたいポイントといえます。
2-2. 現金が入金されるまでのスピードが早い
2つ目のメリットは「現金が入金されるまでのスピードが早い」です。
ファクタリング会社が提供するサービス内容としては、2者間ファクタリングでも3者間ファクタリングでも、入金までのスピードに違いはありません。
ファクタリング契約締結後、すみやかに売買代金が指定口座へ振り込みされます。
しかし、売掛先企業に通知する3者間ファクタリングの場合、売掛先企業への事前報告は手続き上は不要とはいえ、あらかじめ事情を話して根回しするケースが多いでしょう。
何の説明もなく、突然「債権譲渡の通知」が届いたら、売掛先に不信感を与えることになりかねませんので、事前に売掛先に債権譲渡の承諾を得ておく必要があります。
売掛先企業への説明にかかる手間や時間を省略できる2者間ファクタリングは、3者間ファクタリングよりも現金化が早くできるといえます。
「ファクタリングをしよう」と思い立ったら、ファクタリング会社に連絡して契約するだけですから、最短即日で入金されます。
3.2者間ファクタリングのデメリット

次に2者間ファクタリングのデメリットを見てみましょう。
• 手数料が割高になる
• 売掛金を回収してファクタリング会社に引き渡す手間がある
3-1. 手数料が割高になる
1つ目のデメリットは「手数料が割高になる」です。
たとえば、以下は弊社ビートレーディングの手数料の目安です。
▼ 手数料の目安
2者間ファクタリング | 4%〜12%程度 |
3者間ファクタリング | 2%〜9%程度 |
同じ売掛債権であっても、2者間か・3者間かによって、手数料が変わります。
ファクタリング会社の視点から見ると、売掛先企業に直接売掛金の存在等を確認できる3者間ファクタリングのほうが未回収リスクが低いので、手数料を抑えやすいのです。
前述のとおり、2者間ファクタリングには「売掛先企業に知られない」という利用者側のメリットがある一方で、ファクタリング会社には売掛先企業に直接売掛金の存在等を確認できないというデメリットがあります。
“その分のメリット代として手数料の差分を納得できるか”が、2者間を選ぶか・3者間を選ぶかの大きな判断基準といえます。
3-2. 売掛金を回収してファクタリング会社に引き渡す手間がある
2つ目のデメリットは「売掛金を回収してファクタリング会社に引き渡す手間がある」です。
具体的には、
「売掛先企業から自社の口座に売掛金が振り込まれたら、その金額をそのまま、ファクタリング会社の指定口座へ振り込む」
というアクションです。
これ自体はさほど大きな手間ではありませんが、うっかり忘れないように注意は必要です。
「ファクタリング会社に引き渡すべき売掛金を、うっかり他の支払いに使ってしまうかもしれない」
といった不安があるなら、2者間ファクタリングではなく3者間ファクタリングにしておくのも一案です。
3-2-1.債権回収委託契約という形になっている
ここで法的な面を解説しておきましょう。
ファクタリングで売掛債権をファクタリング会社に譲渡すると、その売掛金の債権者は「ファクタリング会社」となります。
よって、本来であれば債権回収をするのはファクタリング会社になります(3者間ファクタリングと同じ形)。

売掛債権の譲渡後は第三者となっており、本来は関係がない自社(ファクタリング利用会社)ですが、2者間ファクタリングでは、売掛先企業から売掛金を受け取って、ファクタリング会社へ受け渡します。
このロジックとして、2者間ファクタリングでは、
「債権者のファクタリング会社から、売掛金の回収を委託されている」
という関係になっています。
つまりファクタリング契約の中に“債権回収委託契約”も含まれているので、契約どおりに回収した売掛金をファクタリング会社に引き渡す義務が生じるというわけです。
3者間ファクタリングでは“債権回収委託契約”は含まれませんので、売掛金をファクタリング会社に引き渡す手間は発生しません。
3-2-2.売掛先企業の倒産リスクまで負う必要はない
「売掛先企業が倒産して売掛金を回収できなかったら、自社で肩代わりしなければならないのか?」
と疑問を持つ方が多いので、その点もここでクリアにしておきましょう。
結論からいうと、売掛先企業の倒産リスクまで負う必要はありません。
ファクタリング契約を締結し、売買代金をファクタリング会社から受け取った後で売掛先企業が倒産し、売掛金が回収できなくなった場合、自社で肩代わりする必要はありません。
すでにファクタリング会社から受け取っている売買代金を、返却する必要もありません。
なぜかといえば、ファクタリング会社は売掛先企業の倒産リスクも含めて、売掛債権を買い取っているからです。そのことは「ノンリコース(償還請求権がない)」という表現で契約書に明記されているはずです。
償還請求権とは?
売掛先企業の倒産などで売掛金が回収できなかったときに、その金額をファクタリング会社がファクタリング利用企業に請求できる権利のこと。
3-3. 補足:2020年4月の法改正でデメリットが軽減
話が少々脱線しましたが、2者間ファクタリングのデメリットは以上の2つとなります。
ここでひとつ補足があります。
以前は3つ目のデメリットとして、
「売掛先企業との契約書に“権利譲渡禁止の特約”がついていると2者間ファクタリングはできない」
ということが挙げられました。
しかし、2020年4月の法改正でその問題がなくなっています。
3-3-1.権利譲渡禁止の特約とは?
売掛先企業との間で締結している請負契約書などに「権利譲渡禁止の特約」が書かれていることがあります。
実際の文例はこちらです。
▼ 譲渡禁止特約の文例
第○条(権利義務の譲渡禁止) 甲及び乙は、相手方の事前の書面による同意なくして、本契約から生じた権利義務の全部または一部を第三者に譲渡し、もしくは担保に供し、または引き受けさせてはならない。 |
しかし法改正によって、「債権譲渡が禁止されていても譲渡可能」と変わったのです。
3-3-2.債権法が改正
債権譲渡については債権法(民法第三編)に定められているのですが、実際に改正された条文を見てみましょう。
▼ 改正前の条文
第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。 2 前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。 |
↓ ↓ ↓
▼ 改正後の条文(2017年5月成立・2020年4月施行)
第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。 2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。 |
よって、現在では「手数料」と「売掛金引き渡しの手間」の2点のデメリットさえクリアできれば、2者間ファクタリングを利用する企業が増えているといえます。
4.2者間ファクタリングを行うときの注意点

最後に、2者間ファクタリングを行うときの注意点を3つ、お伝えします。
• 売掛金が入金されたら確実に引き渡しできるよう準備しておく
• ファクタリング乱用による資金繰り悪化に注意する
• 2者間ファクタリングを装ったヤミ金融業者の被害者にならない
以下で詳しく見ていきましょう。
4-1. 売掛金が入金されたら確実に引き渡しできるよう準備しておく
1つ目の注意点は「売掛金が入金されたら確実に引き渡しできるよう準備しておく」です。
2者間ファクタリングでは、売掛先企業からの売掛金はいったん自社の口座に振り込まれますが、
「ファクタリング会社宛の支払いを、代行して受け取っている」
と認識しておきましょう。
そのお金を勝手に使うのは、横領の罪に問われる可能性があります。
横領などの悪意がなくても、売掛金入金までの期間が空くと、うっかり振込みを忘れてしまうことがあるかもしれません。
ファクタリング会社への支払い延滞があると、以後その会社を利用できなくなることも多く、いざというときの資金調達手段を失ってしまいます。
2者間ファクタリングの契約締結後は、売掛金の引き渡しまでしっかりと行いましょう。
4-2. ファクタリング乱用による資金繰り悪化に注意する
2つ目の注意点は「ファクタリング乱用による資金繰り悪化に注意する」です。
前述のとおり、3者間ファクタリングに比較すると手数料が割高になる2者間ファクタリングは、頻繁に利用しすぎると逆に資金繰りを悪化させるリスクがあります。
手がけているビジネスの利益率が高く、手数料分を問題なく吸収できれば問題ありません。
そうでない場合には、資金繰り改善のために行っていたはずが、ファクタリングの手数料が利益を圧迫して、資金繰りが悪くなることがあります。
2者間ファクタリングは、「毎月、継続して利用する」といった使い方より、資金繰りの緊急時やビジネスチャンスを逃さないための資金調達など、ピンポイントで活用するのがおすすめです。
4-3. 2者間ファクタリングを装ったヤミ金融業者の被害者にならない
3つ目の注意点は「2者間ファクタリングを装ったヤミ金融業者の被害者にならない」です。
昨今、ファクタリング業者を装ったヤミ金融業者が問題になっています。(参考:金融庁「ファクタリングに関する注意喚起」)
ヤミ金融業者の場合、ファクタリングという名前を使っていても「ノンリコース(償還請求権がない)」ではなく、売掛先企業の倒産リスクを利用者が負わされています。
債権回収リスクも含めて売掛債権を買い取る“債権譲渡契約”がファクタリングであり、そうでない場合には「貸金」とみなされるのがポイントです。
ファクタリングと偽って違法となるケースについて詳しくは「ファクタリング 違法」の記事で解説しています。
あわせてご覧ください。
5. まとめ
本記事では「2者間ファクタリング」をテーマに解説しました。
簡単に要点をまとめます。
ファクタリングは2者間・3者間の2つに分けられます。
2者間ファクタリング | 売掛先企業に通知しないファクタリング |
3者間ファクタリング | 売掛先企業に通知するファクタリング |
2者間ファクタリングの流れは以下のとおりです。
(1)ファクタリング会社と契約する (2)ファクタリング会社から売掛債権の売買代金を受け取る (3)売掛先企業から売掛金が入金されたらファクタリング会社に引き渡す |
2者間ファクタリングのメリットとして次の2つが挙げられます。
・売掛先企業に知られずにファクタリングができる ・現金が入金されるまでのスピードが早い |
デメリットは次の2つです。
・手数料が割高になる ・売掛金を回収してファクタリング会社に引き渡す手間がある |
2者間ファクタリングを行う際には、以下の点にご注意ください。
・売掛金が入金されたら確実に引き渡しできるよう準備しておく ・ファクタリング乱用による資金繰り悪化に注意する ・2者間ファクタリングを装ったヤミ金融業者の被害者にならない |
本文中でも述べましたが、2020年4月の法改正により2者間ファクタリングは利用しやすくなっています。
うまく活用することで、フレキシブルに事業展開を図ることも可能です。
3者間ファクタリングについては「3者間ファクタリング」にて詳しく解説しています。
ぜひ続けてご覧ください。
