ファクタリングを利用すると満期日(売掛金の支払期日)を迎える前に売掛金を資金化(現金化)でき、資金繰りを改善できる可能性があります。
ファクタリングには2者間ファクタリングと3者間ファクタリングがありますが、それぞれ利用する際の流れが異なります。
2者間ファクタリングの場合は、売却した売掛金の満期日に売掛先から資金を回収してファクタリング会社へ送金する必要があるため、忘れずに対応しなければなりません。
この記事では、売掛金を満期日より前に資金化する目的や流れなどについて解説します。
売掛金の満期日に関する注意点も詳しく解説するので、ファクタリングの利用を検討している場合はぜひ参考にしてください。
ファクタリングについて詳しくは、「ファクタリングとは?仕組みや種類・注意点を簡単に解説!」の記事をご覧ください。
目次
1.ファクタリングは売掛金の満期日前に資金化する手法
ファクタリングを行うと、売掛金を満期日より前に売却して資金化(現金化)できます。
ファクタリングは、そもそもどのような目的で行われているのでしょうか。
ここでは、売掛金の満期日やファクタリングを利用する際の流れなどを解説します。
1-1.売掛金の満期日とは
売掛金の満期日とは、企業や個人事業主が提供した商品やサービスの代金を売掛先が支払う期日のことです。
例えば、A社がB社へ商品を納品し、月末締めで翌月末を満期日とし、商品の代金について請求書を発行するケースがあります。
締め日から実際に代金が入金されるまでの期間は「支払いサイト」と呼ばれ、以下の図に示された期間のことを指しています。
支払いサイトについて詳しくは、「支払いサイトとは?120日サイトの売掛金をファクタリングする場合の注意点」の記事をご覧ください。
商品の代金である売掛金は満期日まで入金されないため、売上が発生しているにもかかわらず資金は手元にない状態となり、資金繰りの悪化や黒字倒産などのリスクがあります。
また売掛先に何らかの問題が発生して売掛金を満期日に回収できなければ、貸倒損失のリスクもあります。
資金繰りを悪化させないためには、支払いサイトと満期日を把握することが重要です。
1-2.売掛金の満期日前に資金化する仕組み
売掛金を満期日より前に資金化(現金化)する方法として、ファクタリングが利用されています。
ファクタリングは、満期日より前に売掛金の額面から手数料を差し引いた金額を受け取れるサービスです。
ファクタリングには2者間ファクタリングと3者間ファクタリングの2つの契約形態があり、それぞれ資金の流れが異なります。
2者間ファクタリングでは、ファクタリングの利用について売掛先から承諾を得る必要がありません。
利用者(利用会社)とファクタリング会社の合意により契約を締結できます。
利用後は売掛金の満期日に売掛先から利用者(利用会社)へ売掛金が入金されるため、入金を確認したら直ちにファクタリング会社へ送金する必要があります。
一方、3者間ファクタリングを利用するには、売掛先からの承諾が必要です。
そして、利用者(利用会社)、ファクタリング会社、売掛先の3者で契約を交わします。
3者間ファクタリングの場合、売掛金は満期日を迎えると売掛先からファクタリング会社へ直接入金されます。
ファクタリングの流れについて詳しくは「ファクタリングの申し込み・契約の流れとは?ポイントや注意点を解説」の記事をご覧ください。
1-3.売掛金の満期日前に資金化する目的
すでに触れたとおり、売掛金は基本的に満期日を迎えるまで現金を受け取れません。
会社の資金の状況によっては、満期日が先の売掛金の発生により手元の資金が不足するケースもあります。
売掛金は資産ではあるものの、実際に回収するまでは自社の支払いには利用できません。
そのため、売掛金が多く発生している状況で資金繰りに悩む企業も多いでしょう。
資金繰りが苦しくなれば、従業員への給与の支払いや買掛金の支払いが滞り、最悪の場合は倒産に至るケースもあります。
しかし、ファクタリングを利用すると、満期日より前に売掛金の資金化(現金化)を実現可能です。
資金繰りの改善により経営を安定させやすくなるため、多くの企業が利用しています。
また、急な資金需要や設備投資などで資金が必要な場合にも売掛金を満期日よりも前に資金化(現金化)することで、機会損失をすることなく支払いをすることができます。
2.2者間ファクタリングでは売掛金の満期日が重要になる
2者間ファクタリングを利用する場合は、ファクタリングで売却した売掛金の満期日を忘れないように把握しておかなければなりません。
ここでは、売掛金の満期日が重要な理由を詳しく解説します。
2-1.売掛金の満期日が重要な理由
すでに触れたとおり、2者間ファクタリングは、売掛金の満期日を迎えると売掛先から利用者(利用会社)へ代金が入金される流れになっています。
しかし、この時点で売掛金はすでにファクタリング会社へ売却しているため、利用者(利用会社)は売掛先からの入金を確認したらすぐにファクタリング会社へ送金する義務があります。
2者間ファクタリングでは入金された資金を送金しなければならないため、売掛金の満期日が重要なのです。
売掛金の満期日を忘れないようにし、入金の確認とファクタリング会社への送金を滞りなく対応する必要があります。
万が一、売掛金の満期日に売掛先から代金が入金されなかった場合、売掛先に対して速やかに催促して入金を促さなければなりません。
2者間ファクタリングを利用する際は売掛金を売却した後、自ら売掛金を回収する必要がある点に注意が必要です。
2-2.売掛金の満期日に送金できなかったらどうなるか
売掛金の満期日に資金がファクタリング会社へ送金できないケースは2つ考えられます。
売掛先から入金されなかったケースと利用者(利用会社)が送金の義務を果たさなかったケースです。
それぞれのケースについて、以下で詳細を解説します。
2-2-1.満期日になっても売掛先から入金がないケース
売掛金の満期日になっても売掛先から入金されず、資金を送金できない場合、利用者(利用会社)は責任を問われません。
ただし、ファクタリング会社に状況を報告するとともに、改めて売掛先に対して代金の支払いを催促する必要があります。
売掛先から売掛金を回収するために必要な最善の対応をしましょう。
ファクタリングの契約では基本的に償還請求権が設定されないため、仮に売掛金の貸し倒れが発生しても売掛金に相当する金額を利用者(利用会社)からファクタリング会社へ支払わなくて済みます。
もし償還請求権が設定されていれば支払いの義務が生じるため、契約の際には償還請求権の有無を必ず確認しておきましょう。
売掛先が倒産した場合の対応について詳しくは「ファクタリング後に売掛先が倒産しても請求されない!対策をご紹介」の記事をご覧ください。
2-2-2.利用者(利用会社)が売掛金を送金しなかったケース
利用者(利用会社)が売掛金を送金しない原因としては、そもそも満期日を忘れていて送金の手続きをしていないケースがあります。
その場合は、気がついた時点で速やかにファクタリング会社へ連絡しましょう。
送金が遅れると、遅延損害金や延滞金が発生する可能性があるため確認が必要です。
また、売掛先から入金された売掛金をファクタリング会社へ送金する前に使い込み踏み倒してしまうケースも考えられます。
そのような状況では、ファクタリング会社が売掛先に対して債権譲渡の事実を通知する恐れがあります。
また、利用者(利用会社)が詐欺罪や横領罪に問われるリスクもあるため、資金の使い込みは避けるべきです。
さらに、売掛金が架空請求だったというケースや二重譲渡も考えられます。
架空請求ではそもそも売掛金が存在しないため、詐欺罪が成立する可能性が高いでしょう。
ファクタリングの踏み倒しについて詳しくは、「ファクタリングの踏み倒しは避けるべき!踏み倒した場合のリスクとは?」の記事をご覧ください。
3.3者間ファクタリングにおける売掛金の満期日
前述のとおり、3者間ファクタリングの場合、売掛金の満期日を迎えると売掛先からファクタリング会社へ直接送金が行われます。
利用者(利用会社)に対する入金は発生せず、ファクタリング会社へ送金する手間もかかりません。
なお、仮に売掛先からファクタリング会社へ入金がなくても、利用者(利用会社)が回収したり代わりに支払ったりする必要はありません。
3者間ファクタリングはファクタリングの契約後に利用者(利用会社)が対応しなければならない手続きがないため、2者間ファクタリングよりも手間が少なくなります。
ただし、3者間ファクタリングを利用するには、売掛先から必ず承諾を得る必要があります。
ファクタリングを利用について売掛先の承諾を得るのが難しい、今後の取引に懸念がある場合は、2者間ファクタリングを利用すると良いでしょう。
4.ファクタリングを利用する際は売掛金の満期日を意識する
売掛金の満期日はファクタリングの手数料にも影響するため、売却する売掛金を選ぶ際には注意が必要です。
ここでは、売掛金の満期日がファクタリングの利用にどのように影響するのか解説します。
4-1.満期日が近いほど手数料が安い
前述のとおり、売掛金の締め日から実際に代金が入金されるまでの期間を「支払いサイト」と呼びます。
ファクタリングの手数料は支払いサイトの長さも影響するため、見積りを取る前によく確認しましょう。
基本的に、満期日が近く、支払いサイトが短いほどファクタリングの手数料は安くなる可能性があります。
ファクタリング会社にとっては支払いサイトが長いほどリスクが高いため、手数料も高くなる傾向があるのです。
ただし、満期日がいつであっても、ファクタリングを利用するには必ず手数料が発生します。
まとまった資金が必要になるタイミングが満期日より後なら、満期日を待って通常どおり売掛金を回収したほうが余計な手数料を支払わなくて済みます。
資金が必要なタイミングに合わせてファクタリングを利用するかどうか検討しましょう。
ファクタリングを利用するタイミングについて詳しくは「ファクタリングを利用するタイミングとは?向いていないケースも解説」の記事をご覧ください。
4-2.満期日を確認して計画的に利用する
2者間ファクタリングを利用した場合、満期日に売掛先からの入金を確認した上で、ファクタリング会社へ送金する必要があります。
そのため、必ず満期日を把握しておき、当日を迎えて入金を確認したらすぐにファクタリング会社へ送金ができるよう準備しておきましょう。
ファクタリングでは回収した売掛金の分割払いや支払日の変更はできないため、計画的な利用を心がけなければなりません。
また、ファクタリングを利用すれば売掛金から手数料が引かれるので、実際に入金される金額は売上よりも少なくなります。
無計画に何度もファクタリングを利用すれば、かえって資金繰りが苦しくなる恐れもあります。
キャッシュフローの現状も確認した上で、適切なファクタリングの利用を検討しましょう。
5.まとめ
2者間ファクタリングを利用する場合、売掛金の満期日に入金を確認し、直ちにファクタリング会社へ送金する必要があります。
送金を忘れたり、資金を別の目的に使用したりしないよう注意しましょう。
また、売掛金の満期日によって、ファクタリングの手数料に影響する可能性があります。
具体的には、売掛金の満期日が近ければ、手数料が安くなる傾向があります。
複数の売掛金を保有しているなら、満期日が近い売掛金をファクタリング利用すると良いでしょう。
さらに、手数料はファクタリング会社によって異なるため、複数のファクタリング会社から見積りを取ることも大切です。
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筑波大学大学院修士課程修了後、上場企業に勤務。不動産ファンドの運用・法務を担当した後、中小企業の事業再生や資金繰り支援を経験。その後弊社代表から直々の誘いを受け、株式会社ビートレーディングに入社。現在はマーケティング・法務・審査など会社の業務に幅広く携わる。
<保有資格>宅地建物取引士/貸金業務取扱主任者