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ファクタリングの会計処理方法|状況別の仕訳や勘定科目【具体例付】

ファクタリングの会計処理方法|状況別の仕訳や勘定科目【具体例付】

ファクタリングの基礎知識

自社の持つ売掛債権(販売した商品やサービスの代金を受け取る権利)を譲渡し、資金繰りを改善するなどの目的でファクタリングを利用するケースが増えていますが、

「初めてでどのように会計処理をすればいいのか分からない」
「どういうタイミングに仕訳を切るのか」

このような悩みを抱える経営者や経理担当者も多いのではないでしょうか?

ファクタリングと通常の会計処理とは、ファクタリング会社の手数料を仕訳する必要があるというところが大きく異なります。

通常の会計処理

さらに、利用するファクタリングサービスの種類やケースによって会計処理の方法が変わってくるため、まずは自社の場合、どのような会計処理をするべきかを把握することが大事です。

ファクタリングを利用した場合の会計処理方法は、大きく分けると次の4つのケースがあります。

ファクタリング利用時の会計処理方法一覧

そこで本記事では、ファクタリングの種類やケース別に、会計処理方法を紹介します。

あわせて、ファクタリングで資金調達する場合の会計上のメリットについても紹介しますので、融資との違いを理解する際の参考にしてください。その上で、ファクタリングの利用を検討してみましょう。

ファクタリングについては下記の記事で詳しく解説しています。
【図解】ファクタリングとは?仕組みや種類・注意点を簡単に解説!

TVでの紹介実績あり!ファクタリングの無料相談はこちら

目次

1.通常の会計処理とファクタリングの会計処理の違いは?

両手に?を掲げ首をかしげる女性

冒頭でも簡単に紹介しましたが、まずは通常の会計処理とファクタリングを利用した場合の会計処理の違いを見ていきましょう。

以下は、通常の会計処理と、「ファクタリング会社」「利用者」「売掛先」の3者間で契約を締結する3者間ファクタリングを利用した場合の会計処理の違いをまとめた表です。

会計処理

通常の会計処理は、商品やサービスを売掛先に納入し、代金を受け取る権利(売掛金)が発生したタイミングと売掛金を回収したタイミングで仕訳します。

売掛金発生時(売買取引で商品やサービスを販売し、売掛先に未収代金の請求書を発行したタイミング)と売掛金回収時(売掛先から未収だった代金を支払われたタイミング)のシンプルな会計処理です。

しかし、ファクタリングを利用した場合、一旦未収金として売掛金を処理する必要があり、後日ファクタリング会社から入金されたタイミングにも、手数料を差し引いた代金を仕訳しなければなりません。

2.ファクタリングを利用した場合の会計処理は大きく分けると4パターンある

チェックボックスにチェックをつける蛍光ペン

通常の会計処理との違いを把握できたら、次はファクタリング利用時の具体的な会計処理方法について見ていきましょう。

ファクタリングは、自社が利用しているファクタリングサービスとその状況によって、大きく4つの会計処理方法に分けることができます。

以下をご覧ください。

 3-1へ

①ファクタリングの契約日と入金日が異なる場合

種類買取型ファクタリング保証型ファクタリング
主な目的資金の調達貸倒れによるリスク軽減
主なケース①ファクタリングの契約日と入金日が異なる場合

3-1へ

②ファクタリングの契約日と入金日が同日の場合

 3-2へ

③無事に商品・サービスに対する代金(売掛金)が支払われた場合

 4-1へ

④売掛先の倒産などで商品・サービスに対する代金(売掛金)が支払われなかった場合

 4-2へ

特徴主に3者間ファクタリングに多い主に即日対応を行う2者間ファクタリングに多い大口の売掛先が倒産すると自社にも大きな影響を与える場合に利用されやすい
会計処理のタイミング①売掛金(商品・サービスの未収代金)発生時
②ファクタリング契約時
③ファクタリング入金時
①売掛金発生時
②ファクタリング契約・入金時
③通常の支払期日に売掛先からの入金を確認した時
④ファクタリング会社へ振り込みをした時
①代金の回収ができた時①代金の回収不能が確定した時
②ファクタリング契約による保遠近をファクタリング会社から受け取った時

上の表は、「買取型」「保証型」の主なケース別に、ファクタリングを利用した場合の会計処理方法を一覧にした表です。

ファクタリングには、主に資金調達を目的とする「買取型ファクタリング」と、貸倒れなどによる未回収リスクを回避することを目的とした「保証型ファクタリング」の2つがあり、利用ケースによっても会計処理や仕訳、勘定項目などが異なります。

自社が利用しているファクタリングサービスの場合、どの会計処理方法になるのかを判断する参考にしてください。

なお、国際財務報告基準(IFRS)の会計基準を採用している場合、ここで紹介した4つとは異なる会計処理方法となります。

詳しくは、「5-4. 国際財務報告基準(IFRS)の場合は会計処理方法が異なる」をご覧ください。

2-1.買取型ファクタリングと保証型ファクタリングの違い

「買取型」「保証型」と言われても、それぞれがどういうものか理解できておらず、自社がどちらのファクタリングサービスを利用しているのか判断が難しいという人もいるでしょう。

以下は、買取型と保証型の違いをまとめた表です。

種類買取型保証型
主な目的資金の調達貸倒れによる損失の軽減
仕組み売掛先からの支払いを待たずに、売掛債権(商品やサービスの提供をした会社が、販売した分の代金を受ける権利)を資金化できる仕組み万が一、売掛先が倒産などしてもファクタリング会社から利用者に保証金額が支払われる仕組み

「買取型ファクタリング」と「保証型ファクタリング」は、主な利用目的が異なります。

2-1-1.【買取型ファクタリング】

買取型ファクタリングは、2者間や3者間といった一般的なファクタリングサービスです。

売掛先に対して発行した請求書などをファクタリング会社に売却し、通常の支払期日よりも前に商品やサービスの提供をした際の未収代金(売掛債権)を資金化できる仕組みとなっています。

そのため、買取型ファクタリングは、主に資金調達や手元に資金を残しておくなどの目的で利用されることが多いファクタリングサービスです。

2-1-2.【保証型ファクタリング】

保証型ファクタリングは、掛け捨て保険に似ています。買取型ファクタリングとは異なり、売掛債権(商品やサービスの提供をした会社が、販売した分の代金を受ける権利)に保険をかけて未回収リスクを回避するファクタリングサービスです。

主に売掛先から未収代金を適正な期間で回収ができないケースや、売掛先の倒産による連鎖倒産を未然に防ぐ目的などで利用されています。

3.買取型ファクタリングの会計処理

4枚の重なり合う請求書

前章で、ファクタリングの会計処理を一覧で紹介しました。

ここからは、ファクタリングの種類と主なケース別の会計処理について詳しく解説していきます。

まず見ていくのが、買取型ファクタリングの会計処理です。

種類買取型ファクタリング
主な目的資金の調達
主なケース①ファクタリングの契約日と入金日が異なる場合  3-1へ②ファクタリングの契約日と入金日が同日の場合  3-2へ
主に3者間ファクタリングに多い主に即日対応を行う2者間ファクタリングに多い
会計処理のタイミング①売掛金(商品・サービスの未収代金)発生時
②ファクタリング契約時
③ファクタリング入金時
①売掛金発生時
②ファクタリング契約・入金時
③通常の支払期日に売掛先からの入金を確認した時
④ファクタリング会社へ振り込みをした時

ケースごとの会計処理方法を見ていきましょう。

3-1. 【買取型】ファクタリングの契約日と入金日が異なる場合の会計処理方法

「ファクタリングの契約日と入金日が異なる場合」は、主に3者間ファクタリングによく見られるケースです。

以下のような会計処理となります。

会計処理のタイミング借方貸方
①売掛金の発生時売掛金100万円売上100万円
②ファクタリング契約締結時未収金100万円売掛金100万円
③ファクタリング会社からの入金時普通預金(現金預金)95万未収金100万円
売上債権売却損5万

一般的なファクタリング契約の流れとしては、まずは「ファクタリング利用者」と「ファクタリング会社」がファクタリング契約を結びます。

その後、ファクタリングを利用することを売掛先に通知し、承諾を得る必要があるため、ファクタリング契約から実際の入金まで数日間が空くことになります。

 スケジュール例
1/31【売掛金の発生時】
あなたの会社(利用者)が売掛先に対し、商品代金後払いの掛取引で100万円の商品を販売
2/1【ファクタリング契約締結時】
利用者がファクタリングを申し込み、売掛債権を譲渡
2/2【ファクタリング会社からの入金時】
ファクタリング会社から利用者に手数料を差し引いた代金が支払われる

そのため、まずは通常の会計処理と同様に、売上と売掛金を仕訳します。

①売掛金の発生時借方貸方
1/31売掛金100万円売上100万円

ファクタリングの契約を締結したら、そのタイミングで売掛金を消して一度未収金として計上します。

なお、このタイミングでは、まだファクタリング会社から入金はされていません。

②ファクタリング契約締結時借方貸方
2/1未収金100万円売掛金100万円

ファクタリング会社から実際に売掛金の譲渡代金が入金されたら、ファクタリングの利用手数料を「売上債権売却損」の勘定科目で計上します。

例えば、売掛金100万円に対して5%の利用手数料がかかった場合、以下のように5万円を「売上債権売却損」として処理するということです。

③ファクタリング会社からの入金時借方貸方
2/2普通預金(現金預金)95万未収金100万円
売上債権売却損5万

この仕訳で、一度未収金として計上した勘定項目が±0となり、資金調達により95万円を手にしたことになります。

3者間ファクタリングの場合、通常期日に売掛先側がファクタリング会社に対して直接入金するケースが一般的です。そのため、利用者の会計上は、ファクタリング会社からの入金に対する会計処理をして終了となります。

Q. 3者間ファクタリングとは
3者間ファクタリングとは、「ファクタリング利用者」「売掛先」「ファクタリング会社」の3者間で行うファクタリングのことです。
 
売掛先が契約に加わることで、売掛金の存在等をファクタリング会社が直接確認できるため、ファクタリング会社にとってのリスクが低くなることから、ファクタリングの利用にかかる手数料が安くなる傾向があります。少しでも手数料を抑えながら資金調達したい企業などに利用されています。

3-2. 【買取型】ファクタリングの契約日と入金日が同日の場合の会計処理方法

「ファクタリングの契約日と入金日が同日の場合」は、2者間ファクタリングに多いケースです。以下のように会計処理をします。

会計処理のタイミング借方貸方
①売掛金の発生時売掛金100万円売上100万円
②ファクタリング契約締結と入金普通預金
(現金預金)
95万売掛金100万円
売上債権売却損5万
③売掛先からの入金普通預金
(現金預金)
100万円預り金100万円
④ファクタリング会社への送金時預り金100万円普通預金
(現金預金)
100万円

2者間ファクタリングでは、3者間ファクタリングのような、発注企業(売掛先)に対して、債権譲渡をすることを通知、承諾してもらう必要がありません。

そのため、最短で即日入金が可能となることから、ファクタリング契約日と入金日が同日になる場合があります。

一般的な2者間ファクタリングのスケジュール例をもとに、処理方法を詳しく見ていきましょう。

 スケジュール例
1/31【売掛金の発生時】
あなたの会社(利用者)が売掛先に対し、商品代金後払いの掛取引で100万円の商品を販売
2/1【ファクタリング契約締結と入金時】
利用者がファクタリングを申し込み、売掛債権を譲渡すると、その日中にファクタリング会社から利用者に手数料を差し引いた代金が支払われる
2/28【売掛先からの入金時】
通常期日に、売掛先から利用者に対して100万円が振り込まれる
3/1【ファクタリング会社への送金時】
利用者は、資金化した金額をファクタリング会社へ振り込む

まず、通常の仕訳と同じで、売掛先との取引について売上と売掛金を仕訳します。

①売掛金の発生時借方貸方
1/31売掛金100万円売上100万円

次に、ファクタリング契約後の会計ですが、契約日と同日に入金があった場合、「契約時の仕訳」と「入金時の仕訳」を統合できるため、次のように仕訳をしましょう。(例:売掛金100万円に対して利用手数料5%の場合)

②ファクタリング契約締結と入金借方貸方
2/1普通預金(現金預金)95万売掛金100万円
売上債権売却損5万

2者間ファクタリングの場合、通常の売掛金支払期日になると、売掛先(債務者)から入金があります。

入金されたお金は、ファクタリング会社へ支払うため、預り金として仕訳します。

③売掛先からの入金借方貸方
2/28普通預金(現金預金)100万円預り金100万円

ファクタリング会社へ売掛金を支払うと預り金が相殺できます。

④ファクタリング会社へ送金金時借方貸方
3/1預り金100万円普通預金
(現金預金)
100万円

上のように処理して完了です。

Q.2者間ファクタリングとは
2者間ファクタリングとは、「ファクタリング利用者」と「ファクタリング会社」の2者間で行うファクタリングのことです。

売掛先に知られずに資金調達をしたいケースや、即日入金などを目的としたケースに利用されています。

4.保証型ファクタリングの会計処理

木製の4枚の板が倒れるのを止める男性の右手

続いては、保証型ファクタリングの会計処理方法を見ていきましょう。

種類保証型ファクタリング
主な目的貸倒れによるリスク軽減
主なケース③無事に商品・サービスに対する代金(売掛金)が支払われた場合  4-1へ④売掛先の倒産などで商品・サービスに対する代金(売掛金)が支払われなかった場合  4-2へ
大口の売掛先が倒産すると自社にも大きな影響を与える場合に利用されやすい
会計処理のタイミング①代金の回収ができた時①代金の回収不能が確定した時
②ファクタリング契約による保険金をファクタリング会社から受け取った時

保証型ファクタリングは、掛け捨て保険に似ており、保険料を支払うことで、万が一の時に確実に売掛金を回収することができます。

4-1. 【保証型】無事に商品・サービスに対する代金(売掛金)が支払われた場合の会計処理方法

保証型ファクタリングを利用したものの、支払期日に売掛先から商品やサービスの代金が支払われれば、ファクタリング会社に保険料を支払う仕訳が必要です。

会計処理のタイミング借方貸方
売掛先からの入金時支払手数料5万円普通預金
(現金預金)
5万円

ファクタリング契約の時点で仕訳を切ることはありません。

ファクタリング会社との契約内容によって仕訳のタイミングは異なりますが、ここでは分かりやすく売掛先からの入金時としています。

上の通り、通常の会計処理をした後に、ファクタリング会社へ支払う保証料を仕訳しましょう。

今回は、保証料が5万円だった場合を例に紹介しています。

勘定科目は、掛け捨て型の保険などと同じ「支払手数料」を使用すれば大丈夫です。

4-2. 【保証型】売掛先の倒産などで商品・サービスに対する代金(売掛金)が支払われなかった場合の会計処理方法

売掛先の支払期限になっても売掛金が支払われない場合、先述の保証料の支払いの仕訳に加え、ファクタリング会社から受け取った保証金額を正しく処理する必要があります。

会計処理のタイミングは売掛金の回収が不可能となり、貸倒れが確定したときです。さらに、ファクタリング契約による保険金をファクタリング会社から受け取ったタイミングで保証金を雑収入として処理します。

会計処理のタイミング借方貸方
売掛金の回収が不可能となった時貸倒れ損失100万円売掛金100万円
普通預金(現金預金)100万円雑収入100万円

売掛先の倒産など、何らかの理由で商品・サービスに対する代金(売掛金)が支払われなかった場合も、ファクタリング契約の締結時は、特に仕訳を切る必要がありません。

実際に売掛金が支払われないという事象が起こった際に、貸倒れとなった会計処理をして次にファクタリング会社から受け取った保証金の仕訳をします。

ファクタリング会社から入金されたお金の勘定科目は「雑収入」です。

5. ファクタリングの仕訳における4つの注意点

ファクタリングの種類やケース別の会計処理方法を見てきました。

この章では、正しく処理するために知っておきたい注意点について紹介します。

ファクタイングの仕訳における4つの注意点

ひとつずつ解説していきます。

5-1. 売上債権売却損の勘定科目がある場合はその項目で仕訳する

ファクタリングを利用した場合、勘定科目は「売上債権売却損(売掛債権譲渡損)」で仕訳します。

ファクタリングを利用することで、手数料や諸費用がかかり、本来入ってくる金額よりも少なく、損が生じるためです。

ただし、市販の会計ソフトによっては、特殊な勘定科目が設定されていないこともあります。

その場合には、新しく「売上債権売却損(売掛債権譲渡損)」を設定するか、「支払手数料」や「雑損失」などの既存の勘定科目などを使用しましょう。

5-2. ファクタリング取引は非課税

国税庁のNo.6201 非課税となる取引」によると、ファクタリング取引は「金銭債権などの譲渡」になります。

そのため、取引金額や手数料には消費税がかかりません

悪質な業者の中には、ファクタリングの取引金額や手数料に消費税を上乗せして請求してくるケースがあるため注意が必要です。必ず契約の金額が非課税となっているかを確認してください。

5-3. 決算期末をまたぐ場合は税金の支払いが必要

ファクタリングを利用するタイミングによっては、契約から入金までに決算期をまたいでしまうこともあるでしょう。

その場合、売掛金の発生時には売掛先との取引を計上していますが、期末時点では売掛先から代金が支払われていない状態になります。

しかし、法人税や消費税はすでに計上した売上をもとに算出されるため、代金を受け取る前に税金が課されます。

そのため、決算期をまたぐ場合は、ファクタリングの契約も決算期末に合わせるなどの対策をすることで、より必要なタイミングに資金を調達することができるでしょう。

5-4. 国際財務報告基準(IFRS)の場合は会計処理方法が異なる

ビジネス拠点を海外に置くケースなども増え、130を超える法域で採用されている国際財務報告基準(IFRS)を適用する企業は、日本独自の基準とは異なる方法で会計処理をしなければなりません。

ファクタリング会社から入金された時に仕訳を切り、ファクタリングの有無にかかわらず、入金後に計上します。

ファクタリング会社
からの入金時
借方貸方
2/2普通預金(現金預金)98万借入金100万円
売上債権売却損
(売掛債権譲渡損)
2万円
売掛先からの入金時借方貸方
2/28普通預金(現金預金)100万円売掛金100万円
借入金100万円普通預金(現金預金)100万円

国際財務報告基準(IFRS)では、ファクタリングは借入に分類されるため、貸方は「借入金」として計上します。

ファクタリング利用時にかかる手数料は、売掛債権を譲渡することで生じた損失にあたるため、「売上債権売却損(売上債権売却損)」として仕訳しましょう。

売掛先から入金されたら売掛金を消し、ファクタリング会社に資金化した分の売掛金を振り込んだら借入金を消す処理をしましょう。

6. ファクタリングの会計処理に困ったときの解決法

ひらめく年配の男性と中年の男性と女性のイラスト

ここまで、ファクタリング利用時の会計処理について見てきました。

ただ、本記事で紹介したのは一般的なケースで、イレギュラーなケースではさらに会計処理が複雑になることもあります。

そこでここでは、ファクタリングの会計処理をする中で分からないことがあった場合の解決法として、次の3つを紹介します。

ファクタリングの会計処理に困ったときの解決法

ひとつずつ見ていきましょう。

6-1. 税務署の個人課税部門(記帳指導担当)に聞く

会計処理で分からないことがあれば、近くの税務署に問い合わせましょう。

帳簿に関連した窓口は、個人課税部門(記帳指導担当)です。

記帳に関する説明会や具体的な記帳の仕方などの説明を無料で行っているので、そういうイベントや催しに参加するのも良いでしょう。

税務署に確認する

6-2. 納税協会に聞く

納税協会は、大阪国税局(各税務署管内)で、正しい税知識の普及や申告納税を推進することを目的に設立された団体です。

税知識を普及するための各種説明会も開催しています。

特に、簿記教室では、税の専門家である税理士が複式簿記による帳簿のつけ方を紹介しており、簿記の基礎知識から実践的な仕方までを教えてもらえます。

ただし、納税協会は関西圏のみとなっているため、エリア外の方は税務署や次に紹介する商工会議所などへ問い合わせましょう。

納税協会で情報を確認する

6-3. 商工会議所・商工会に聞く

「商工会議所・商工会」でも、帳簿や簿記に関する指導を行っています。

「仕訳が合っているか不安」「帳簿のつけ方で困っている」など、経理に関する疑問や質問を気軽に相談できるため、近くの商工会議所や商工会へ問い合わせましょう。

近くの商工会議所を確認する

近くの商工会を確認する

7.ファクタリングで資金調達する場合の会計上のメリット

貸借対照表と電卓

ファクタリングで資金調達する場合、会計上のメリットが2つあります。

・信用情報に影響しない
・オフバランス化できる

以上の2点です。ここでは、それぞれのメリットについて詳しく解説します。

7-1.信用情報に影響しない

ファクタリングは信用情報に影響せずに、資金調達ができます。ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、支払期日よりも前に資金化する資金調達方法であり、借り入れとは異なります。

借り入れの場合には信用情報に借入状況や申し込み状況が記載されますが、ファクタリングを利用しても記載されることはないため信用情報には影響を与えません。

将来的に銀行融資を検討しているが、すぐに資金が必要というケースもあるでしょう。その場合でも、借り入れを増やさずに資金調達できます。

借入とファクタリングの違いについて下記の記事で詳しく解説しています。
ファクタリングと融資の違いを解説!比較してわかるメリット・デメリット

7-2.オフバランス化できる

ファクタリングの利用により売掛債権を資金化することで、オフバランス化できることもメリットです。

オフバランス化とは、資産や取引などを会計上問題のない方法で貸借対照表に記載させないことを指します。

先述のとおり、ファクタリングは融資ではないため、利用しても貸借対照表の負債や資産の科目が増えるわけではありません。

一方、金融機関から借り入れをすると、貸借対照表の負債に借入金が増えます。しかし、ファクタリングなら金融機関からの融資枠を埋めることなく資金調達が可能です。

ファクタリングのオフバランス化について下記の記事で詳しく解説しています。
ファクタリングによるオフバランス化の要件・仕組みを解説!メリット・注意点とは

8.ファクタリングの利用によるオフバランス化のメリット

小さな黒板にチョークで書かれた資産・負債・純資産の文字

ファクタリングの利用によりオフバランス化できることは、会計上の大きなメリットです。特に将来的に融資を検討している場合、決算書は審査を受ける際に重要な書類のひとつとなります。ここでは、具体的にどのようなメリットがあるのか解説します。

8-1.自己資本比率を高められる

ファクタリングを利用してオフバランス化することで、自己資本比率の改善につながります。自己資本比率とは、総資本における自己資本の割合のことです。

一般的に自己資本比率が高いということは、返済義務のない自己資本で経営ができていることを意味しています。つまり、安定した経営ができている会社だという証明になるでしょう。

逆に、自己資本比率が低いということは借り入れなどの他人資本が多く、経営が安定していないと判断されるケースもあるようです。

ファクタリングを活用するだけでは総資本に大きな影響はありません。しかし、ファクタリングを活用して売掛債権を資金化し、借り入れの返済にあてることで資産と負債の双方を減らすことが可能です。そのため、自己資本比率につながります。

8-2.ROAの向上につながる

ファクタリングを利用してオフバランス化することで、ROA(Return On Assets)の改善につながります。ROAとは、日本語に訳すと総資産利益率となります。

企業が保有する資産に対してどのくらい利益を生み出しているかを確認するための指標です。ROAは以下の計算式で求められます。

・ROA=当期純利益÷総資産×100

ROAの値が高ければ高いほど、利益を効率的に生み出しているといえます。資産を有効活用できており、成長のための投資が行えていることを証明できるため、企業価値が高まります。

ファクタリングを利用したオフバランス化によって、負債を増やさずに資金調達ができるため、借入による資金調達よりも総資産を減らすことが可能です。

これによりROAが高まるため、財務状況が良いと判断されて金融機関からの評価も高まるでしょう。

8-3.貸倒れのリスクを軽減できる

売掛金を資金化してオフバランス化することで、貸倒れのリスクを軽減できるメリットもあります。貸倒れとは、売掛金の回収が困難になった状態のことです。

売掛金は回収までに数か月程度かかることが一般的です。回収までの間に売掛先企業の業績が悪化して倒産するなど、貸倒れになるリスクがないとは言い切れません。

貸倒れが発生すると、債権を保有する企業も売掛金の回収ができずに資金繰りが苦しくなる可能性もあるでしょう。

ファクタリングを利用して、早期に売掛債権を資金化しておけば、貸倒れのリスクがなくなります。資金繰りにも影響を与えないため、万が一のことがあった場合でも自社の経営を守ることができます。

8-4.現金比率が高まる

現金比率が高まることも大きなメリットです。ファクタリングを利用して売掛債権を早期に資金化すれば、手元の現金が増えるため現金比率は高まります。

現金比率が高まると何が良いのかと言うと、財務状況が良い、会社の金融状況が安全であることを示すことができるからです。

現金比率は企業の短期支払能力を判断する指標としても使われており、比率が高いほど短期的な支払い能力が大きいと判断されます。

また、現金比率の目安は30%以上が理想だといわれています。ファクタリングを活用して売掛債権を資金化すれば、現金が増加して現金比率を理想値でキープしやすくなるでしょう。

特に中小企業の場合には、自己資本が少ないケースも多いため現金比率を高めておくと安心です。

8-5.融資を受けやすくなる

オフバランス化によって企業の財務状況が改善すれば、銀行からの融資も受けやすくなります。銀行融資では審査が行われますが、審査の際には貸借対照表が重視される傾向にあるといわれています。

貸借対照表とは企業の財政状況を表す資料であり、現金の割合や資産と負債のバランスなどを見られることが多いようです。

そのため、将来的に銀行融資を受けることを検討している場合には、オフバランス化が重要です。オフバランス化して貸借対照表をスリム化することで、経営の健全性をアピールすることができます。

オフバランス化により自己資本比率やROAの改善にもつながるため、信用力の高い企業だと判断される可能性も高まります。

また、銀行融資だけでなく、投資家からの評価も高まるため株式発行による出資を受けようと思っている場合も効果的です。

9.ファクタリングを利用する際のデメリット・注意点

ファクタリングを利用する際には、手数料がかかります。売掛金の中から手数料を差し引いた金額が支払われるため、売掛金の金額よりも手元に残る資金が少なくなることはデメリットです。

手数料の相場は2者間ファクタリングの場合8%~18%、3者間ファクタリングの場合2%~9%となっています。売掛金の金額や売掛先の信用力などによって手数料が異なりますが、手数料が高すぎると資金繰りが悪化するおそれもあるため注意しましょう。

また、手数料はファクタリング会社によっても異なります。複数のファクタリング会社で見積りをとって手数料を比較した上で、できるだけ手数料を抑えられるファクタリング会社を選ぶようにすると良いでしょう。

ファクタリングを利用するメリット・デメリットは下記の記事で詳しく解説しています。
ファクタリングのメリット・デメリットとは?適したケースや注意点も解説

10.融資よりもファクタリングのほうが向いているケース

factorigと書かれた紙と2本のシャーペンと電卓

資金が必要になったときは、銀行融資やビジネスローンなどを利用して資金調達することも可能です。しかし、ケースによっては融資よりもファクタリングの方が向いていることもあります。

ここでは、融資よりもファクタリングの方が向いているケースを解説します。

10-1.早期に資金調達したい

まずは、早期に資金調達したい場合です。ファクタリングは、資金調達までのスピードが銀行融資と比べて早いことが大きなメリットです。

ファクタリング会社や2者間・3者間どちらのファクタリングを利用するかによっても異なりますが、最短即日で資金化できるケースもあります。2者間ファクタリングの場合は、遅くとも数日以内には資金化できます。

そのため、支払いまでの期間が迫っていてすぐに資金調達がしたいなど、早期に資金が必要な場合でも安心です。

10-2.融資の審査に通らない

融資の審査に通らずに資金調達ができない場合は、ファクタリングを利用すると良いでしょう。ファクタリングの審査は融資の審査とは異なります。

ファクタリングでは売掛先の信用力が重視される傾向にあるため、自社の財務状況などが理由で融資の審査に通らなかった場合でも利用できる可能性が高いでしょう。

また、自社に赤字や税金滞納などがあっても、売掛先の信用力が高ければ利用できる可能性があるため、利用しやすい資金調達方法です。

ファクタリングと融資の違いは下記の記事で詳しく解説しています。
ファクタリングと融資の違いを解説!比較してわかるメリット・デメリット

10-3.信用力を高めたい

先述のとおり、ファクタリングを利用することでオフバランス化を実現できます。ファクタリングによって売掛金を資金化し、借り入れを減らすことでオフバランス化できるため、企業としての信用力や評価を高めることにつながります。

金融機関や投資家からの評価が高まることで、融資や株式発行などの新たな資金確保もしやすくなるでしょう。オフバランス化による信用力向上を目指している場合は、ファクタリングが向いています。

11. まとめ

ファクタリングの会計処理について、基本的な仕訳は理解できたと思います。

最後にもう一度おさらいをしていきましょう。

◎ファクタリングの会計処理は、大きく分けると次4つがあります。

種類買取型ファクタリング保証型ファクタリング
主な目的資金の調達貸倒れによるリスク軽減
主なケース①ファクタリングの契約日と入金日が異なる場合  3-1へ②ファクタリングの契約日と入金日が同日の場合  3-2へ③無事に商品・サービスに対する代金(売掛金)が支払われた場合  4-1へ④売掛先の倒産などで商品・サービスに対する代金(売掛金)が支払われなかった場合  4-2へ
特徴主に3者間ファクタリングに多い主に即日対応を行う2者間ファクタリングに多い大口の売掛先が倒産すると自社にも大きな影響を与える場合に利用されやすい
会計処理のタイミング①売掛金(商品・サービスの未収代金)発生時
②ファクタリング契約時
③ファクタリング入金時
①売掛金発生時
②ファクタリング契約・入金時
③通常の支払期日に売掛先からの入金を確認した時
④ファクタリング会社へ振り込みをした時
①代金の回収ができた時①代金の回収不能が確定した時
②ファクタリング契約による保険金をファクタリング会社から受け取った時

買取型と保証型では、ファクタリングの目的が異なり、会計処理における勘定科目なども大きく異なるため、まずは自社がどのファクタリング取引を利用しているのかを確認し、自社に合った処理方法を参考にしましょう。

◎ファクタリングの会計処理における注意点は次の4つです。

ファクタリングの仕訳における4つの注意点

知らないと意図しない違反をしてしまったり、悪質なファクタリング業者に騙されたりする可能性があるため、最低限上の4つの注意点は理解しておきましょう。

もし、ファクタリング会計処理のことで不安や疑問があれば、顧問税理士に相談するか、税務署や商工会議所などに問い合わせ、正しい処理方法を教えてもらいましょう。

ファクタリングは融資とは異なり、本来受け取れる売掛金を支払期日よりも前に資金化する資金調達方法です。そのため、会計上の負債が増えることはありません。信用情報にも影響しないため、利用しやすくなっています。

また、ファクタリングを活用して資産と負債を減らすことで貸借対照表をスリム化できるため、企業としての信用力が高まる可能性もあります。

会社の財務状況を見極めた上で、ファクタリングの利用を検討してみましょう。

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監修者

株式会社ビートレーディング 編集部編集長

筑波大学大学院修士課程修了後、上場企業に勤務。不動産ファンドの運用・法務を担当した後、中小企業の事業再生や資金繰り支援を経験。その後弊社代表から直々の誘いを受け、株式会社ビートレーディングに入社。現在はマーケティング・法務・審査など会社の業務に幅広く携わる。

<保有資格>宅地建物取引士/貸金業務取扱主任者