ファクタリングに関連する詐欺は、実際に発生しています。
ファクタリングを利用した詐欺には、悪徳業者による詐欺と利用者側による詐欺があり、無意識のうちに関わっているケースもあるため注意が必要です。
ファクタリングを利用する際には、詐欺に巻き込まれないように気を付けるだけでなく、利用者自身も違法な行為をしないよう留意しなければなりません。
本記事では、ファクタリングで詐欺になる事例を紹介します。
ファクタリングを利用する際に思わぬトラブルに巻き込まれないための対策も紹介するので、参考にしてください。
利用の注意点を理解し悪徳業者を見極めるために「ファクタリングとは何か」の基礎知識のコラムも併せてご覧ください。
目次
1.ファクタリングを利用した詐欺とは
ファクタリングを利用した詐欺とは、ファクタリングの仕組みを悪用し、利用者が違法に資金調達を行ったり、ファクタリング会社がファクタリングではない契約を結ばせたりすることを指しています。
そもそもファクタリングは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社へ譲渡し、資金を調達する方法です。
すなわちファクタリングを申し込む際には、有効な売掛債権が存在していることが前提となります。
しかし、利用者(利用会社)の中には、実際には発生していない売掛債権を譲渡してファクタリングで資金調達しようとするケースもあるのが現実です。
一方で、利用者に落ち度がなかったとしても、ファクタリング会社を装った詐欺も発生しているなど、利用者側も詐欺に気を付ける必要があります。
2.利用者によるファクタリング詐欺の事例
ここでは、ファクタリングの利用者による詐欺の事例を紹介します。
意図的な行為はもちろん、自覚がないまま実行した場合でも罪に問われる可能性があるため、詐欺にあたるような行為をしないように注意しましょう。
2-1.架空債権を作り出す
架空債権を作り出してファクタリングに利用することは詐欺にあたります。
架空債権による詐欺とは、現実には存在しない債権を存在しているかのように見せかけてファクタリングを利用することです。
ファクタリングでは請求書や契約書などによって売掛債権の存在を証明し、売掛債権を譲渡して資金調達を行います。
この方法を利用し、ファクタリングの申し込みをする際に請求書や契約書などの書類を偽造して、架空の債権を譲渡しファクタリング会社から資金をだまし取る手口が、架空債権による詐欺です。
ファクタリング契約には、利用者(利用会社)とファクタリング会社で契約を締結する2者間ファクタリングと、売掛債権の債務者が介入する3者間ファクタリングがあります。
特に、2者間ファクタリングでは売掛先への通知や承諾が必要ないため、架空債権による詐欺が発生しやすいといえます。
2-2.債権を二重譲渡する
1つの売掛債権を複数のファクタリング会社へ譲渡し二重に資金を得る、ファクタリングを利用した詐欺もあります。
いわゆる、債権の二重譲渡です。
売掛債権の二重譲渡は法律で禁止されているため、二重譲渡による資金調達は詐欺罪にあたります。
二重譲渡では、利用者(利用会社)は1つの売掛債権を2つのファクタリング会社に持ち込み、資金調達を行います。
成功すれば2倍の資金を調達できる可能性があるでしょう。
しかし、売掛債権の支払期日が来ても、売掛先から回収できる資金は売掛債権の額面どおりです。
したがって二重譲渡が発生すると、ファクタリング会社は売掛金を回収できなくなり損害を被る可能性があります。
ファクタリング会社は二重譲渡が起こることのないよう慎重に審査を行ったり、債権譲渡登記を求めたりする場合がありますが、利用者側も二重譲渡は違法行為であることを認識しておくことが大切です。
債権譲渡登記について詳しくは「ファクタリングにおける債権譲渡登記とは?目的や手続きの方法などを解説 」の記事をご覧ください。
2-3.不良債権を譲渡する
不良債権とは、倒産などが原因で売掛先から回収できなくなった売掛金のことです。
ファクタリングの対象となるのは、契約時において売掛金が支払われることが確定している確定債権や将来債権に限られます。
つまり、不良債権は基本的に譲渡できません。
売掛先が倒産することを利用者(利用会社)が知りながら、不良債権を計画的にファクタリング会社へ譲渡する行為は不正利用となります。
中には3者間ファクタリングにおいて、利用者(利用会社)と売掛先が共謀してファクタリング会社へ不良債権を譲渡し、不正に資金を得た上で計画的に倒産させる事例もあります。
ファクタリングを利用する際は、回収できる見込みのある売掛債権が譲渡対象であることが前提となっていることを理解しておきましょう。
ファクタリングにおける債権について詳しくは「ファクタリングで取り扱われる債権とは?債権譲渡の仕組みや流れを解説 」の記事をご覧ください。
3.ファクタリング詐欺が発覚するとどうなる?
ファクタリング詐欺が発覚した場合、詐欺罪や横領罪に問われる可能性があります。
また、罪に問われるだけでなく、会社や経営者個人としての信用力を失い、事業を継続できなくなる可能性もあるでしょう。
ここでは、ファクタリングが発覚した場合どうなるのか解説します。
3-1.詐欺罪に問われる
ファクタリング詐欺は、刑法上の詐欺罪に該当し、実行すれば罪に問われます。
詐欺罪とは「虚偽の内容を伝えて相手を欺き財物を得ること」に対する罪です。
先ほども触れたとおり、架空債権や二重譲渡となっている債権をファクタリングに利用して資金を得るのは詐欺罪にあたります。
また、架空請求や二重譲渡であることが見積りの時点で発覚した場合でも、詐欺未遂として罪に問われる可能性があることを知っておきましょう。
さらに、詐欺のために請求書などを偽造していた場合、私文書偽造罪や公文書偽造罪に問われる可能性もあります。
なお、詐欺罪の場合は罰金刑がなく、有罪になった場合の処遇は懲役刑のみです。
執行猶予がつくこともありますが、実刑判決となる可能性も考えられるでしょう。
3-2.二重譲渡や資金を使い込んだ場合は横領罪に問われる
ファクタリング詐欺では横領罪に問われるケースもあります。
まず二重譲渡を行った場合です。
二重譲渡は、他のファクタリング会社へ譲渡済ですでに自社のものではない売掛債権を「自社のもの」と偽り、他のファクタリング会社へ譲渡する行為のため、横領罪にあたる可能性があります。
また、売掛債権の譲渡後に売掛先から入金された売掛金をファクタリング会社へ送金せずに使い込んだ場合も横領罪に該当します。
2者間ファクタリングの場合、入金期日に売掛先から売掛金を受け取るのはファクタリング会社ではなく利用者(利用会社)です。
このとき入金された資金をファクタリング会社にそのまま移動させるのではなく、自社の資金繰りに使ってしまうことは横領にあたります。
業務上の目的で横領した場合は業務上横領に該当し、10年以下の懲役が科せられる可能性があるでしょう。
3-3.社会的信用を失う
架空債権や二重譲渡によるファクタリング詐欺が発覚すると、ファクタリング詐欺をした事実を売掛先に知られる可能性が高く、売掛先からの信用を失うことになります。
もともと売掛先に知られたくない、信用を失いたくないという気持ちで2者間ファクタリングを利用していたとしても、その配慮が全て無駄になってしまうでしょう。
また、詐欺罪や横領罪などの罪に問われると、社会的信用も失ってしまうため、企業としての存続が危うくなります。
その結果、経営破綻に陥る可能性が高いといえます。
期日までに資金をファクタリング会社へ返却すれば詐欺が発覚しないだろうと考えるかもしれませんが、ファクタリング会社の調査で発覚したり、資金返却ができないことで発覚したりするのが現実です。
4.悪徳業者によるファクタリング詐欺の事例
ファクタリングを利用する際は、悪徳業者によるファクタリング詐欺に遭わないよう、具体的な事例を知っておくことも大切です。
特に、償還請求権の有無は契約時によく確認しておきましょう。
ファクタリングは一般的に、償還請求権のない契約です。
償還請求権とは、売掛金を回収できない場合に利用者に返還を求める権利のことを指します。
償還請求権がなければ、万が一売掛先が倒産などの理由で売掛金を支払えなかった場合にも、利用者がファクタリング会社に売掛金を補填する必要がありません。
反対に、契約内容に償還請求権が付いている場合、ファクタリングの契約ではなく融資契約である可能性が高いでしょう。
融資を行う悪徳業者の中には、ファクタリングを装って融資契約をさせるケースも存在しています。
万一の時に自社が損失を被ることのないよう、事前によく確認しましょう。
償還請求権について詳しくは「償還請求権とは?ファクタリングにおける重要性や注意点をわかりやすく解説 」の記事をご覧ください。
5.ファクタリング詐欺でトラブルに巻き込まれないための対策
ファクタリング詐欺に関わると、多かれ少なかれトラブルに発展し、貴重な時間や信用を失ってしまう可能性があります。
こうした損失を避けるため、ファクタリング詐欺でトラブルに巻き込まれないための対策を紹介します。
5-1.正当な売掛債権を譲渡する
ファクタリングを利用する際は、正当な売掛債権を譲渡対象とすることが大切です。
正当な売掛債権とは、現実に存在している売掛債権であり、売掛金が回収できる見込みがある確定債権や将来債権です。
前述のとおり、架空債権や不良債権でファクタリングを利用すると、詐欺罪に問われる可能性があります。
架空債権も不良債権も、売掛先から売掛金を回収できる可能性はないため、ファクタリングのルールを逸脱した不当な方法であるといえます。
中には業者の側から架空債権の話を持ち掛けるケースもありますが、優良なファクタリング会社から架空債権を使って資金調達をするように勧めることはありません。
不正を提案してくる業者は悪徳業者である可能性が高いため、架空債権の話には応じないようにしましょう。
5-2.ファクタリングの仕組みやルールを理解する
ファクタリングの仕組みやルールを理解すると、ファクタリング詐欺トラブルに巻き込まれることはある程度避けられるでしょう。
ファクタリングではルール上、一度譲渡した売掛債権を別のファクタリング会社へ譲渡することはできません。
売掛債権は目に見えない資産なので、うまく手続きをすれば複数社へ譲渡できると感じることもあるでしょう。
しかし、二重譲渡は違法行為にあたるため注意する必要があります。
また、2者間ファクタリングを利用した場合は、債権の回収は利用者(利用会社)が行い、回収した資金を利用者(利用会社)がファクタリング会社へ送金しなければならないルールです。
回収した資金を利用者(利用会社)が別の用途で使用しないように注意しなければなりません。
5-3.手数料相場を把握する
悪徳業者を利用しないためにも、ファクタリングの手数料相場を把握しておくことが大切です。
契約時に相場よりも大幅に高い手数料を提示された場合は、悪徳業者の可能性が高いため利用しないようにしましょう。
また、悪徳業者は手数料以外にも不当な費用を請求してくる可能性があります。
例えば、ファクタリングでは、債権譲渡登記費用などが必要経費としてかかることがありますが、登記費用は5万円~10万円前後です。
しかし、悪徳業者の場合は、それぞれの費用が高額化しているケースや、上記以外にはっきりしない名目で費用を請求されるケースがあります。
契約前に見積書や契約書で費用明細と金額を必ず確認しましょう。
5-4.契約書類の内容をよく確認する
ファクタリングの契約時にトラブルを防ぐには、上述の見積書や契約書を含め、契約書類の内容をよく確認する必要があります。
特に償還請求権の有無については必ず確認しておきましょう。
ファクタリングでは償還請求権なしの契約になるため、償還請求権付きの契約になっていないかどうかを契約書で確認することが重要です。
すでに触れたとおり、償還請求権付きの契約になっている場合はファクタリング契約ではなく、融資である可能性が高いでしょう。
この場合、業者は売掛債権を買い取るのではなく、売掛債権を担保として融資を行うという内容の契約書を用意しているはずです。
債権譲渡ではなく融資が行われた場合、高額の利子を請求される可能性があります。
したがって、契約内容が融資ではなく、売掛債権譲渡契約の内容になっているかも丁寧に確認しましょう。
5-5.審査なしでファクタリングを利用しない
ファクタリングを利用する際には、必要書類を提出してファクタリング会社の審査を受けるのが一般的です。
中には審査なしで利用可能としている業者もありますが、基本的に審査なしでの利用はできないため、詐欺かもしれないと疑ったほうが良いでしょう。
ファクタリングを実施する際、本来は審査がなければファクタリング会社で適切な手数料を設定できません。
つまり、審査のないファクタリングでは、高額な手数料を請求される可能性があるのです。
また、審査のない業者では、償還請求権ありのファクタリング契約を締結させられたり、ファクタリング契約に見せかけた融資契約を締結させられたりする可能性もあります。
いずれにしても審査のない業者でファクタリング契約を結ぶことはリスクが高いといえるでしょう。
悪徳業者の見分け方について詳しくは「ファクタリング会社に悪徳業者はいる?手口の事例や見分け方を解説 」の記事をご覧ください。
6.まとめ
ファクタリングの利用者(利用会社)としてファクタリング詐欺に関与した場合、詐欺罪に問われるおそれがあります。
ファクタリングでは利用者(利用会社)が詐欺を行ったケースも実際にありました。
しかし、詐欺が発覚すると、社会的信用を失い、会社を存続できなくなる可能性があるため、詐欺には関与しないよう徹底しましょう。
また、悪徳業者によるファクタリング詐欺も発生しているため、詐欺に巻き込まれないように細心の注意を払う必要があります。
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筑波大学大学院修士課程修了後、上場企業に勤務。不動産ファンドの運用・法務を担当した後、中小企業の事業再生や資金繰り支援を経験。その後弊社代表から直々の誘いを受け、株式会社ビートレーディングに入社。現在はマーケティング・法務・審査など会社の業務に幅広く携わる。
<保有資格>宅地建物取引士/貸金業務取扱主任者